「日本沈没(1973)」 監督:森谷司郎


小笠原の無人島が1つ、海に沈んだ。
調査に出た潜水艇「わだつみ」の窓から日本海溝の異変を目の当たりにした物理学者「田所博士」には、それと同時に日本列島の行く末も見えていた。



ゴジラシリーズが続いた東宝特撮映画と本ブログでしたが、今回は怪獣も宇宙人も超兵器も登場しない、
ガチのSF映画になります。


ジャンルとしては「妖星ゴラス」のような「終末」が描かれた作品。
とは言っても、今作で終末が訪れるのは日本のみ。



実際に、日本列島が沈没することなどあり得るのでしょうか?



図書館で見つけた、
「深海底で何が起こっているか」(著:小林和男)によると、


「かつては海面上に顔を出していたと思われる地形が没しているのが確認されており(日本から200キロ沖合の九州パラオ海嶺等)、長い地球の歴史からすれば日常茶飯事に違いない」
と著されています。


とは言っても、実際には急激に変化が起こるわけではなく、徐々に沈んでいくことになるようですが。




本作は、科学者や政治家たちが日本国民の未来のために立ち向かう、人間ドラマも見所
この、「まず有り得ない事態にどう対処していくのか」が描かれるのは「シン・ゴジラ」のテーマである「現実VS虚構」に通じるものがあります。



無音の日本海溝。
「シーンと冷えきった冷たい砂漠」と劇中でも表現されるような場所。
現在でも深海底のことはあまり解明されていないらしく、こういう異世界っぽさはいい表現ですね。
まるで宇宙のよう。


メインキャラクターである「田所博士」(演:小林桂樹)、「わだつみ」の操縦士「小野寺」(演:藤岡弘、)は、この深度8000メートルの異世界で数々の異変を目の当たりにします。


海底には似つかわしくない激流
巨大な生物が這ったような、大きなリップル・マーク(波状痕)。
まるで雲海のような規模の乱泥流。



専門用語がバンバン出てきますが、知らなくても問題無いと思います。
役者さんたちの演技、何よりも乱泥流の特撮が大迫力のため、
「ヤバイことが起きてるんだな」ってのは伝わります。

ここも「シン・ゴジラ」っぽいですね。



「わだつみ」を使った、更なる調査を希望する田所
「いつもと違う」ことはわかりましたが、それが何を意味するのか、小野寺を含めた周りの人間達には伝わりません。
チャーターの予約で埋まっていることを伝え、小野寺は会社の勧めで見合いをすることに。



二人の時間を楽しむ小野寺と、財産一家の令嬢、「阿部玲子」(演:いしだあゆみ)

そんな彼等の前で、天城山が大噴火

劇中では台詞で済まされますが、
倒壊2000棟以上、200人以上の死者・行方不明者と大きな被害が出てしまいます。


開かれる有識者会議。
山本総理(演:丹波哲郎)の前で、田所が海底の異変について提言します。しかし、他の有識者からは「スケールの大きい話」と相手にされず、会議を後に。


そんな田所を呼び出したのは、
財政界の黒幕「渡老人」(演:島田正吾)

「毎年軒下に巣をかけていたつばめが、今年は来ない」と異変を感じ、田所の考えを支持。

「D計画」が始まります。



「D計画」
日本政府が裏で進める、
田所博士の予想した日本列島の大変動について調査、研究する計画。

「D-1」「D-2」に分かれます。



「D-1」が実際に起きている自然現象の調査。


「D-2」が異変への対処を研究するセクション。



そのD-1計画が進められ、
マントルに異変が起きていることがわかります。


劇中でも説明がありますが、日本海溝はマントルが沈みこむ場所。
日本海側のマントルが日本海溝に流れ込んでいき、それを太平洋側のマントルがつっかえ棒になり、堆積した土などが盛り上がって出来たのが日本です。
実際、日本列島は現在も年間1センチほど南東に動いているそうです(「日本沈没」の原作より)。


もし、太平洋側のマントルに異変が起き、その日本を動かすほどのエネルギーを支えるものが無くなったなら。



日本が沈没することに。



そう田所博士がD-1計画のメンバーに説明した直後、
関東地方を大地震が襲います。


そのエネルギーは、
マグニチュード8.5。



特技監督は「中野照慶」氏。「円谷英二」監督のもとで経験を積まれた方ですが、本作の天変地異描写は、まさに東宝特撮シリーズ中の圧巻でしょう。

CGを超えています。



高架や歩道橋が真っ二つに破壊され、火だるまになる自動車。

民家が軒並み倒壊。逃げ場もなく、家の中に引き返してしまう人もいるほど。
微かに聞こえる「お母さん、怖いよお母さん!」の悲鳴が辛いです。

コンビナートで爆発が起き、大規模の火災も発生。炎や熱風により、多くの死者が。

高層ビルが瓦礫に変わり、落ちてきた硝子の破片が人々を血まみれにします。


関東大震災の経験から、「火だけは出さなければいい」と自宅で耐える家族。
しかし、震源は東京湾沖合。家の中まで津波が襲いかかってきます。

行き場を無くし、文字通り人波が皇居に雪崩れ込みます。「阿鼻叫喚」という言葉がここまで似合うシーンもなかなかありません。


水道が断水し、消防隊も職務を遂行できない状態。海上自衛隊の消化弾で対処を試みますが、それすらも底を尽き、撤退命令が出るほど。


元々避難が不可能な地域だったらしく、
江東区、墨田区が全滅。


後に「第二次関東大震災」と呼ばれることになったこの地震で、
360万人もの死者・行方不明者が出てしまいました。



「偵察機や戦闘機は、何のためにある。国民と、その私有財産を守るとは、なんなのか…」
その責任感から、自問自答する山本総理。

しかし、これらは全て日本沈没の前触れにすぎません。
これ以上の災害と犠牲者が予想されます。



必要性が高まってきたD-2計画。



この未曾有の事態に、山本総理は、田所博士は、小野寺は、どう立ち向かうのか。

長くなるので、続きとなる後半記事は後程掲載します。