こんにちは。
「パレード」色んな人からの「ジムコンリー本当にヤナ奴」だとか「スターンズ大キライ」だとかの罵詈雑言に耐えながら、毎日がんばっています。
皆様、いかがお過ごしですか?
坂元健児です。


さて…
先日、劇団四季春劇場の「ライオンキング」が終わってしまいました。
約19年前の、ちょうど今頃がオーディションで、シンバという役を頂いてから、あっという間に感じます。
ライオンキングは、もちろん初舞台ではありませんが、1998年、当時まだ建設中だった「春劇場」に、ヘルメットを被って一歩足を踏み入れたあの日から、今の僕が始まったと思っています。

「感謝」「寂しさ」「懐かしさ」などは、当然ではありますが、同時に「辛かったこと」「恥ずかしかったこと」「切ない思いをしたこと」など本当に、ありとあらゆる感情が、あの劇場にはあります。「感動したこと」も。
あの劇場に関わった、多くの人が、感謝や寂しさを発信していると思いますので、ここは敢えて「切ない思いをした」思い出話を……。


闘いが終わった故郷、プライドランドの地に佇む、シンバ(←僕です。)。
全てを見守っていた猿のラフィキによって掛けられた、王の証であるマントを翻し、一歩一歩と踏みしめながら、遥かにそびえ立つプライドロックを登るシンバ。
その頂点にたどり着いた新しい王「シンバ」が放つ、強さと威厳に満ち溢れた雄叫びに、プライドランドの動物達は、それを讃え、歓喜に沸く。

という、感動的なクライマックス。

さて、そのそびえ立つプライドロックは、フラットな床からコンピューターによって徐々にその姿を表し、グルグルと廻りながら、最終的には7メートル(体感ですが)もの高さとなる。そこからの風景は、全てのものが眼下となり、それはそれは大スペクタクルな光景が作り上げられるのです。
が、とある日のそのクライマックス。
闘いの終わったプライドランドに佇むシンバ→ラフィキがシンバの肩にマントを掛ける→王となる決意を固めプライドロックに一歩足を踏み出……そうとしましたが、プライドロックが出てきません。
しかし、音楽はそのまま流れています。二歩目、三歩目と足を踏みしめるも、プライドロックは、いっこうに姿を現しません。
平らな床を、ただ歩き回る僕に、ラフィキとナラとザズーは、厳かな雰囲気で、お辞儀してくれています。
友達のティモンとプンブァは、平たい地面をただ歩き回っている僕に「やったなぁ!シンバっ!かっこいいいぜぇ!」みたいな雰囲気で、手を振ってくれてたりします。
そのうちに、色んな動物達が、ワラワラと集まってきます。
僕は、舞台のど真ん中に立ち、僕を讃えてくれている動物達の姿を見て、もはやプライドロックの故障などどうでもよくなり、父さんの思いを胸に、晴れて王になった思いを噛みしめて感動していましたが……

ダメです。
やっぱり無理です。

だって、真面目で、きっちりしている動物達は、決められている、本来プライドロックを見上げて囲む事になっている正しい位置に、一寸の狂いもなく立っているのです。
もう一度言いますが、何にもない、ただの平らな床の真ん中に、僕は立っています!プライドロックが出ていないから!
眼下に広がる雄大なプライドランドどころか、僕の目の前には、キリンさんや、ガゼルさん、サイさん、シマウマさんなどがビッシリと立ちはだかり、なんとお客様からはシンバの欠片も見えない状態。
新たに誕生したライオンのキングが、完全に草食動物達に埋もれてしまいました。
少しでも、今日ご観劇下さっているお客様に、成長したシンバを観て頂きたいと思い、キリンの脚の隙間を縫って、チラチラ顔を覗かせてみたりしましたが、焼け石に水。シマウマのシマシマの間も無理。
いつもと同じように時間は流れ、とうとう雄叫びの時間となってしまいました……平たい床のままで。

「うぉぉ〜〜〜〜〜〜っ(シンバはここに居ますよぉぉーーーーっ)!!!」という、強い思いも込めた、悲鳴にも似たデカい声で、悲しいアピールをして幕を閉じました。
あの春劇場のステージでの切ない思い出は、忘れられません。

その他にも「春劇場の駐車場でライオンが、猿や鳥やイボイノシシに見守られながら納車した事件」や「春劇場のリハーサル室でのミーティングにて、ヤクルトを使ってちょっとボケて和ませようとした事が、報告書レベルの大事になってしまった事件」など、様々な思い出がいっぱいつまった「春劇場」。

まあやっぱり、行き着く所は「感謝」ですね。

「春劇場!ありがとう!ロビーの壁に、画ビョウ刺してごめんねm(__)m」

今日は休演日なので、のんびりして、明日からまた「パレード」がんばります(^-^)/

坂元健児