「ゴジラVSモスラ(1992年)」 監督:大河原孝夫


ゴジラモスラ、そしてバトラ
隕石が引き金となり、極彩色の大決戦が始まる!



「ゴジラVSキングギドラ」から始まった、VSシリーズ。
便宜上「ゴジラ(1984)」と「ゴジラVSビオランテ」も含まれますが、シリーズの方針が決まったのは前作からです。


「メインは怪獣バトル、登場する怪獣も人気キャラクターを」


というスタイルをとったVSシリーズはエンタメ、話題性ともに抜群であり、怪獣ブーム全盛期の昭和シリーズにも引けを取らないレベルの人気を誇りました。



その中でも「ゴジラVSモスラ」は、平成以降で作られたシリーズ中最多の観客動員数を記録したようです。400万人を超えたのは「ゴジラ エビラ モスラ 南海の大決闘(1966)」以来。娯楽が多様化したきたことも考えると、なかなかの成績だったんじゃないでしょうか。
記憶が確かなら、私が初めてスクリーンで見た映画も本作だったと思います(3歳か…)。




その理由の1つは、やっぱり「モスラ」にあるんでしょうね。

本当に久しぶりの登場になります。
数えてみれば「怪獣総進撃」が公開された1968年から24年、「成虫モスラ」に限れば「ゴジラ エビラ モスラ 南海の大決闘」から26年ぶり。
操演が大変だからでしょうか?




トレジャーハンターの藤戸拓也(演:別所哲也)と、彼の元妻であり「国家環境計画局」の手塚雅子(演:小林聡美)等が、隕石の影響を調査しにインファント島を訪れます。
そこで発見した、巨大な卵



「モスラの卵です。」

そう伝えるのは、地球の先住民族「コスモス」の2人。VSシリーズの「小美人」です。
かつて栄華を誇っていた彼女らの祖先は、文明の力で地球を怒らせ、滅んでしまいました。


現在の環境破壊が続けば、現代人達も同じ過ちを冒してしまう。
そのメッセージを伝えるため、卵と共に来日を決めます。



藤戸等を乗せた船旅のスポンサーは、「丸友観光」
卵を吹きさらしにするよりは良い、という理由でコスモス達を招待しますが、それは方便。目的は金儲けです。

「モスラ(1961)」のネルソン、「モスラ対ゴジラ」のハッピー興行、「ゴジラ エビラ モスラ 南海の大決闘」の赤い竹、そして本作。
華麗な姿のモスラと小美人には、対になる強欲な悪党が似合うようです。



日本へ向かう藤戸たちの前に、
「ゴジラ」が出現。
前作の「ギドゴジ」と比べると、顔が潰れて瞳が明るくなり、表情がついてます。
 


ファンからの愛称は「バトゴジ」。
モスゴジだと「モスラ対ゴジラ」のゴジラと被ってしまうので、もう一体の登場怪獣からとった愛称です。



そう、隕石が起こした怪獣はゴジラ、モスラだけではなかったのです。


コスモスが滅んだのは、地球生命が産み出した怪獣の仕業でした。



「バトラ」
 


巨大な角を持つ、黒く禍々しいモスラ。
地球環境を脅かすものを徹底的に攻撃します。
常に上体を起こした姿勢を取っていますが、これは威嚇する芋虫の姿がモチーフになっています。
戦闘に特化しているだけあり、幼虫ながらも角や目から「プリズム光線」を撃ち、ゴジラと互角の水中戦を展開。



意外にも、ゴジラの水中戦は「ゴジラ エビラ モスラ 南海の大決闘」以来になります。
といっても、本当に水の中で殴り合っているわけではなく、海底を模したセットの前に水槽を置いて撮影しています。着ぐるみで水の中に入るのは危ないですからね。

それでも、たくさんの水泡で水中を演出していますし、海底火山も噴火するゴジラVSバトラは臨場感があります。




海のシーンといえば、忘れてはならないのが
「東宝大プール」
 

 


ゴジラやモスラたち怪獣が海を進み、戦艦やスーパーXⅡと戦うシーンは、この巨大なプールで撮影されています。
昭和シリーズから長年使われていた施設ですが、「ゴジラ FINAL WARS(2004)」公開後に取り壊されてしまいました。

広大な水面にミニチュアの軍艦が浮かび、戦闘機が飛び、それを蹴散らす怪獣たち。

勿論CGも同じでしょうが、私はここに職人芸をより感じるんですよね。

迫力やリアルさでゴジラ映画にもCGを、国産よりもモンスターバースの継続を願う声もありますが、
私が日本版ゴジラを見たい理由の1つはここにあります。




ゴジラバトラがマグマの中に消え、
コスモスは丸友にイメージキャラクターとして利用されてしまいます。


彼女達を取り戻すために、モスラが出撃。
 




無数の砲撃を受けながらミニチュアの街を進むんですが、幼虫モスラの表現は「モスラ(1961)」の圧勝です。

今作の幼虫モスラ、あまりにも機械的な動きで正直見ていて面白くないんですよね。




幼虫バトラについても一言。
平成シリーズ以降で唯一、城を破壊するという美味しい役をもらってますが、
芋虫のくせに普通に歩いてしまってるのは残念。




地面を滑るようにして進軍するモスラ、コスモスを探し出すことに成功します。そして、国会議事堂に繭を作り成虫へと変態。
 


羽化シーンは悪くないです。
羽根を伸ばすシーンは初代よりも長めに見せてくれるので、ここは評価したいところ。

ぬいぐるみっぽいと言われるVSシリーズのモスラ成虫ですが、「カイコガ」も結構モフモフしてるんで別にいいかなと思います。
(モスラのモチーフは「ヤママユガ」ですが。)



