アンドリュー・
メイクピース・ラッド三世
:加藤和樹
メリッサ・ガードナー
:愛加あゆ
朗読劇
「ラヴ・レターズ」
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手紙で綴られる2時間のドラマ
壇上には2組の椅子が配置され
台本を手にした男女2人が読み上げる
シンプルな朗読劇です。
アンディとメリッサ
幼馴染の2人
幼い日の出会いから
手紙を通して交流を深めてきた2人
思春期に差し掛かり気持ちは高ぶるが
男女として関係を越えきることが出来ず
やがて、別々の道に進み始める
しかし、それでも途絶える事のない手紙
それは心にしめる支えとなっていき
互いに家族をもち社会的名声を得るなか
ついに再会、交差する運命の時を迎える
初演は1989年ニューヨーク
日本初演は1990年
愛され続けてきた作品です。
この度
新生・PARCO劇場
「こけら落としスペシャル」として
5組のキャストで上演されました。
「日本上演30周年」
「上演回数500回」
この記念すべき公演に
加藤和樹さんが選ばれたという喜び
作品名は知っていましたが初めて観ました。なかなか趣深い作品でジワジワきますね。
あまり予備知識を入れずに観たので、開始時の2人の年齢や、アメリカにある階級的なものを知らなくて、なんとなく観ながら感じ取っていき、過ぎ行く年月と共に さらに物語世界に のめり込んでいきました。そして 気が付くと どっぷりと浸っている。
あっという間の2時間でした。
ホームページのSTORY欄にある、WASP (ホワイト アングロ サクソン プロテスタント…アメリカのエリート人種)をベースに見ると、アンディの人柄や判断の土台になった面をより理解しながら観ることができたかもしれない。その言動からなんとなく察しつつ観ていたけど、観終えたあとに改めて知り、なるほど~と思えたのでした。
アンディから見たメリッサは女神、自由の象徴だったのかもしれませんね。彼女に手紙をしたため、心の内を言葉にして解放することが自分自身の成長に繋がっていった。一方で、メリッサは先を行く自由人のようで、ほんとは居場所を求める彷徨い人でもあり、ずっとアンディに「私をちゃんと見てほしい」と求めていたのかもしれない。
私を見て、私を愛して。
先を行くメリッサと追いかけるアンディ。ついに追いつき、その手を掴み、並んだとき、互いに本当になくてはならない存在になりえた。でもアンディには体裁や野心もあり 保ち続けねばならぬスタイルがあって、そこにメリッサは存在しない。その埋めようもない溝は孤独なメリッサをさらに追い込み、行き場のなさが身に染みてほとほと傷つき精魂尽き果てようとしているのに、もう手遅れになりそうになってから「会いたい」だなんて、アンディ。
オイオイとつっこんだり、あと、そんな熱き2人の軌跡に平行して生きてきた、アンディの恋人だった女性や奥様が浮かばれず。周りも翻弄されただろうな~と観終えた時はグルグル思ったりもした。
休憩15分をはさみ2時間
一幕の和樹アンディは前髪をおろし首元が見える白シャツ。開始からしばらくは ずっと、うつむき気味な早口で。
早口や うつむき加減は演出された役作りなのか緊張なのか分からなかったけど。台本に目を落とした表情がずっと続き「お顔が見たいー」とヤキモキ思ったし、そんな思いが象徴されるように アンディは色々語るけど実際は何をしたくてどう感じて生きていたいのか掴みどころのない人物だった。そんなアンディの手紙に対するメリッサの反応を愛加さんがとても丁寧に表現されていて、メリッサを通してアンディを感じ、やがて、年月を経ていくなかで成長をとげ表情が見えるようになってきたアンディ、だんだんアンディ自身が見えてきた。
二幕の和樹アンディは前髪を分けたスーツ姿、アンディとメリッサ。それぞれ別の道を歩み始め その先で それぞれが出会った人・別れた人を通して感じ入ったこと、選択していく人生、でも どんなに移り変わるものがあっても、唯一手紙だけは変わらない。
ついに求めあう思いが深まり惹かれ合うさまや、その後の展開がぐんぐん迫ってきました。
これは加藤和樹さんファンとしての丸出しの感想になってしまいますが、一幕も素敵でしたが、二幕になった時のアンディの男っぷりが凄い良かったですね。話の内容と全然関係ないところで、こんなにカッコイイ人に「愛してます」なんて言われて好きにならない人がいるのだろうかと、迷わず胸に飛び込んでしまえと思った。
