名画座にて~番外編 黒澤監督と森谷司郎監督 | 風似庵(ふ~にゃん)の独り言のブログ 心をフラットにして

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自分が感じた面白い事、ちょっとイイ話、考えさせる話 を徒然なるがまま 「独り言」として書いています。
まぁ暇つぶしがてら読んでいただければ…




“日本沈没”、“八甲田山”、“動乱”、“海峡” 等の作品の監督である “森谷司郎”監督が 初めて “黒澤明”の下で助監督として声がかかった作品は、

“悪い奴ほどよく眠る”

‥だった‥そうです。

この作品は、

“黒澤プロダクション”

‥の第一作目の作品だった為、“黒澤”監督から、

“助監督を全部変えようじゃないか‥”

‥という発案があり、“森谷”監督がチーフ助監督として抜擢された‥といいます。

そして、ここが “黒澤”監督らしいところなんですが、“森谷”監督が 顔合わせの為に “黒澤”邸を訪れると、

“今度の映画のキャスティングをしてみろ❗”

‥と言われた‥のだそうです。

初めて下に就くのに、いきなり こんな質問 無茶振りですよネ。ガーン


“森谷”監督は、

“悪い奴ほどよく眠る” 

‥という作品は、“ハムレット”‥の様な復讐劇だと思っていて、主人公である “西幸一(実際は三船敏郎氏が演じています)”役の役者を “三船敏郎”‥が演じるのでは、直情的で陰影に欠け、ヒロイックになり過ぎるのではないか?‥と考えた‥そうです。

そこで、主人公を補佐する親友の “板倉(実際は加藤武氏が演じています)”役に “三船”氏を起用する方がいいのではないか?‥と進言します。

すると、その進言に対して “黒澤”監督は、

“では、主人公の西には誰がいいんだ!”

‥と質問し直します。

そこで、“森谷”監督が推薦した役者さんが、“仲代達矢”さんでした。

しかし、当時の “仲代達矢”さんは、無名に近い俳優さんです。

そんな “森谷”監督の大胆なキャスティング案に、“黒澤”監督は暫く黙りこんでから、

“違うんだな”

‥とボソリと言い、

“要するに、人間にはMとWとがある。

三船はMで、仲代はWだ!”

‥と言いました。

Mは “男性的”、Wは “女性的”‥という意味を指した言葉‥だそうです。

“それに、どんなに客観的にいいと思っても、演出家が その俳優をよく知らなくては主役は任せられないよ”

‥とも付け加えました。

そんな “黒澤”監督の言葉に、“森谷”監督は納得した‥そうです。
 
つまり、“黒澤”映画の主人公は “黒澤”監督自身であり、その分身である主人公を自分のよく知らない役者には任せられない‥という事を “黒澤”監督は言っていて、“森谷”監督も、

“その通り”

‥だと感じたから‥だそうです。

しかし、面白いもので この “森谷”監督の進言が効を奏したのか? “黒澤”‥は次回作である “用心棒”‥の準主役に “仲代達矢”氏を起用しました。

実はこの役、はじめは “三橋達也”氏が演じる予定だった‥役だそうです。

それ以降は皆さんがご存知の様に “黒澤映画”‥に “仲代達矢”氏は無くては成らない役者となりました。

結局、“森谷”監督は、

“悪い奴ほどよく眠る”

‥以降 

“赤ひげ”
 
‥までの5作品で “チーフ助監督”‥を務めています。

そして、

“赤ひげ”

‥以後に一本立ちしています。


“山本嘉次郎”監督に見出だされ、“小津安次郎”監督に監督第一作目の作品を世に出してもらった “黒澤”監督、その “黒澤”監督に見いだされた “森谷”監督が、“仲代達矢”‥という名優を世間に認知させるのに大きな役割があった “黒澤”作品への出演に影響があった‥そんな話を知ると、人と人の “縁”‥というものが、いかに活きていく上で大事になっていくかを感じ、また

“縁が縁を呼ぶ”

‥という 不思議なプラスなループが世の中にはあるものだなぁ‥と感じた次第です。