「ゴジラ(1984)」 監督:橋本幸治




相次ぐ船舶遭難事故。生存者である大学生「奥村宏」の証言から、30年前に東京を火の海に変えた「ゴジラ」が再び現れた事が判明する。




「メカゴジラの逆襲」を最後に、長い眠りについたゴジラ映画。
その後、シリーズを見て育った世代を中心に、復活を求める声が強くなっていきました。
そんな中で製作された、9年ぶりのゴジラ映画。
地球を守るために侵略者達と戦ってきた昭和シリーズの設定をリセットし、「ゴジラ(1954)」以外は無かったことにして作られました。
「災害としてのゴジラ」を描く上で、それは仕方のない事でしょう。


久々のリアルなゴジラです。




遭難したと報道される「第五 八幡丸」を発見した、新聞記者「牧吾郎」。船内からは、ミイラ化した複数の変死体が見つかります。

調べる牧に、フナムシが放射性物質により変異した「ショッキラス」が襲いかかります。
実際のフナムシとは違いカサカサと素早く動くことはありませんが、体に刺さったモリが妙に生々しい造形です。


追い詰められる牧ですが、生存者の奥村宏に助けられます。
9人の乗組員を殺したのはショッキラスの仕業ですが、奥村が話すのは、違う生物について。



「巨大な岩のような、青白い光と物凄い声を発する化け物」

救助後に見せられた、「ある巨大生物」の写真から、その正体が判明します。

「ゴジラ」でした。




う~ん、写真を見るまでゴジラだと気づかないのは、ちょっと無理があるかな。

1954年の「ゴジラ東京襲来」は、この世界だと確実に日本史で習う、というか
センチネル島とか一部の未開民族以外は、世界中の人間が知っていると言っても過言ではないレベルの怪事件だと思うんですが。

まあ、前作の「メカゴジラの逆襲」から9年経って復活したゴジラなんで、そういう意味では必要なシーンでしょう。




彼の話から、「ゴジラ」の出現を確信する有識者たち。

パニックを避けるため、箝口令(かんこうれい)が敷かれます。
せっかくのスクープも、記事にできない牧。生物学者「林田信」を訪ねます。
林田を演じるのは、「夏木陽介」さん。シリーズへの参加は、「三大怪獣 地球最大の決戦」以来になります。凄い久しぶり。



博士の研究所で出会ったのは、奥村の妹「奥村尚子」。演じるは「沢口靖子」さんですね。
本作が公開された年から始まった女優オーディション「東宝シンデレラ」で芸能界入りを果たされたばかりなので、演技は超初々しい。
「メカゴジラの逆襲」の真船桂以上にサイボーグっぽいです。


牧が兄妹の再開を写真に納める中、
ソ連の原子力潜水艦が青ヶ島近海で撃沈されます。
ゴジラの仕業でしたが、アメリカから攻撃されたと判断し、睨み合う両大国。

日本のEEZ内に潜水艦を持ち込んで何やってたんでしょうか…本作が公開されたのは、まだ冷戦終結前の昭和。こんな事が有り得たんでしょうか。



緊張状態を打破するため、三田村清輝総理は情報統制の解除を決めます。

三田村総理役は、「日本沈没」の「田所博士」が印象的な「小林桂樹」さん。
我が強い田所博士とは真逆の、冷静な日本のリーダーを見事に演じられています。


総力をあげて行われる、自衛隊のゴジラ警戒体制。
ここで最高のBGMが!
 


壮大さと爽快さが同居している名曲だと思っています。
1分も無いのが残念。ずーーーっと聴いていたい。




しかし、そんな自衛隊の作戦も徒労に終わってしまいます。
濃霧の中、ゴジラが原子力発電所に上陸。

9年ぶりに登場するゴジラ。
84ゴジラと呼ばれる本作のゴジラは、鋭く、焦点の合わない目つきが特徴です。体型は首と腕が短くなり、久しぶりの怖いゴジラとなりました。
どっしりとした動きで施設を踏み壊す姿は、振り返ってみると第1作目以来だということに気づかされます。
原点回帰を目指した結果ですね。


ゴジラが発電所に現れたのは、エネルギー源である放射性物質を手に入れるため。
初代のように目的も不明に暴れまわるというのも良いですが、
反原子力のテーマを自然に作品内に落とし込める上手い設定だと思います。


今回ゴジラが破壊したのは、井浜原子力発電所。
国会議事堂や大阪城といったランドマークを壊してきたゴジラですが、この発電所はフィクションです。
いくら映画で、ゴジラに襲撃されたとはいえ、炉心が剥き出しになるという大惨事はまずかったのでしょう。


放射性物質を吸収するゴジラ。
そこに渡り鳥の群が通りすぎ、それを追いかけるように帰って行きました。

ゴジラに磁場感覚があると推測をたてる林田。
鳥が遠く離れた場所から巣に帰ることができるのは、磁場を感じ取れる能力があるからだといわれています。
この能力は、鳥だけでなくゴキブリやカメ、イヌやクマにもあるようです。
じゃあゴジラが持っていてもいいですよね(すげえ強引に納得しちゃいましょう)。


