名画座にて~馬 | 風似庵(ふ~にゃん)の独り言のブログ 心をフラットにして

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自分が感じた面白い事、ちょっとイイ話、考えさせる話 を徒然なるがまま 「独り言」として書いています。
まぁ暇つぶしがてら読んでいただければ…




何年か前にブログに書いた事がある作品ですが、今回 再鑑賞したので 改めてブログを書きたいと思います。

今回 再鑑賞した作品は、製作 1941年、脚本・監督 “山本嘉次郎”氏、チーフ助監督 “黒澤明”氏、出演 “高峰秀子”女史、“竹久千恵子”女史、“藤原鶏太”氏‥の “馬”‥です。


東北の農村を舞台に少女と馬のふれあいをセミドキュメンタリー風に描かれた作品で、物語は、東北で毎年秋に開かれている “馬市”‥の場面から始まります。

沢山の群衆の中、熱心に”馬市”を見つめる少女 “いね(高峰秀子)”‥が居ました。

“いね”‥は近郊の農家 小野田家の娘で、小さい時から馬が好きな少女でした。

かって、“いね”‥の家でも馬を飼っていた事がありましたが、沢山のお金と手間をかけたにも関わらず病気で死んでしまった‥という過去があり、その為に出来てしまった借金で未だに苦しんでいて、“いね”‥が、

“馬が飼いたい❗”

‥と言っても、両親は取り合いません。

しかし、ある日 父親の “甚次郎(藤原鶏太)”‥が組合長に組合に呼ばれ、

“馬を預かってくれ‥”

‥と頼まれます。

しかも、その条件は 馬を世話してくれれば、妊娠している馬の生まれてくる子馬はくれる‥という好条件でした。

初めは その申し出に躊躇していた “甚次郎”‥でしたが、最後には その申し出を受ける事にし、それを聞いた “いね”‥は大喜びです。

しかし、厳しい冬に向かい 妊娠馬の世話は大変なものでした。

“甚次郎”‥が荷馬車の下敷きになり、重症を負う‥という事件も重なり、馬は母親から “疫病神”‥言われてしまいます。

それでも、“いね”‥は馬を庇い、懸命に育て 長い長い冬が終わります。

田畑の上を渡る風も馨る5月、“いね”‥の馬は美しい子馬を産み落としますが、組合への借金を返す為に、その子馬を泣く泣く売る事になってしまいます。

それは “いね”‥は勿論、家族中も涙を呑んでの結論でした。

ですが、母馬が売られていく子馬を探し嘆き悲しむ姿を見て、“いね”‥は自分が女工になって子馬を買い戻そう‥と決心します。(その頃の女工は重労働で、中には それが原因で死んでしまう様な人も居た‥と聞いた事があります)

“いね”‥が女工になって1年が過ぎ、お盆に里帰りすると、小さかった子馬は見違える程 大きな二歳駒になっていました。

そして、いよいよ “いね”‥が丹精込めて育てた子馬が馬市に出される事になります。

そして馬市に出された子馬は550円‥という高値がつき売れ “軍用馬”‥として採用される事になりました。

長い間の “いね”‥やその家族の苦労はむくわれました。

父親も母親も、勿論 “いね”‥も声をあげて泣きました。

“軍用馬”‥となった馬は、村人達の振る旗の波の中、旅立っていきます。

そんな子馬の姿を “いね”‥は何時までも何時までも見送るのでした。


初めてこの映画を鑑賞した時は、

“この映画が実質的に黒澤明監督の処女作である”

‥と知っての鑑賞でした。

当時の “嘉次郎”監督は、掛け持ちで何本もの作品を撮っていて、その撮影の関係で、チーフ助監督だった “黒澤”監督に本作の大部分を占めるロケ撮影を任せ 実質 “黒澤”監督が撮っていた‥という事ですし、脚本も “嘉次郎”監督の名義ですが、最終的なリライトは完全に “黒澤”監督に任せきりだった‥と言われています。

そして、更に興味深いのは、“黒澤”監督と主演女優の “高峰秀子”女史のロマンスです。

そのロマンスは結局 “東宝”‥の看板女優である “高峰秀子”女史と、一介の助監督でしかない “黒澤”監督とのロマンス‥という事で、“東宝”‥の幹部から潰された‥というのが定説で、それめ知っていたから、どうしても、

“見てみたい❗”

‥と思ったのです。

でも、今回再鑑賞して、そんな事に関係なく、

“いゃ~良い写真だなぁ❗”

‥と感じました。

なんて言っても、キラキラした “秀子”女史のフレッシュな演技、確かに こんな女性が目の前に居たら、“黒澤”監督で無くても 好きになって 禁断の実に手を出してしまいそうです。口笛

それに、他の役者さんの “顔”

この映画を今撮り直そう‥としても、無理だと思うのは、役者さんの “顔”‥が 地についている‥というか 役者さんと言うより農民そのもの‥に見えるからです。

それがいい❗チュー

“世紀のロマンス”‥に発展したかも‥といった事に興味を持たれた方や、単純に馬好きの人にお勧めの1本でした。