本日は、前回の続きをまとめてみます。
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両立支援コーディネーターとして医療機関と企業との連携をする上で、「産業保健」の理解と連携がカギとなりますので産業保健についての知識を深めていきます。
産業保健活動に関わる人的資源
総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、医師(産業医)、保健師等、心理職、社会保険労務士、労働衛生コンサルタント、その他となります。
ここでは主に産業医、保健師等について述べます。
図は、事業者を中心とした安全衛生管理体制の一例です。
従業員50名以上の事業場では、産業医は選任義務があります(表)
50人未満の事業所では、労働者の健康管理の知識等を有する医師、保健師に健康管理の全部もしくは一部を行わせるよう努めねばならないとされています。(労衛法第13条の2、規則第15条の2)
労働者や業種によって選任すべき人数は異なりますが、支援者の事業所規模を確認し、産業医の存在の有無をまず確認するのが良いでしょう。
では、「産業医はいったい何をする人」なのか?
産業医の職務は以下の「5管理」になります。
・総括管理
・作業管理
・作業環境管理
・健康管理
・労働衛生教育
つまり、実際に職場をみた上で、事業者が安全や衛生に関する体制づくりのための計画を策定し、労働者が働く環境を整え健康や労働災害防止についての教育を行い、健康診断や面接を通して適正配置を行うよう、意見を述べ必要に応じて勧告する(図)など多岐にわたっています。また事業主が安全配慮義務違反とならないように、その活動を支援することも重要な職務となります。
産業医と主治医との違いは?
産業医と主治医の違いを図に示します。対労働者/事業者と対患者という大きな違いをベースに、予防・増悪防止のための措置と疾病の治療という大きな違いが分かります。
「保健師等」健康診断の運営や保健指導、医療の判断のできる産業保健スタッフの一員として、個人と組織の支援を行っています。保健師等が常勤で勤務している場合もあるので、保健師等の存在(や可能であれば職務) も確認する必要があります。
産業医が非常勤で保健師等が不在の場合、衛生管理者が職場環境の整備や健康相談の役割を主として担っていることもあります。
・常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しています。
・10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者または衛生推進者選任されています。
産業保健体制について述べましたが、従業員数50人未満の小規模事業場には産業医の選任義務がなく、産業保健スタッフもいないことが多く、地域産業保健センター(産業保健総合支援センターの地域窓口)の両立支援コーディネーターが、医師の指導のもと、就業配慮の内容、医療機関の用語をよりわかりやすく「翻訳」する必要性が高まることが想定されます。小規模事業場に対しては、地域産業保健センターを紹介するのも良いでしょう。
職場復帰の判断
両立支援コーディネーターと産業保健スタッフが一番関わるであろう場面は、労働者が職場復帰する場面ではないでしょうか。
産業医や保健師等が在籍している職場であれば、両立支援コーディネーターの良き理解者となって協力してくれることが見込まれます。
職場復帰の判断は、産業医等の意見をもとに、事業主が決定しますが、産業医がいない場合は、主治医の意見をもとに事業主が決定します。
産業保健スタッフが十分に機能していない場合は、両立支援コーディネーターが主治医の意見を、専門家でない担当者にわかりやすく伝える必要があります。
主治医側も、職場の状況がわからない中、患者(支援対象者)から「短時間勤務なら可」や「配置転換が望ましい」と診断書に書いてください、と依頼され困惑することもあります。その場合は、なぜ記載が必要か、両立支援コーディネーターが間に入り説明をする必要があります。
一般的には、主治医は症状が改善すれば「職場復帰可能」と判断しますが、実際の業務遂行能力と症状の改善にはギャップがあることが多くあります。
症状改善だけでなく、支援対象者がどのような作業をしていて、どのような能力が必要かを主治医に伝えると良いでしょう。元の職場に戻ることが難しい場合は、どのような作業内容であれば職場復帰可能か、職場との調整が必要となります。
職場復帰に際して最低限必要なものとしては、
・生活リズムが整っていること
・安全に通勤ができること
・就労により症状悪化の可能性が高くないこと
などが挙げられます。
まとめ
本日は、(続)両立支援コーディネーターはなぜ産業保健の知識が必要か?についてまとめてみました。
両立支援コーディネーターとして医療機関と企業との連携をする上で、医療機関と企業とでは重視する考え方が違うから職場における両立支援として、「産業保健」の理解と連携がカギとなります。
その人がその人らしく、よりよい環境で仕事ができるように最適なサポートができるように学び続けます。最後までお読みいただきありがとうございます。参考にしていただければ幸いです。
・森晃爾 編『産業保健マニュアル』(南山堂)
・中央労働災害防止協会 編『労働衛生のしおり』(中央労働災害防止協会)
・産業医の職務Q&A編集委員会 編『産業医の職務Q&A』(産業医学振興財団)