「ゴジラVSキングギドラ(1991年)」 監督:大森一樹


UFOが過去と未来を飛び、宿命の対決を呼び起こす。
VSシリーズが本格始動した、娯楽大作!



「ゴジラ(1984)」で復活し、新しい切口の物語「ゴジラVSビオランテ」を見せた平成ゴジラ。
しかし、期待されていたほどの成績を残すことは出来なかったようです。


うーん、何故でしょうかね。
どっちも良い映画だと思いますけど、ちょっと大人しすぎる作風だったのでしょうか。

シリーズを継続させたい、その思いから再びテコ入れされたゴジラは、怪獣バトルをメインにし、人気怪獣の「キングギドラ」も登場する娯楽作品となりました。



海底に横たわるキングギドラと、それについて語り合う男女


まるで死んでいるような姿のキングギドラ。
翼には穴が開き、真ん中の首が欠損しています。
20世紀の終わりに、ゴジラと戦ったとのこと。


首が一本ないって、どんだけの激闘だったのよ。
ゴジラはどうなったのよ。
そもそも、20世紀の終わりにって、あんたらはいつの時代の人なのよ。


と、気になることばかりのプロローグ。

続いて、対峙するゴジラとキングギドラをバックにタイトルが出たと思ったら、
次にはUFOが画面いっぱいに登場。

つかみはバッチリですね。
「仮面ライダー電王」から表現を借りると、まさに「最初からクライマックス」状態。


UFO騒ぎの中、戦時中に恐竜を見たという老人も現れます。
主人公のノンフィクションライター、寺沢健一郎(演:豊原功補)が取材をすると、池端老人からそれはマーシャル諸島の「ラゴス島」(架空の島です)の出来事だったと教えられます。


オカルト記事(あの「ムー」です)で家を建てたという寺沢、ここで一つの仮説を立てます。

ラゴス島では、昭和29年に核実験が行われていました。

その実験の影響を受け、恐竜がゴジラになったのではないか。


楽しそうですね、この世界のムーの記者。
婆羅陀魏山神こと「バラン」の伝説とか、メガロのお面を付ける「シートピア海底王国」の民俗学とか特集して欲しいです。

裏付けのため、ラゴス島に池端と出征していた新堂靖明元隊長(演:土屋嘉男)にも訪れます。現在は大企業のトップになっている新堂が見せた、年季が入った数枚の写真。そこには紛れもない恐竜の姿が。


古生物学者「真崎洋典」も驚きを隠せません。
真崎を演じるのは「佐々木勝彦」さん。
「ゴジラ対メガロ」では「ジェットジャガー」を造った「伊吹吾郎」を、「メカゴジラの逆襲」では悲恋が印象的な「一之瀬明」を演じられてました。




ゴジラ誕生の秘密だけでなく、UFOを操る者の正体も明らかになります。
操縦していたのは、なんと23世紀の人間。


彼等は、「地球連邦機関」
タイムマシンを使って歴史の改変を行っている組織で、日本の未来を変えに来たと言います。
というのも、
23世紀の日本は、ゴジラ災害による核汚染で死滅しているとのこと。