愛加さんメリッサは品があり、ほんとに可愛らしくて、美しかった。言葉や単語の弾みが気持ちよく聞こえてくる。心情を表現するのがとても上手い女優さんだなと思いました。
2人で綴る魅力的な時間にどっぷりとハマりこんでしまい、ラストは胸が痛かった。客席の あちこちから すすり泣く音が聞こえてきました。
カーテンコールはただただ「和樹くん、カッコいい」と「愛加さん、可愛い」という感想に終始しておりました。
最後の最後まで素敵だった。
購入した原作本
自宅に戻りページをめくってみると、そこに綴られた文字の表現からも、2人が出会い、過ごしてきた年月を改めて実感することができて、より作品を趣深いものとして感じられました。
「ラヴ・レターズ」
幼馴染の恋といえば、私の母も幼馴染と婚約同然だったのに別れました。
子供の頃から尊敬し合い、大学時代は結婚も視野にいれた交際だったけど、ある時、彼から発せられた些細な一言を聞いたとき、強烈に相手を”異性”として意識しすぎたことで気持ちが萎縮してしまったらしい。それはあまりに些細なことでほんとに相手が気の毒になるようなエピソードです(;^_^A
その後、落ち着いたものの素直になりきれず意地をはっているうちにスレ違いが続いて距離ができてしまった。それから数年後、彼から別の人と結婚することを聞かされたことで、母は自分も結婚しようと思えるようになり、その直後に見合いした私の父と結婚した(笑)
その人とは 互いに結婚した後も年賀状などで近況を知らせ合う関係は続き、ある時、それに気づいた私が問いかけると、母は彼とのことを幸せそうに語り聞かせてくれた。いつまでも色あせないキラキラした思い出は母の生きる支えだったし、彼は青春を彩る大切な人物として存在し続けていた。そんな母が病に倒れ、もう余命いくばくもないという状況を迎えたとき、病室に その彼が会いにきてくれたのですが、一目で特別な人だと分かるほど、互いに狼狽して見つめ合えないほどショックを受け合っていたのだ。その時、周りにいた私達は完全に蚊帳の外でした。母は いつも気丈にふるまい自分の姿を周囲に堂々と見せていたのに、彼には今の自分を見られることを とてもためらっていたし、その再会の2日後に亡くなってしまった。お葬式にも その人はきてくれたけど、憔悴しきった彼の表情をみて「ほんとに お母さんのことを好きだったんだな」と感じました。
劇中でメリッサが「会いたくない、私は消えます」と叫ぶ姿をみたとき、あの時の母の姿が頭に甦ってきて、うーーーん。なんとも言えない気持ちになりましたね。
「意地をはらずに
素直になった方がいい」
というのは母がよく言っていたことですが、アンディとメリッサにも あーーここで気持ちに素直になれていればとか、相手を大切に思えていれば、うまくいったかもしれないのに~と思えた分岐点を感じました。こういうのを見ると みんな人ぞれぞれ違う人間なんだからピッタリ合うというのは難しいでしょうし、それなら好きな人には「好き」と伝えた方がいいし、一緒にいられるならいた方がいいなと思う。あー歯がゆい。
アンディとメリッサは互いに相容れきれない部分もあったのかもしれないけど、最後の最後まで こんなふうに思い合える人と巡り合えるなんて幸せですよね。
この朗読劇
母と一緒に観たかったです(笑)
どんな感想が聞けたのだろう
そして、あれから20年以上たつけど
あの彼はお元気だろうか(;'∀')
懐かしく思い出し、どうかお元気で幸せであってほしいと思った。
作品を通して普段は忘れ去っていた記憶が甦ることってありますよね。
アンディとメリッサもそれぞれに向き合う現実があったからこそ成長ができ、つかずはなれずを繰り返しながらの互いの存在があったわけで、だからこそ かけがいのない人になりえたときに、ほんとうに離れられなくなってしまったんだろうな~。
アンディの告白と
それを見つめるメリッサの横顔
ようやく「愛してる」って言えましたね
たぶんもっともっと深い話だと思うけど、今の私にはこんなふうに感じられた。
やっぱり演じる人に思い入れが強いと感じることに「好き」な要素を多く感じとってしまいますね。
また再演があったら観に行きたいなと思うし、他の組み合わせで見ても感じる部分は違ってくるかもしれない。
良い時間だったな。
コラボメニューも食べた(笑)
ニューヨーク・サンドイッチ
飲み物のメニューもありました。
面白いですね。
新しい「PARCO劇場」
ついに始まりました。
⇒ 公式サイト