「怪獣総進撃(1968)」 監督:本多猪四郎
「ゴジラ」、「アンギラス」、「ラドン」、「モスラ」、「ゴロザウルス」…世界中を再び、大怪獣が襲撃!
地球は、怪獣達を操る「キラアク星人」を退けられるのか。
遂に東京オリンピックが始まりますね。
普段はスポーツに興味の無い私も、こういうときはちゃんと日本を応援しますよ。
頑張れ、日本!
ということで?
本日は国際色豊かな作品のレビューになります。
「ゴジラ」に始まり、圧巻の特撮技術、怪獣バトルで観客を興奮の渦に巻き込んできた東宝怪獣映画。
そこから発生した怪獣ブームは邦画にとどまらず、海外やテレビ番組でも数多の怪獣達が生まれてきました。
ですが、世は諸行無常。
そのブームも下火になっていき、今度は妖怪。ドル箱の「ゴジラシリーズ」も観客動員数は徐々に落ち込んでいったようです。
そこで作られたのが、この「怪獣総進撃」。
怪獣映画20本目の最終作として放映されました。
監督は二作ぶりの「本多猪四郎」御大、脚本は「地球防衛軍」、「マタンゴ」を書いた「馬渕薫」さんで「怪獣大戦争」以来のSFものとなりました。
登場怪獣も「ゴジラ」、「アンギラス」、「ラドン」、「モスラ」、「ゴロザウルス」、「ミニラ」、「マンダ」、「クモンガ」、「バラゴン」、「バラン」、そして「キングギドラ」と11体が勢揃いという力の入れよう。
キラアク星人に操られ、世界中の都市を襲います。
今まで「空の大怪獣ラドン」や「宇宙大戦争」で台詞や絵で済まされたいた外国都市の破壊描写が、ミニチュアで表現されているのは素晴らしいです。
ラドンがモスクワを襲撃、ゴロザウルスが凱旋門を崩し、北京ではモスラが列車に正面衝突をかまします。
検討段階では、「エビラ」と「マグマ」も登場予定だったとか。
めちゃくちゃ残念。
水の都ベネチアを襲うエビラとか、今度こそ南極基地を破壊するマグマなんて見てみたかった…。
登場怪獣の中で目を引くのは、やはり
13年ぶりに復活したアンギラスですね。
「他種族を激しく憎む」なんていう恐ろしい性質を持った初代から変わり、キリッとした顔で先陣を切っていく「総進撃アンギラス」は非常にたくましいです。
ゴジラと共に伊豆のキラアク星人本拠地護衛も任されていて、舌をチロチロと動かしながら戦車を追いかける姿には、思わず釘付けになりますね。
進撃する戦車や装甲車のミニチュア車両も、久しぶりの登場です。00:45:37辺りの揺れながら進む車体は本当に良い出来。
登場人物の台詞から、本当は天城にバラゴンもいたとか。
「ウルトラマン」にスーツを貸し出していて、撮影に間に合わなかったために少ない出番となりました。
本当に見たかった…。
バラゴンと共に久しぶりに復活したマンダ。
青龍のような顔つきから変わり、まるで大蛇のような姿になっています。
ゴジラ、ラドン、モスラの東宝三大怪獣と共に東京を襲撃しますが、マンダは首都高に絡み付いて破壊。
ここの特撮、どうやって撮ってるんでしょうか。首都高が邪魔で、ワイヤーで吊ることも出来なさそうですが…
バランも10年ぶりの復活です。
が…何故か飛行用の模型のみの出番。
しかも、ちゃんといるはずなのに劇中では名前も呼ばれません。
富士山麓の決戦では登場怪獣達の名前がアナウンサーに読まれていくのですが、「アンギラスに続いてマンダ、バラゴン、ゴロザウルス、クモンガも参りました。続々とキラアクの基地目掛けて進軍して参ります。」
バランだけカット。
もういいバラン、東北に帰ろう。
東宝怪獣ではゴジラ、アンギラス、ラドン、「モゲラ」に次ぐ古株なんで、是非着ぐるみで復活してほしかった…。
以上の怪獣連合軍を操っていたのは、
キラアク星人。
怪獣達だけではなく、怪獣ランドの職員までコントロールします。
高度な科学力を持ち、一定の高熱の下では永久に生きていける人種。
何気に凄い設定。怪獣よりも彼女達の生命力を研究した方がいいんじゃないでしょうか。
低温では石ころのようになってしまい、それが弱点です。
容姿は、全員女性で銀の装束をまとっていてネット上でよく「タケモトピアノ」のダンサーといじられますが、まあ確かに少し似ているとは思います。
石ころになるところを見ていると、
「みんなま~るくタッケモトッピアノ~♪」と聞こえてきそうです。
そして、彼女達が使役するのがなんと「キングギドラ」。
富士山麓に揃う地球怪獣連合軍の前に姿を現します。
何度見たんでしょうか。本作のラストバトル。
これだけ雁首を揃えながら、メインに戦うのはゴジラ、アンギラス、ゴロザウルスだけです。彼等は他のメンバーよりも血の気が濃いんでしょうか。
「お前がキングギドラか!」とでも言いたげに切り込み隊長になるアンギラス、しかし軽くいなされます。
続いてゴロザウルス。しかし引力光線に怯むばかり。
「あ~もうだらしねえな!!」と突っ込むゴジラ。
ラドンはやけくそぎみに強風攻撃しますが、引力光線1発を食らってからは空から様子をうかがうのみ。
「怪獣大戦争」の勇ましさは何処にいった。
モスラとクモンガは糸を吐いて後方支援、戦うゴジラ達を応援するミニラ、見てるだけのマンダとバラゴン、多分東北に帰ったバラン。
やっぱり多勢に無勢ですよ。皆で襲いかかって良いほどキングギドラに余裕はありません。
どうせなら侵略者繋がりでモゲラを出しても良かったのに。
円盤が燃えるだけの「ファイヤードラゴン」なんてのは要らないです。
本作で主役を務めたのは「久保明」さん。
今までも「妖星ゴラス」、「マタンゴ」、「怪獣大戦争」等で存在感のある演技をされていました。
今回も調査用宇宙ロケット「ムーンライトSY-3」で大空に月にと大活躍です。
が、ガチガチのSFになった本作ですけどあんまり人間側のドラマは印象に残らないんですよね…
前二作が賑やかな人間たちの活躍が楽しかったせいか、今回は登場人物達が必要なことしか喋ってないような気がします。
まあ、「ゴジラVSコング」も人間たちの出番が少くても面白かったので、それはそれで正解なんでしょうが。
以上、「怪獣総進撃」でした。
東宝特撮シリーズに登場した怪獣たち11体が揃う、お祭り映画です。
特撮も大フンパツした出来映えで、シリーズ最終作を謳っただけあります。
ゴジラシリーズの中でも大人気なので、未視聴の方は是非。