私が開発した「がま口内蔵L字ファスナー角財布 ZUG]の特許を取って「特許証」が届いた時、「誰でも特許を取りたい、と思ったら取れるんだ!」という思いを多くの人に知っていただきたくて、新聞社さんにプレスリリースを出しました。今から2年前のことです。

 

取材に来ていただき、記者さんとたくさんお話をして、自分の中でぐちゃぐちゃになっていた財布に対する考えなどがどんどんまとまっていって、自分にとっては本当に貴重な体験でした。

 

取材の最後に記者さんから「次は何の特許を取りたいと考えていらっしゃいますか?」と聞かれたとき、その質問にちょっと違和感を感じたので正直に答えました。「特許を取るために開発したのではなく、自分が欲しいと思う物がなかったから開発し、たまたま世の中になかったから特許を取っただけなので、今後もそのようなことがあれば特許を取ることを考えるかもしれません」と。特許を取るために何かを開発するのではないのです。

 

あの日から先週までは特に開発したい、とか「こういう物があったらな」と言うのがなかったのですが、先週「日本婦人発明家協会」のなるほど展に参加してから、ちょっと考え方や視点が変わりました。

 

この「日本婦人発明家協会」というのは、ほとんど女性で構成された発明家の集まりです。70年の歴史を持つ団体で、毎年春に開催される「なるほど展」では前年に開催された発明コンクールの受賞作品の展示や発明品の即売会などを行います。なんとほぼ毎年、女性皇族が来場くださり、会員の発明品をご覧くださいます。今年は佳子内親王殿下にお出ましいただき、実は私も開発した財布についてご説明申し上げました。

 

 

昨年の夏前にこの協会へ入会し、発明品コンクールへも参加をしました。なんと「婦人発明家協会会長賞」という賞をいただき、授賞式と発明品販売のために先週、なるほど展へ参加してきたわけです。

 

 

この協会、会員の平均年齢はたぶん私の年齢を軽く一回りは越えていると思います。実際、受賞者の方々は人生の大先輩ばかり。

 

そのような方々の発明品をたくさん見て、世の中色々なものが飽和状態、もう発明なんてあまり出ないだろうと勝手に考えていた私は考えが甘かったことに気が付きました。

 

あの日から、とにかく何か物を見るときに「問題点」を考え、解決するためにはどうすればいいのか自然と脳が動き出します。

 

今まで発明家を名乗るつもりはまったくありませんでしたが、「誰もが不便を無くし、快適に生きる」ために脳を使うことは「発明家として生きる」ことなのかなと思うようになりました。

 

自分の脳が誰かのために使えるようになるなんて、とっても幸せな事だと思います。

 

会場にいた間に、来場された方から「私はこんなこと一つも思いつかないわ~」という言葉を幾度となく聞きました。

 

人にはそれぞれ役割や得意なことがあります。私はたまたま「無い物をひねり出す」ことが得意なだけで、他のことでできないことがたくさんあります。

 

これが「得意なことで生きていく」ということなんだな~と思ったら、「発明家という肩書を持つ」のも悪くないな、と思いました。