廃用身
原作は、現役医師が2003年に発表した小説です。認知症や脳梗塞で麻痺のある患者さんが集まる施設。家族の介護疲れから、実は虐待を受けていたある患者さん。背中の床ずれも良くならなければ、麻痺側の足の潰瘍も良くならない。いよいよ、足は切断しなくてはとなり、しかし、切断してみると、お荷物だった足が無くなった為?本人も体が軽くなり、介護する側も、体重が減ったので、介護が楽になり。ならばと、麻痺のあるもう一方の足と左腕も切断。すると、更に活気も上がり、気分も陽気になり、リハビリも積極的に。そこで、主人公の医師は、麻痺の手足は無くなった方が、患者さんの全身状態が改善するのでは?という考えに行きつき、次から次と麻痺の手足を切り始めます。中には、今まであまり言葉の出なかった方が、喋るようになったり、いつも冷たく常に痺れが残る腕でが無くなったことでとても喜ぶ患者さんなど。しかし、あるとき、ある事件が起こり。この医師が行なっている治療がマスコミで、その是非が問われ事態に。また、実は強引に手術をすすめられ、後悔している方もいるという内部告発のような文章も現れたり。介護保険が施行されたのが、2000年。この小説が発表されたのが2003年です。いつも現場の邪魔しやがると、個人的に目の敵にしていた、厚生省(ごめんなさい)が、唯一、よくやってくれた!と褒めたいのが、実は介護保険の開設で。介護保険以前の時代は、体力や認知機能が低下したお年寄りの行き場がなくて、とても困っていました。ご病気で入院されて、病気は良くなっても、入院で体力が落ちてしまうと、現代では、家では介護するマンパワーは無い御家庭が多く、そのようなお年寄りを長期に入院させてくれる施設も少なく、空きも無く。老人ホーム自体は昔からありましたが、今とは、全く様相が異なりました。そこに介護保険が登場したことで、現在のように施設や在宅サービスが充実しました。2003年は、まだ今ほど高齢者施設は多くなく、この作者も、先の見えない袋小路の中で、夢のような解決策を夢見たのかもしれません。物語の中で行なっている手術は、倫理的なことを抜かせば、現実に実行可能なことで、SF的でないところが、むしろ怖いところです。最後、善悪の答えは、はっきりとは示さず、しかし、希望もにおわせるようなオープンエンドに思います。しかし、独善的な行き過ぎはダメですよという警鐘も。そんなことで、今、現役医師が書いた小説は多数ありますが、かつかなりささる物語でした。