この習性を利用して、合成超音波でゴジラを三原山に誘導、火山に閉じ込める作戦が立案されます。

瓶から溢れ出る炭酸飲料を手に、三原山を人工的に爆発させることは可能であると説明する博士(演:小泉博)。


炭酸ジュースを使って、どうやって三原山噴火のメカニズムを説明したのか凄い気になります。

振ったんでしょうか。

「こうやって!シャカシャカシャ 噴火します!ドボドボドボ」みたいな。

見てえ。あと1分でもいいから巻き戻してほしい。


小泉博さんだけではありません。
内閣の一員、「日高環境庁長官」を演じるのは
「田島義文」さん。
東宝特撮シリーズでは防衛隊の指揮官等、数多く出演されてきた名バイプレイヤーです。
一番印象に残るのは「モスラ対ゴジラ」の「熊山」でしょうか。
拝金主義の強烈な悪役を演じられてました。




ゴジラ復活の話を聞き、
米ソの大使が日本国内での核兵器使用許可を求めに来ました。
非核三原則を唱え、両国の申し出を拒絶する三田村総理。
ソ連大使からはエゴイズムだと凶弾されますが、使用する機会を求めてくるのもまた、エゴイズムだと諭します。


実際に外国からはそう思われてるんでしょうか。このシーンがリアルなのかとかは一旦置いといて、ちょっと気になりました。




説得に成功した日本政府。
しかし、ゴジラが遂に日本東京湾に出現しました。

戦闘機隊が攻撃をしかけます。
「ゴジラの逆襲」以来の海上戦ですね。
ミサイルの集中攻撃を浴びせますが、勿論ゴジラには効きません。
熱線で逆に撃ち落とされていく戦闘機。
ここ、ゴジラのアップがよく映されますが
「サイボット」という、5メートルもある巨大ロボットのゴジラで撮影しています。
着ぐるみの顔と似てないのが残念です。84ゴジラとは違い、ちょっと可愛い顔になってるんですよね。




奮戦空しく、ゴジラは上陸。
 


30年ぶりの東京を練り歩くゴジラや、メーサー戦車との初対決が見れるわけですが、
ちょっと常識を疑うようなシーンがいくつか。




走ってる新幹線が、ゴジラに捕まります。
第1作のオマージュでしょうが、
過去に大災害を起こした怪獣がいる中、新幹線が普通に走っているものでしょうか?
台風でも止まるくらいですよ、普通は運休になりますよね。




三原山噴火作戦の前段階として、ゴジラの至近距離で行われる林田達の実験。
護衛の自衛隊員が一人もいないというのは変でしょう。
更に、実験してる林田達がいる前で攻撃を開始する戦車隊。
新聞記者の牧がいる前でいい度胸ですね。



誰もゴジラを阻めない中、
「スーパーX」が登場!
首都防衛用に建造されていた、空飛ぶ要塞です。
中性子の反応を抑制する「カドミウム弾」をゴジラに命中させ、昏倒させることに成功します。
サイボットがいい仕事をしています。唇の筋肉の動きまで再現してるのは驚き。




勝利は確実に思われましたが、
東京湾に停泊していたソ連貨物船内の核ミサイル発射装置が、ゴジラの影響で誤作動。新宿のゴジラに向けて、ミサイルが発射されました。
劇中でも突っ込まれていますが、なんでそんなものがここにあるんでしょうか…

アメリカのミサイルが迎撃に成功し、原爆の再来は防げました。
しかし、
発生した衝撃波によりゴジラが復活。


カドミウム弾は底をついたので、ビル群の中でゴジラVSスーパーXの銃撃戦が展開されます。
通常兵器で頑張るスーパーXですが、最後はビルの下敷きになり撃墜されてしまいます。

ここ、惜しいなあと思います。
せめてスーパーX乗組員の断末魔が描写されていれば、より恐怖の存在としてゴジラを描けたでしょうに。
ちょっとあっさりしてるなと思います。


追い詰められる牧と尚子でしたが、
突如大島に向けて進路を変えるゴジラ。
三原山の超音波発生装置が上手く作動したようです。


島まで誘導されたゴジラは、作戦通りに火山の中に落ちていき、エンドロールが流れて本作は終了します。



以上、「ゴジラ(1984)」でした。

特撮技術の進歩や十分な予算があったのでしょう、1億以上もかけて用意されたサイボットゴジラミニチュアと呼ぶのが正しいのかと思うほどの巨大なビル群が注目するべき点ですね。
ストーリー面では詰めの甘さが目立つものの、冷戦時代の情勢も取り入れたリアルなストーリーは見応えがあります。

あとは、武田鉄矢さんがちょっと映りすぎかな…笑