タイムパラドックス問題はどうなのかと突っ込みたくなりますが、そんな難しい事を考える映画じゃないので無視しましょう。

それよりも、彼らの話を受け入れてしまうチョロ過ぎる内閣のほうが気になります。偵察のヘリが行方不明になってますが、その事を誰も追求しないとか大丈夫か。


ゴジラを抹殺すると言い出す未来人のウィルソン。

殺すといっても、未来の超兵器で撃滅するわけではありません。

その方法は、一冊の本が示してくれたようです。

寺沢が真崎教授等の取材を元に自説を残した、いや残そうとしていた「ゴジラ誕生」です。

ゴジラが水爆実験を受ける前に何とかしちゃおうという話なんですね。


未来人の紅一点エミーが、寺沢真崎三枝未希、それと遺伝子操作で生み出されたペット「ドラット」を3匹連れてタイムワープします。

たどり着いたのは、砲弾飛び交う1944年のラゴス島。
米軍の攻撃に追い詰められる、若き日の新堂会長や池端たち。

隊員が次々と銃弾に倒れる中、
島の奥から咆哮が轟きます。

太い後ろ足で歩く、2足歩行の恐竜。
前足は非常に短く、ティラノサウルスに似ていますが小さい頭部が特徴。
新堂会長の写真に載っていた、
「ゴジラザウルス」でした。

外界からの敵と判断したゴジラザウルス、米兵を蹴散らしていきます。
ティラノサウルス型の恐竜ですが、素早く動いて食い殺すとかはせず、木々の下敷きにしたり、尻尾で打ち払っていきます。
ゴジラと違ってただの恐竜なので、肉食動物のくせにゆっくりとしか歩けないのはどうなんだと思いますが…着ぐるみの制約ですね。仕方ないです。
ゴジラらしくて良いという人もいるかもしれませんが。


まさかの出来事に驚くアメリカ人たち。軍艦からの大砲で致命傷を負わせ、その隙に撤退しました。

水兵の一人に「スピルバーグ少佐」っていうモブがいるんですけど、会話の内容から、若き日の
「スティーヴン・スピルバーグ監督」の設定みたいです。
洋画人気や海外展開を意識したんでしょうか?
まあ、太平洋戦争中にはスピルバーグ監督は産まれてすらいませんけど。


艦砲射撃を食らい、瀕死のゴジラザウルス。
新堂会長達が感謝と別れを伝えたあと、テレポーテーション装置でベーリング海(何故ここなのか)に飛ばされます。



現代へ戻る寺沢たち。
予定通りゴジラの存在は消えましたが、
代わりに現れたのはあの3つ首の怪獣。

「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」以来20年ぶりの復活となる、「キングギドラ」です。

狛犬をイメージした初代と比べると、顔はドラゴンらしさが強調されましたね。
鳴き声も変わり、「ラドン」を加工した物になってます。
なんで変えたんでしょうか?
昭和シリーズの「宇宙怪獣キングギドラ」を大事にしたかったのでしょうか、それとも本当はラドンを出したかったのか。



キングギドラが現れたのは、未来人の計画でした。
エミーがわざとラゴス島に置き去りにした3匹のドラットが、水爆を浴び変貌したのです。


実は、日本を助けに来たというのは真っ赤な嘘。
彼らの正体は「地球均等環境会議」という、国家間の力の差を均等にすることを目的にする組織です。
23世紀の日本は世界一の国土を持つ程の経済大国になっていたため、それを懲らしめるために東京以外は全て破壊すると言うウィルソン。

赤字国の国土を買収してきたという、未来の日本。
なんか中国みたいですね。



その頃、ベーリング海の氷の下。

原子力潜水艦が航行しています。
ゴジラザウルスを核エネルギーでゴジラにするため、会長が周囲の反対を押して送り出したものです。
キングギドラを倒すためということでしたが、会長にはそれ以上の理由があるように思えます。
ラゴス島で自分たちを救ってくれた、救世主。
新堂会長には、ゴジラのいない世界に生きることなど考えられないのかもしれません。



海中を進む漕艇者の前に現れたのは、
なんとゴジラ。
 


過去に起きていた原子力潜水艦事故で、既に怪獣化していたのです。

川北後光が非常に綺麗な名場面です。
もう泣いちゃうくらい。

「川北後光」
川北紘一特技監督の独特の演出で、炊いたスモークの上から怪獣をライトで照らす技法です。

新堂会長が、キングギドラに襲われる人々が、再来を望むゴジラ。海底に現れる姿は、後光も差して正に「救世主」です。




「ヤツはもう一度、我々のために戦ってくれる」
新堂会長も見守る中、平成に蘇るゴジラとキングギドラの戦い。

お前だけには、絶対負けない!

