「キングコングの逆襲(1967)」 監督:本多猪四郎



北極で放射性物質「エレメントX」掘削に暗躍する科学者、「ドクター・フー」。しかし、エレメントXから発せられる強力な磁気により作業が進まないため、南海の「モンド島」に棲む「キングコング」に目をつける。




皆さんこんばんは。
本日のレビューは5年ぶりに「東宝版キングコング」が復活した「キングコングの逆襲」になります。


「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」の記事でも触れたように、本当はそちらの作品で主役をはるハズでしたが、アメリカ側の要望を受けて本作が作られました。

そのため、ドクター・フーや、キングコングを模した「メカニコング」は、同じ日米合作のアニメ版「キングコング(1967)」が元ネタになっていたり、モンド島での「ゴロザウルス」「大ウミヘビ」の戦いは元祖「キングコング(1933)」のオマージュたっぷりという内容です。




この新怪獣「メカニコング」

キングコングを元にドクター・フーが開発しただけあって、見た目は正に機械のゴリラ。コングとの格闘戦で見せるスムーズな動きや、北極のエレメントX掘削作業時に見せるロボットらしい直線的な動きが素晴らしいです。


スーツアクターは「関田裕」さん。
本作ではメカニコングとは真逆のキャラクター、原始恐竜ゴロザウルスも担当されてます。
演じ分けが凄い。



ゴロザウルス、凄い質感のスーツです。

鱗に覆われた青磁色の体は爬虫類らしさが見事に表現されていて、恐竜型怪獣の完成形ではないでしょうか。
躍動的な長い尻尾の動きも良いですね。


以上の怪獣たちと戦う、
久しぶりの和製キングコング

猿顔だった「キングコング対ゴジラ」の先代と比べて、凛々しい顔つきになっています。
シーンに合わせてスーツも代えていて、ゴリラらしくナックルウォークをする場面では腕の長い着ぐるみを使う等、キングコングというキャラクターの再現にかなり力を入れています。



が、しかし…
キングコングらしさ、という話になると本作のコングは大人しすぎます。
ヒロインのスーザンに一目惚れするところなんかは御約束なんですが、彼女が「私には危害を加えない」と言うように、本当に何もしないんですよね。

「キング・コング(1933)」の記事で、コングのキャラクターは「純粋さと凶暴さを併せ持つ」、と定義してみました。
1種の獣性ですね。
その猛獣に捕まるヒロインという図式が、作品に緊張感を持たせ、「美女と野獣」のような彼等の関係を強調する演出になるわけです。

なので、コングが大人しくなってしまうと、魅力が激減してしまいます。
スーザンが降ろせと言えば潜水艦に返してあげたり、彼女がドクター・フーをやっつけろと頼めばその通りに攻撃したりと、まるでペットのような扱いです。
これは「ウルトラマン」や上でも触れたアニメ版「キングコング」(すいません、未視聴です)の影響が強いのかもしれませんが…。




怪獣の戦いは、東京でのキングコングVSメカニコングよりもモンド島のキングコングVSゴロザウルスの方が強い印象を受けます。



ゴロザウルスのカンガルーキックを立て続けにくらい、さらに腕を噛まれるキングコング。
しかし、そのまま怪力に任せて引き倒します。

直ぐに立ち上がるゴロザウルス。
コング、要領を得たのか、今度は自らゴロザウルスの口の中に腕を突っ込んでマウント状態に持ち込み、パンチの連打で撃破。

我々人間も同じですが、口のなかに物を突っ込まれるというのは強い拒絶を覚えます。
ヒグマに襲われ、もう後がない場合にも同じ方法で助かった人がいるとか。
絶対に試したくないですけど。

面白い動きは悪くないんですけど、激闘具合は「キング・コング(1933)」のキングコングVSティラノサウルスのほうが上かな。




登場人物のうち、二人の悪役に着目したいと思います。

悪の科学者ドクター・フー。


演じるのは「天本英世」さん。
「仮面ライダー」の「死神博士」役が有名な方ですが、東宝特撮映画にも出演されています。
本作や「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」では、善人と悪人の違いはあれど、人間くさい人物を演じています。かと思えば「マタンゴ」のキノコ怪人や「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」の幽霊のような存在も担当されていて、幅広い演技には驚かされます。


ドクター・フー、なかなかインパクトのあるキャラクターです。

研究のパトロンでもある「マダム・ピラニア」から計画の進捗について小言を言われようが、怪しい笑みを浮かべて余裕を崩さない怪人物。

彼に撃たれたモンド島の住民いわく、「骸骨のように痩せて、ドブネズミのような目をした悪魔」。

なかなか酷い言われよう。
本作では「イカデビル」ではなく「怪人ドクロネズミ」だったようです。



もう1人の悪役が、
「浜美枝」さん演じるマダム・ピラニア

某国の工作員で、核兵器をより効率良く作ることができるエレメントXを手に入れるために、彼に協力しています。

「某国」、果たしてどこの国なんでしょうか。


劇中では
「あまり文明国でもない小さな国」、マダム自身も「日本人でも中国人でもない」と言われていますが、国名は最後までぼかしたままです。

「東洋人の工作員」と聞くと、やっぱり「北朝鮮」が思い浮かんでしまいますが、拉致事件が表に出るのはWikipediaによるとまだ先のようです。

当時のスパイ事件なら、同じくWikipediaに記述がある「新潟日赤センター爆破未遂事件」があったらしいですが、それなら「韓国」ということになるんでしょうか?(断言はしません)

少し調べただけではわかりませんでした。



このマダム・ピラニアドクター・フーの関係がちょっと気になるんですよね。

劇中でネルソンに「ビジネスライクな関係」と彼女は説明しますが、少し引っかかるシーンもあるんですよ。

キングコングを拉致した後のドクター・フーを訪れる女史。
部屋の戸棚からワインを出し、今後の計画について話し合います。
なんか、そのままベッドインしそうな流れです。


そんなシーンは描かれませんでしたが、次にマダムが画面に登場したときには、催眠術で操られたキングコングを、フーと並んでソファーで見守っています。

冒頭でメカニコングが掘削していたときもふたりで成り行きを見守っていましたが、その時は「こんなおもちゃなんかで上手くいくのか」という態度だったので、前に比べて関係が近くなったように見えるんですよね。


本当に一夜を共にしたのかもしれません。


最終的には、良心の呵責によりドクター・フーを裏切り射殺されてしまいますが。



以上、「キングコングの逆襲」でした。
正義の怪獣過ぎるキングコングには違和感を感じますが、怪獣たちの造形「サンダ対ガイラ」同様に大きめに作られたミニチュア、砂埃を立てながら走るホバークラフトに見られる特撮は流石です。




これから、「ゴジラVSコング」の2回目の視聴に行ってきます。
既に観たはずなのに、なんだかワクワクしてきました笑