「ゴジラVSメカゴジラ(1993年)」 監督:大河原孝夫


度重なるゴジラ災害に、Gフォースが結成。
さらに、これまで考案されてきた幾多のG兵器、その技術と経験を活かし、今ここに史上最強最高の対ゴジラ用戦闘マシーンが誕生しようとしていた。



VSシリーズも、遂に5作目を迎えました。さらに、この年はゴジラ生誕40周年という節目でもあります。

そのメモリアルイヤーに選ばれたゴジラの対戦相手は、あの「メカゴジラ」

昭和シリーズラスト2作で登場したメカゴジラは「モスラ」「キングギドラ」等と比べて遅めのデビューでしたが、やっぱり人気キャラクターだったんでしょうね。


「特殊戦略作戦室」、「国立超科学研究センター」、「国家環境計画局」と組織名がポンポン変わってきたゴジラ対策チームでしたが、
今作から「Gフォース」で定着します。


「今度こそ、ヤツの息の根を止めてやる。」

麻生孝昭司令官です。
役者は「中尾彬」さん。

メカゴジラでゴジラを倒すことに、やたらと熱意を持ってます。
新鋭組織の司令官としての気概でしょうか、それとも計画の立案者なんでしょうか。


麻生司令の台詞から始まるオープニングは必見です。
ナレーション「小林清志」さんによって語られるメカゴジラ開発の経緯。赤く光るフラッシュと、そしてテーマ曲と共に映るタイトル。
 



65年以上も続いてるシリーズですが、
こういう格好良い見せ方はVSシリーズならではだと思います。



以前の記事で、子供の頃の私は昭和シリーズのほうが好きだったと書かせていただきました。

理由は、VSシリーズ特有の
「ビームを撃つだけの怪獣バトル」が単調で嫌いだったんですよ。


ゴジラとコングの乱闘、噛みつきや飛び蹴りをキングギドラにかますアンギラスやゴロザウルス、軽い身のこなしでメカゴジラに挑むキングシーサー。
生き物らしい肉弾戦が好きだったんですよね。


一方、川北紘一特技監督の考えは、
「口から熱線を吐ける生き物が、殴り合う時点で変だ」とのこと。

たしかに、食うか食われるかの自然界では一撃必殺で仕留めるのが常です。
監督の意見も一理ありますね。


まあ、今は昭和、VSシリーズどっちも好きだからいいんですけど。




20周年記念の本作は、開始15分で怪獣バトルが始まります。

ベーリング海に浮かぶアドノア島(架空の島)で「ゴジラ」「ラドン」が激突。
ラドン、1968年の「怪獣総進撃」以来、四半世紀ぶりの登場です。
先代と比べて、よりプテラノドンらしさが強くなったデザインです。

空を飛ぶ怪獣とゴジラの対決は前作「ゴジラVSモスラ」でもやってますが、ラドンのくちばし攻撃やゴジラの絞め技等、肉弾戦で上手く差別化してますね。
監督いわく「怪獣ではなく猛獣同士の戦いをイメージした」とのこと。
 



このアドノア島では、人間大はある巨大な卵が見つかっています。

プテラノドンの全身骨格化石が発見されるような島でみつかった卵。産まれるのはラドンだろうなと思いきや、誕生したのはなんと「ゴジラザウルス」
本作から登場するVSシリーズのミニラ、
「ベビーゴジラ」です。
 




「プテラノドンじゃない、翼竜の赤ちゃんなんかじゃない!」

と驚くのは本作の主人公、青木一馬
役者さんは「高嶋政宏」さん。
「ガンヘッド」のブルックリンのように、今回も半人前のキャラクターを演じられてます。

映えあるメカゴジラ4人目のパイロットに選ばれた男ですが、特技無し、趣味プテラノドン、上司への報連相ができないと何故こいつが人選されたのか不思議。G対策センターの人事は麻生司令と仲でも悪いんでしょうか。



雑食性の大人しいベビーゴジラ、
「国立生命科学研究所」女性研究員の五条梓に懐きます。
五条梓を演じるのは「佐野量子」さん。
優しい声質に、ベビーも安心するのかもしれません。



しかし、ベビーの親はもちろん五条だけではありません。

ゴジラが四日市に上陸。
ベビーゴジラを探しに来ました。
今作のゴジラは「ラドゴジ」
前作までと比べて脚が長くなり、「ハイレグゴジラ」なんて呼ばれることもありますね。
ベビーゴジラや戦車隊を見下ろすときの目が優しく見えるのも特徴だと思います。



出番が来たメカゴジラ。ゴジラを迎撃します。

ブリキのおもちゃ然とした先代と比べて、流線型のボディが印象的ですね。
バンパーが一体型になり、つるっとしたデザインに自動車が変わり始めたのもこの頃。当時の流行でしょうか。

口から「メガバスター」目から「レーザーキャノン」を撃ちゴジラの熱線は装甲で全て耐え切ります。
さらに、熱線を数倍にして跳ね返す「プラズマグレネイド」がゴジラに直撃。100メートルの巨体が軽々とふっ飛ばされます。
追い打ちの電流攻撃に泡を吹くゴジラ。「キングコング対ゴジラ」の頃から、ゴジラは電流に弱いですね。
メーサータンクも、ビームじゃなくてヒートロッドを装備したほうが良いかもしれません。