コスモスがモスラと帰って、めでたしめでたし



とはならないんですね。




今度は富士山が噴火し、ゴジラが出現。
1500度のマントルを泳いで来ました。
「ゴジラVSビオランテ」のときも火山から復活しましたが、雷が乱れ落ち、スパークが夜空を照らす登場はかなり派手です。
バトラが登場しようが、やっぱり破壊神の座は譲れません。

富士山が噴火すること自体がヤバい気もしますけど



迎え撃つ自衛隊。
「メーサー攻撃機」「2連装メーサータンク」と何気に新兵器が登場していますが、残念ながら敵うはずもありません。
 


「誰がやつを止められるんだ!」
と狼狽えるのは内閣安全保障室室長の土橋竜三。前作にも登場していましたが、今回は三枝未希と共に環境計画局に出向してるみたいです。

演じるのは「小林昭二」さん。
「ウルトラマン」の「ムラマツキャップ」、「仮面ライダー」の「おやっさん」で有名な方ですね。




「ウルトラマン」からは主役の「ハヤタ隊員」を演じられた「黒部進」さんも出演。
「三大怪獣 地球最大の決戦」や「キングコングの逆襲」と、脇役ながらも古くから東宝特撮シリーズに参加されてました。

今回は航空幕僚長役ですが、
何故かいつも陸上幕僚長、海上幕僚長と3人横並びなのが笑わせてくれます。




ゴジラだけでなく、バトラも再登場。
モスラと違い、瞬時に成虫になれます。

不完全変態、といって蛹を経由せずに幼虫→成虫になる生態ですね。
「バトルモスラ」らしさが強調されてますが、個人的にはセミやトンボのように脱皮して成虫になって欲しかったかな。



モスラバトラが激突。
 


戦うべき相手ではないのか、逃げ出すモスラ。バトラだって悪いことをしてるわけではないですからね。
目的は違えど、どちらも自然を愛する守護神です。



戦いに触発されたのか、ゴジラがリングイン
モスラを撃墜したバトラが、怪獣王に挑みます。
理由もなく破壊活動を続けるゴジラも、地球環境を脅かす存在ということなんでしょう。


横浜ランドマークタワーの下敷きにするなど猛攻をかけるバトラですが、相手は全身筋肉ダルマの水爆大怪獣。瓦礫の中からの不意打ちを食らい、劣勢になります。
幼虫時代のほうが絶対強い。


放射熱線の的になり続けるバトラに、モスラが助太刀。
触覚から放つ「超音波光線」がゴジラを怯ませます。
バトラもこれに応え、2体の守護神の数万年に及ぶ因縁は解消。
戦いは2対1に。


最後の攻撃、と言われるわりには効いてるのかよくわからないモスラの鱗粉ですが、今回は別。
稲妻さえ発生させ、さらにビームを跳ね返すという超強力な武器に変わってます。



金粉で表現された鱗粉乱反射してゴジラに襲いかかる超音波光線プリズム光線
まさに極彩色の大決戦です。
川北紘一特技監督の持ち味である、派手な演出が非常に気持ちいい。


熱線を封じられ、波状攻撃の前に為す術のないゴジラ。もうダウンするしかありません。

意地を見せてバトラは倒しますが、モスラによって海に封印されてしまいます。


「モスラ対ゴジラ」以来の負け戦となりました(「ゴジラVSビオランテ」はビオランテの勝ちにも見えますが)。




以上、「ゴジラVSモスラ」です。


ストーリーが「モスラ(1961)」、「モスラ対ゴジラ」の焼き回しだったり、テーマであるはずの「環境問題」についての描写が薄いのはマイナスですが、多くの色彩豊かな描写、客層を捉えた「ファミリームービー」という要素がエンタメ作品として成功したのでしょう。







前に当ブログで触れた「日本沈没」が、
「日本沈没 希望のひと 」としてTBSで連ドラ化しました。



そこまで真面目に見てるわけではないですし、始まったばかりですが、私の感想は別物として見るのが正解だと思います。


「日本が沈没する」という、どうあがいても絶望の天変地異。
それに登場人物がどう対処するかが見どころの作品なんですが、今のところドラマ版でやってることは利益絡みの小競り合い。


これだと話のスケールが小さくなってしまいます。



「半沢直樹」っぽい作品にしたいんでしょうか?
時代なんですかね。