高次脳機能障害のある方に様々なツールを用いて目的に沿った行動をガイドすることはとても有効な手段だからです。

 

  なぜツールが必要か?

目的に沿って行動をする手段として用いやすいためです。

 

 

理由は、高次脳機能障害の方にとって同時処理が難しいため、課題遂行している途中で「今、何をしていたのか?」「何のために行動していたのか?」が分からなくなってしまい、

 

 

例えば、指示されたことと違うことを行っていたり、試行錯誤を繰り返したり、混乱したりするなどがしばしばみられます。



職場では、正確に、そして素早く業務遂行していく能力が求められます。そして業務遂行するためには、常に「目的に沿って」「行動をする」能力が必要となります。

  ツールは目的ではない

ツールは目的ではなく手段です。

 

 

理由は、ツールを活用すればすぐに自立するものではなく、時間をかけて活用することができるようになりるからです。また、周囲の継続的なフォローが必要となるからです。

 

 

例えば、活用するには、本人の能力や特性を十分に理解しておくことが重要になります。また、人によってはツールを使わずに繰り返し、身体で覚える事が有効な人もいます。


だから、ツールは目的ではなく手段なのです。


  ツールの種類

  1. 職場アセスメントシート
  2. 行動手順書
  3. 作業の手順書
  4. 進捗管理表
  5. 入口・照合定規
  6. 作業指示書
  7. 明示の方法
 

 1.職場アセスメントシート

 

職場で安定して働くためには単に業務内容が適合していれば全てうまくいくものではなく、様々な要素の組み合わせがマッチしているかがポイントになります。

 

 

例えば、職業能力や性格、人間関係、職場のルール、事務所内の雰囲気、始業時間、終業時間、休憩時間などの組み合わせがマッチしているか等です。


どのようなところが仕事のしづらさに影響を与えているのか整理するためにも、「職場アセスメントシート」を活用し、高次脳機能障害のある方が働きやすい環境づくりに役立てることができます。
 

 

 2.行動手順書

 

「いつ」「どこで」「何をするのか」を把握して、出勤から退勤までの行動を時間に沿って一日の流れを整理したものがあればスケジュール管理しやすいからです。また注意、記憶、遂行機能障害などの症状がある場合は、手順書は有効です。


職場の要素を様々な角度から情報収集しておくことが大切になります。

 

 

 3.作業の手順書


仕事の手順を一つひとつの行動単位に細分化し、時系列に沿って並べること。注意、記憶、遂行機能障害などの症状がある場合は、課題分析を行い業務内容を定型化していくことが有効です。また、作業の手順書を作成することで自立して業務遂行がしやすくなります。


本人や職場の状況に合わせて、カスタマイズしていくことが必要です。
 

 

 4.進捗管理表


日をまたぐと、仕事をどこまでやったのか、提出したのかなど、分からなくなってしまうことが出てきます。メモリーノート等を活用して進捗管理をする方法もありますが、職場内で完結することですので、専用の進捗管理表を活用するのも一つの方法です。


使用法、仕事の指示があったら、作業内容(目的・注意事項)納期などを確認し、記入をする。すぐに終わらない仕事は進捗状況を記載し、終了した納品日を記載する。
 

 

 5.入口、照合用定規


パソコン業務では資料・手順書などが必要となりますが、注意の切り替えが苦手な人が多く、自分がどこまで行ったか分からなくなり、ミスを犯すことが見られます。


このような場合に定規の活用で誤入力を防止できます。入力・照合用定規の使用法、手順書及び入力する元データの見るべき箇所に、定規を使用します。定規の上の手順を見る→手順に沿って作業する→終了したら定規をずらすを繰り返し、習慣化するまで声かけをするといいとされています。
 

 

 6.作業指示書


口頭指示をするとすぐに忘れていたり、一度に多くの指示をすると一つのことしか覚えていなかったりなど、指示したことを忘れてしまうことはよく起こります。そこで作業指示書を活用することで、指示の行き違いを防止します。


使用方法、誰から誰への指示かが分かるように記載する。一度に多くの指示を出す場合は、優先順位(番号)をつけるなど記載しておくと便利です。
 

 

 7.明示の方法


ラベルや張り紙などで注意する事項を明示することは重要です。


記憶障害が重篤な人にとっては、毎回、はじめてやっているのと同じような感覚になります。そのため、初めての人でもすぐに分かるような環境作りが重要です。


行動を観察し、行動を遮るようなポイントに張り出すことが有効となります。
 

 

  まとめ


高次脳機能障害のある方に様々なツールを用いて目的に沿った行動をガイドすることはとても有効な手段です。


その人がその人らしく、よりよく生活していくためには周囲の方のサポートが必要です。皆が障がいに対する正しい知識を深め、症状に対する対応方法を学んでいくことが必要です。


最後までお読みいただきありがとうございます。
参考にしていただければ幸いです。

 

 

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