しかし、ゴジラが反撃
電気ショックを逆流され、メカゴジラはオーバーヒート。格闘戦に持ち込まれるとあっと言う間に戦闘不能になりました。



ベビーを見つけられずにゴジラは海へと帰りますが、メカゴジラの敗北に焦るGフォース。

ベビーゴジラの研究から、ゴジラ打開策を探ります。

その研究の中、「精神開発センター」の子供たちが、卵に付着していた古代の植物「シプニオキス」(これも架空です)から感じ取ったテレパシーを歌にして、ベビーに披露。
 



すると、歌を聴くベビーゴジラに感応し、アドノア島のラドンが復活しました。
 


ゴジラの放射熱線に敗れはしましたが、そのエネルギーを吸収、
「ファイヤーラドン」にパワーアップ。
数万年も隣り合った卵から現代に産まれた、ラドンとベビーゴジラ。別種の生物ですが、兄弟同然なのでしょう。
日本を襲撃します。
 




ゴジラの囮として運ばれていたベビーゴジラ、付き添っていた五条梓がラドンに拐われます。
メカゴジラ、そしてメカゴジラの前身にあたる
対G兵器試作1号「ガルーダ」が出撃。


ガルーダに乗り込むのは、恐竜坊やの青木。

大事な人を助けるために男を見せますが、空の大怪獣相手に無謀だったのか敢え無く撃墜。

青木の敵討ちに燃えるメカゴジラチーム。
初見殺しの「プラズマグレネイド」で勝利しました。腹から血を流すラドンが痛々しい…。



しかし、続くようにゴジラが登場。
科学の暴力でラドンには圧勝できたメカゴジラでしたが、消耗していたこともあり劣勢になります。
打撃の連続で損傷率80%はちょっとやばいぞ。



復活した青木が援護に駆けつけます。

ガルーダに気を取られるゴジラ、そこにメカゴジラが体当たり!

もうちょっとこの連携は見ていたかったと思いますが、
ここでベビー囮作戦に次ぐゴジラ対策が姿を現します。


ガルーダがメカゴジラの背面に合体、
「スーパーメカゴジラ」が完成。

ガルーダの機動力を得たメカゴジラ、ビームの集中砲火でゴジラを圧倒します。



フラフラになったゴジラに、
トドメとして用意された第3の作戦。

「Gクラッシャー」です。

ベビーゴジラの研究から判明した、ゴジラザウルスの腰部にある第2の脳。
「ゴジラザウルスにあるんだからゴジラにも当然ある!」って憶測で考案された作戦ですが、高圧電流を弱点に流されてグロッキー状態のゴジラ。




Gフォースの勝利が目前に迫る中、
ベビーゴジラの悲痛な叫びが戦場に響きます。



その想いに応えるラドン。
メカゴジラの攻撃を浴びながらも、ゴジラへと飛んでいき覆いかぶさりました。
 




「俺の弟を、返してくれ」



ラドンが風化すると共に、修復されていく第2の脳。

怪獣王の復活です。


ラドンの金粉(こう書くと鶏粉みたいですが)と、金色の川北後光の中で立ち上がるゴジラはめちゃくちゃ格好いい。


 



そして放たれるゴジラ最大の必殺技。

ファイヤー放射火炎!!

ありそうで無かった「赤い熱線」です。
凄い火薬の量です。熱線と共に、地面を火の波が走る。


強力な必殺技の登場、ラドンの粒子で装甲を溶かされ、メカゴジラには為す術もありません。

「もう何をやっても無駄だ!ヤツを止めることはできん!」

最高の捨て台詞、最高の賛美を浴び、ゴジラは大逆転勝利を飾りました。

三枝未希のテレパシーにより、母である五条と別れ、ベビーがゴジラと共に海に帰り、本作は幕を閉じます。

 




三枝がテレパシーで送ったのは、ラドンを目覚めさせた精神開発センターの歌。

DVDに収録されているオーディオ・コメンタリーによると、
アイヌ語の「キムタァン・カムイ レプタァン・カムイ」という歌詞が含まれているそうです。

「山の神、海の神」という意味。

私の愛読書でもある、マンガ「ゴールデンカムイ」作中でも説明されてましたが、アイヌには身の周りの役立つもの、力の及ばないものを「カムイ(神)」として崇める文化があります。



熱線を跳ね返し、弱点も責めると強力なメカゴジラでしたが、それに勝つのがゴジラとラドンの、生命としての力、そしてベビーゴジラへの想い。

動物らしくない動きのVSシリーズ、と書きましたが、実は生命の力を一番感じ取れる作品なのかもしれません。


以上、「ゴジラVSメカゴジラ」のレビューでした。





本日11/3は「文化の日」であり、
第一作「ゴジラ」が公開された「ゴジラの日」でもあります。

「ゴジラVSコング」のソフト販売や配信開始。


さらに
「ゴジラフェス2021」が開催されましたね。

フェスでは「ゴジラVSコング」の「アダム・ウィンガード」監督対談「モスラ」4Kプロジェクトが個人的に嬉しかったですが、やっぱり注目すべきは新作特撮の「ゴジラVSヘドラ」

煙を吸うヘドラやいきなり現れるゴジラ等、今年で50周年を迎えた「ゴジラ対ヘドラ」のオマージュも込められた作品でした。


監督は「中川和博」氏。
今年35歳という、こんな若手の方がゴジラ作品を作ったというのが本当に嬉しかったです。

予算さえあればミニチュア戦車や建物破壊描写も見れたと思うと、やっぱり国産ゴジラも捨てたものではないです。

「シン・ゴジラ」や「モンスターバースシリーズ」の後に作られる国産ゴジラが、どんな作品になるのか。

見ることができる日を、心待ちにしたいと思います。