来月に入籍することとなり、速攻家探しを始めた私たち。
ひとまず2人で住める家を探す。
2人の職場に通いやすくて、家賃は今までそれぞれ払ってた家賃を足して×0.8位した額かなぁ。
それなりの金額である。
早速不動産屋に駆け込み、条件を伝え、物件をピックアップしてもらう。
「そうですねぇ…こんな感じになっちゃいますねぇ…。」
提示された物件を見て愕然とする。
私は曲がりなりにも建築を生業にしている者。
建物のグレードくらいはわかる…こんだけ出してもこんな家にしか住めないのか。
加えて敷金礼金に仲介手数料。家賃が上がれば上がるほど、初期費用も高額だ。
こんな家にこんなにお金払わないといけないの?
全くもって納得がいかない。
結婚が決まって初めて彼の年収を聞いた。
私より低いと勝手に思っていたのだが、意外にも私より少し多かった。
やらしいはなし、私たちは立派なパワーカップルだ。
そんな私たちでも東京には満足するような家を借りることができない。東京の地価どうなってんだ。
ヤケクソになった私たちは、賃貸に反旗を翻し、よりによって高騰しまくっているマンション購入へ舵を切った。
結婚に向けての準備をするために、有給をとったある日、空いた時間で広尾のカフェでリストアップした不動産の情報を整理していた。
隣には同い年くらいの女性。綺麗な洋服に身を包んで本を読みながらデトックスウォーターを飲んでいる。
特に気に留めるわけでもなく自分の作業を進めていると急に隣の席が騒がしくなってきた。
隣を見ると彼女の子供たちが合流していた。
ランドセルには黄金のペンがクロスしたマークが誇らしげに輝いている。
広尾には慶応の幼稚舎があるのだ。
幼稚舎のママ友か。遠くから通ってるから毎日送り迎えしてるのかな、大変だなぁと思っていると、「ママ、僕今日歩いて帰るよ!」と少年。
えっ、歩ける距離に住んでるの?
広尾は言わずと知れた高級住宅地。周辺駅は麻布、六本木、恵比寿。まぁ、どこを取っても高級な住宅地だ。
早くに結婚して、高級住宅地に住み、慶応の幼稚舎に子供をいれて、広尾のカフェでデトックスウォーターを飲む。
一方20代、30代はほぼほぼ仕事、30代後半でやっと結婚が決まるも住む家が見つからず、郊外への引越しも視野に入れている私。
さらにこれから30年以上の労働を約束するように住宅ローンを組もうとしている。
待て待て、私の人生ゲームにデトックスウォーターのマスありました?
どんなにいい目が出て順調に進めることができていたとしても、私にそのコースはなかったような気がする。
人生の進め方が下手というよりも、ボードゲームの種類自体が違うのか。
まぁ、いいさ、労働者は労働者なりの幸せを掴んでやると物件探しに精を出すのであった。