満を持して登場した救世主ゴジラですが、その上をいくキングギドラ。
熱戦は翼でガードし、空中からの引力光線や巨体を活かした踏みつけで圧倒します。

しかし、警告以上の暴挙を始めたウィルソン達が許せないエミーアンドロイドM11寺沢がUFOに乗り込み、未来人のコントロールを妨害することに成功します。

それでも3本の首で締め付けてくるキングギドラですが、ゴジラが逆襲。
体内放射で吹っ飛ばし、熱線で翼に大穴を、真ん中の首を焼き切って勝利するゴジラ。

更にウィルソン達が乗るUFOも破壊し、ここに未来人達の野望は潰えます。

大円団、といきたいところですが
残念ながらそうはなりません。



今度はゴジラが日本に牙を向きます。

今作のゴジラは「ギドゴジ」。
VSシリーズを戦い抜く怪獣王、「4代目ゴジラ」の誕生です。
顔以外はビオゴジから変わっていませんが、劇中設定では身長が80メートルから100メートルに巨大化しています。



札幌でテレビ塔を破壊し、地下歩行空間を踏み抜き、新宿まで辿り着くゴジラ。
そして、それをビルに残り見つめている新堂会長。

再会した、怪獣王巨大企業の総帥。
見つめ合う姿は、悲しげな表情をしていて、まるで互いの立場を憐れむようです。


熱線を発射するゴジラ。

新堂会長は死亡します。


新堂会長を演じた土屋嘉男さん、ゴジラを生み出した本多猪四郎監督、そして円谷英二特技監督は、いつか「ゴジラと人間の対話」を撮りたいと考えていたようです。

それが遂に描かれた本作。
それは、「共存など有り得ない」という答えでした。

ギドゴジにしろ、「初代ゴジラ」にしろ、彼等の安住の地を奪ったのは人間。
原子力を放棄する日が来ない限り、ゴジラと人間がわかり会えることは不可能なのかもしれません。



破壊を続けるゴジラの前で、空中に突如閃光が発生。
「メカキングギドラ」の登場です。

仮死状態だったキングギドラを、未来の技術でエミーが蘇らせたのです。
その姿は、まるで機械の鎧を着たキングギドラ
かつて登場した「メカニコング」「メカゴジラ」とは違い、欠損した首や傷ついた体を機械化したサイボーグの怪獣です。
エミーが乗り込み、ゴジラと最後の戦いが始まります。

お前だけには、絶対負けない!


始まるキングギドラのリベンジ。
エミーが操縦する状態ではありますが、が入れ替わる展開は面白いですね。

強化された「レーザー引力光線」で尻餅をつかせ、更にゴジラごと都庁に突っ込むエミーとメカキングギドラ。
100メートルもある化物と戦うのに、ヘルメットはおろかシートベルトもしていないエミーには突っ込まざるを得ませんが、奮闘します。

放射熱線の威力に苦戦を強いられるものの、最後は腹部に装備する「マシンハンド」で拘束したまま海へと落下。
ゴジラVSキングギドラの第2ラウンドは、引き分けに終わりました。




以上、「ゴジラVSキングギドラ」でした。
これでもかとエンタメ要素をぶち込み、キングギドラまで復活させた本作。
ゴジラシリーズファンは熱狂し、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」のSF映画ファンは思わず笑ってしまうような、気軽に見れる娯楽作品だと思います。



最後に、
先日当ブログでもふれた「すぎやまこういち」氏ですが、敗血症性ショックのため9月30日に亡くなられました。

「ドラクエシリーズ」BGMは勿論のこと、「ゴジラVSビオランテ」の劇中曲「帰ってきたウルトラマン」の主題歌、そして歌謡曲の「恋のフーガ」等、数多くの作品を遺されました。
 


 

 



 



音楽は詳しいわけではないですが、こうして並べてみるだけでも独創的な楽曲が多いのではないかなと思います。




お悔やみ申し上げたいと思います。