本日は、脳卒中の両立支援コーディネーターに求められる医療知識② 両立支援の留意点を中心にまとめてみます。

 


脳卒中という一般には麻痺や言語障害などの重度障害が残存するイメージが強いですが、就労年齢における予後は比較的良好であり、約7割日常生活上ほぼ介助を必要としない状態まで回復しています。

 

 

  両立支援の留意点


1)障害に対する理解
脳卒中後の障害については、「目に見える障がい」「目に見えない障がい」があります。大きく分けて以下の3つのパターンがあります。


①手足の運動麻痺のように本人も周囲も分かる障害。
②感覚障害のように自覚はあるが周囲には分かりにくい障害。
③認知障害のように周囲が何となく気づいているが理解し難しく、かつ本人の自覚が乏しい障がい(高次脳機能障がい)。


②③は見落とさないように注意が必要です。特に高次脳機能障害は症状が様々で周囲も理解しにくい場合があるので、本人や医療機関からの情報収集を行い、個人情報に十分留意しながら職場で共有することが望まれます。

 

 

また、

 

身体障害者手帳(肢体不自由)、精神障害者保健福祉手帳(高次脳機能障害)が社会参加に有用な場合があり手帳申請の検討もしておくべきでしょう。


2)医療機関での情報共有
病状と障害を把握するためには、主治医や病棟看護師およびリハビリテーションスタッフなどの多職種と連携して情報収集を行い、本人からの情報と合わせて整理しておく必要があります。

治療内容やリハビリテーション内容、予後の見通し、補助具のこと等、支援する上でも復職診断書等も必要となります。


3)安全な通勤のための配慮
杖や車椅子を使用している場合、ラッシュ時の通勤は非常に困難を伴います。出退勤時間をずらすことや公共交通機関利用の通勤が実際に可能かどうかのチェック、エレベーター使用も考慮した通勤経路の見直しなどの支援も必要です。


特に都市部以外では自動車運転が必要な場合も多く、その際の自動車運転再開の手順も必要な支援の一つとなります。自動車運転再開の可否について、神経心理学的検査や実車評価が必要となります。またてんかん発作があった場合には、発作がない期間が2年間必要となるので再開時には注意を要します。

 



4)職場での配慮
職場における環境整備、作業内容の見直し、業務量の調整などは耐久性や適応能力を確認しながら行っていくという点で各疾患共通と思われますが、


脳卒中で特異的な点をいくつか挙げておきます。

・ふらつきがある場合は高所作業や移動しながらの作業などでは転倒・転落などの状況下で低温火傷も起こし得ます。

・高次脳機能障害では見落としや手順を忘れるなどのトラブルが起こり得ます。

・適切な配慮を行うためには、患者の機能評価と職場状況の把握がカギとなりますので、職業情報収集票と復職判断を行う時期での機能評価票の精度を高めておくことが重要です。


両立支援コーディネーターは患者本人とのやり取りだけでなく、是非ともリハビリテーション専門職との連携を深める必要があります。


また、


これらのサポートを職場の誰かに任せるとその人の業務が過度となる場合が多いため、支援側にも配慮が必要であることを職場に理解してもらうことが重要です。もちろん個人情報に関わることなので、本人ともよく話し合った上で可能な範囲で職場内の情報共有が出来ることが望ましい。



5)過度の配慮にも注意
周囲が気を使うあまりに、障がいに対する配慮が過剰となることも経験されます。もちろん無理を押して麻痺側を酷使すれば関節や筋肉を痛めてしまいます(過用症候群)。逆に人は自身の能力を使わないことで退化します。本人の能力を見ながら出来ることを伸ばしていき、ステップアップに繋がればモチベーションも高くなります。そのためには、職場の上司との意見交換ができる環境づくりが重要となることを職場に伝えておくべきです。

 

  まとめ

 

本日は、脳卒中の両立支援コーディネーターに求められる医療知識② 両立支援の留意点を中心にまとめてみました。


両立支援を行う上で、脳卒中の症状や障害に対する理解を深め、医療機関との多職種連携を図り情報交換を行い、安全な通勤、職場配慮をしてもらえるように調整していくことが必要になります。また過度な配慮にならないように上司との意見交換ができる環境づくりも重要となることを職場に伝えておくことも重要となります。


その人がその人らしく、よりよく生活していけるように、最適なサポートができるように学び続けます。最後までお読みいただきありがとうございます。参考にしていただければ幸いです。

 

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≪参考図書≫
・独立行政法人 労働者健康安全機構 
 治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル