「メカゴジラの逆襲(1975)」 監督:本多猪四郎


生存していた恐竜「チタノザウルス」を発見、それを意のままにコントロールしようとして、学会から追放されてしまった真船博士博士と、復活した「メカゴジラ」の憎悪が逆襲する!



前作に続いてメカゴジラが登場
そして昭和ゴジラシリーズ最後を飾る作品になります。
なかなか仕事も忙しくなり、更新頻度も落ちてきた本ブログも、遂にここまで来ました。なんだか感無量です。





オープニングは、前作「ゴジラ対メカゴジラ」の、ゴジラとメカゴジラの戦闘シーンのダイジェストになってます。

コンビナートのゴジラ対偽ゴジラ、そして沖縄の決戦がまとめられていますが、キングシーサーは頑なに映りません。


ギャラでも発生するんでしょうか。
テーマ曲をフルで歌わないと出てきてくれないんで、きっと大御所なんでしょう。




すいません、違いますね

ゴジラとメカゴジラの因縁を演出しています。
タイトル「メカゴジラの逆襲」そのままに、まるでゴジラに対する憎悪が伝わってくるかのよう。





始まる本編。

海に沈んだメカゴジラの残骸を回収しようとする、潜水艇「あかつき」。
しかし海底にはスペースチタニウムの反応は無く、代わりに現れたのは深紅の怪獣

恐竜「チタノザウルス」です。
扇状に発達した尾で海流を起こし、航行不能になった潜水艇を怪力で破壊。


小さい頃は、このチタノザウルスが少しトラウマでした。
暗い深海で潜水艇を待ち構えて、甲高い鳴き声を発しながら襲いかかる姿が怖かったんです。

 


「ゴジラ対ヘドラ(1971)」以来ですね、怪獣の恐怖描写は。
まあ、「ヘドラ」はどちらかと言うと「お化け」的な怖さだったんで、巨大生物の怖さという話だと「サンダ対ガイラ(1966)」の「ガイラ」までさかのぼるかもしれません。


ボイスレコーダーから、沈没事故は恐竜に因るものだと確信する主人公の海洋生物学者、「一之瀬明(演:佐々木勝彦)」

15年前に恐竜を発見、それをコントロールしようとした「真船信三」博士から意見を聞こうとしますが、「父は5年前に死んだ」博士の娘「真船桂」に伝えられます。



しかし、それは嘘。


姿を消した博士は、チタノザウルスのコントロールを完成させ、世間への復讐を企てていたのです。


その野望に助力してきたのは、かつてメカゴジラを使って地球を侵略しようとしたブラックホール第3惑星人。
前作の「ゴジラ対メカゴジラ」よりも遥かに前から、彼等の地球侵略計画は動き出していたのでしょうか。
劇中の台詞から、その理由は「新たな故郷」として地球を選んだうです。
敵方にも少なからず正義があるというのは、「地球防衛軍」で、科学力で母星を滅ぼし流浪の民になった「ミステリアン」を思い出させます。




地球侵略隊長の名は、「ムガール」。

演じているのは前作の司令官と同じ「睦五郎」さんです。
青タン司令は前作で死んでいるので、一応別人です。
「帰ってきた青タン司令」ではありません。





博士のことを調べ、その研究の意義を理解した一之瀬。
その事を桂に話します。


桂、一之瀬に恋してます。
再会したときに見せる笑顔が凄く可愛いです。

演じるのは「藍とも子」さん。「ウルトラマンレオ」ではMACの一員も担当されてる方です。


一之瀬も満更ではなさそうです。父が研究した恐竜を見せてあげようと、チタノザウルス調査に桂を誘う姿には彼の心情が見てとれます。
デートに誘う、というよりは彼の優しさですね。



しかし…
残念ながら二人の恋には障害が。

なんと桂は過去に命を落としていて、その正体はブラックホール第3惑星人が改造したサイボーグだったのです。

第3惑星人の「機械のお前を愛する者など、誰もいない」という台詞が辛い。こんな言葉をかけられたらぶちギレてしまいそうですが、そうはならないところに彼女たち親子の、復讐心の根強さが感じられます。

第3惑星人にも無断で、チタノザウルスで攻撃を開始しました。

夜の街を進むチタノザウルスの合成、なかなかいい出来です。
陰影に違和感がありません。

久しぶりのミニチュア破壊描写にも満足です。
戦闘機隊も蹴散らすチタノザウルスですが、「ゴジラ」が現れ、して脳波コントロールする桂が防衛隊に撃たれたことで撤退します


再度、第3惑星人から改造を受ける桂。
手術シーンが映されますが、ここトップレスです。
ゴジラシリーズでは2021年現在、唯一となっています。



安心してください、偽物ですよ!(豊胸という意味ではありません。)



このシーンを見てて、思い出すことがあるんですよね。
…ヤラシイ話じゃないですよ。



「仮面ライダーX」で、敵に敗れた主人公「神敬介」が先輩ライダーである「仮面ライダーV3」から強化改造を受けるシーンです。
精密機械の胸の中に、「マーキュリー回路」を移植する場面ですね

改造人間の悲劇。
ミスをした部下は即刻処刑する冷酷な敵幹部。
インターポールが絡んでくるストーリー。


もしかしたら、「仮面ライダーシリーズ」の影響が強く出ているのかもしれません。



再改造を施された桂。
今度はチタノザウルスだけでなく「メカゴジラⅡ」と2体で行われる侵略。

メカゴジラⅡ。
デザインは1号機と同じですが、全体に墨入れされてて迫力があります。

前作では描かれなかった、
メカゴジラの都市破壊シーンは必見。
「スペースビーム」で建物を爆発四散させ、新兵器の「回転式フィンガーミサイル」は巨大な地割れさえ作れるほどの威力です。

 


チタノザウルスも、尻尾から発する突風で街を瓦礫に変えます。
「ラドン」や「モスラ」以来の風による破壊描写。メカゴジラの重火器とまた違った見せ方が良いですね。



予算不足というのは仕方のないことなんでしょうが、やっぱり映像が使い回されていた「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」や「ゴジラ対メガロ」とは見応えが違います。



破壊を続ける2体の前に、再度ゴジラが出現。
単純な肉弾戦ではチタノザウルスを圧倒しますが、メカゴジラの射撃も受けて大苦戦。回転式フィンガーミサイルで地面に埋められてしまいます。


ゴジラも遂に万事休すか…と、
そこに一之瀬達が開発した「超音波発生装置」を取り付けたヘリコプターが登場。コントロールが乱され、狂いだすチタノザウルス。


生じたスキに乗じて、ゴジラが復活。
メカゴジラの集中火線を突撃し、前回と同じように首をもぎ取ります。


しかし、強化されたメカゴジラはその程度では動きを止めません。

メカゴジラを破壊するためには、コントロールしている桂を止めなければならないのです。



捕らえられていた一之瀬、そしてインターポールの活躍により、第3惑星人基地は壊滅。
戦いに巻き込まれて真船博士は死亡、ムガールも円盤で撤退しようとしますが、ゴジラに撃ち落とされます。



人間の心が残っていた桂は、父のためとはいえ加担していた悪事を、涙を流して後悔します。

「君は人間だ!」と訴える一之瀬。

しかし、自らを拳銃で撃ち抜き、桂は若い命を犠牲にします。

今度こそ機能停止するメカゴジラ。
混乱するチタノザウルス共々、放射能火炎でゴジラに倒され、ここに博士とメカゴジラの逆襲は潰えます。





以上、「メカゴジラの逆襲」でした。
ゴジラが完全に添え物の立場で、人間ドラマが印象的なストーリーです。

なかなか見応えのある作品だと思いますが、
残念ながら観客動員数はゴジラシリーズ最低の成績を残しています。
怪獣映画といえば子供向け、という認識が完全に定着していた時代に、シリアス過ぎる本作の人気が出なかったのは仕方のない事だったのかもしれません。

昭和シリーズ最終作、とお伝えしましたが、
「本多猪四郎」監督がメガホンをとる最後の作品でもあります。



プロデューサーから厳しい評価を受けたこともあったようですが、
敗戦国のヒューマニズムが強く滲み出ている「ゴジラ」
人間と自然の対立が描かれている「空の大怪獣ラドン」
人間の欲がテーマである「モスラ」等、その独創性やメッセージは、単なる怪獣映画に収まりません。

その数々の名作は今でも人々に愛され、ゴジラシリーズは作られています。


永遠に続く伝説を、本当にありがとうございました。