「地球防衛軍(1957)」 監督:本多猪四郎


突如出現した異星人、「ミステリアン」。横暴な侵略者に対抗するため、今ここに国籍・人種を越えた「地球防衛軍」が誕生する!


東宝特撮シリーズ初期に見られた、宇宙SF物の1つです。怪獣はあんまり登場せず、物語の主役は人類という作品群の1つです。
またゴジラシリーズじゃない……といい加減辟易されそうですが、こちらは同じ東宝特撮なので、「キング・コング」等よりもむしろ近い存在です。

正直、タイトルで損している作品だと思われます。
「ウルトラマンシリーズ」の組織か、10年以上前に2000円で発売されていたプレステ2のソフトみたいです。
名前だけ見るとかなりダサいですよね…。(ウルトラマンやゲームソフトがダサいという意味ではありません。名前だけ見れば、という意味です。)


ですが、そんなことはありません。
見ればわかりますが、熱い作品です。


山村で山崩れが起き、集落が丸ごと壊滅します。人為的なものではないか、という事で調査に出る物理学者の渥美。

突如、山の中から巨大な怪物が登場し襲いかかってきます。

その正体は、ミステリアンが操る史上初のロボット怪獣「モゲラ」
なかなか面白いデザインをしています。
顔はもぐらっぽくて両腕はドリル、ボディは蛇腹。目からは殺人光線を撃てます。

モゲラを何とか活動停止させることに成功しますが、今度は巨大な建造物「ミステリアン・ドーム」が出現します。

ここで、異星人ミステリアンがスクリーンに初登場しますが、
なかなかインパクトのある姿をしています。「科学忍者隊ガッチャマン」っぽいというか、「秘密戦隊ゴレンジャー」のような。

彼等の要求は、
「ドーム周辺3㎞の土地を引き渡すこと。そして地球の女性と結婚することを許可せよ。」

そんなことを言っておきながら、なんと既に3人の女性を誘拐しています。力を見せつけるという理由でモゲラで先制攻撃もしてきてます。

こんなやつらの言うことを聞くわけにはいきません。


人類の未来を守るため、そしてこれは


男が女を守るための戦いでもあるんですね。


我々人類がアウストラロ・ピテクスの頃から続けてきた、生物としての宿命。


絶対に負けるわけにはいきません!!


圧倒的な科学力に立ち向かうために、東とか西などと言ってる場合ではありません。地球が一体となって、地球防衛軍が結成。互いの存亡を賭けた戦いが始まります。


一進一退の戦闘は全てミニチュアで表現されています。
モゲラ2号機も出撃しますが、すぐにやられてしまいます。
「ミニチュアで勝負しよう」というスタッフの意志が感じられます。

正直CGに見慣れた現代人からすると、どうしても物足りなく感じてしまいますが、「伊福部昭」氏の音楽が合わさることで今見ても物凄く熱い戦いになるんですよね。
 




東宝特撮を見てるんだなあ、という気持ちにさせてくれます。

と言っても、
モゲラに送電線が破壊されて照明が明滅する民家、ミステリアン・ドームのビームを浴びてどろどろに溶けていく戦車と本作でも素晴らしい特撮は流石です


平田昭彦さん演じる天体物理学者、白石亮一からも目が離せません。

主人公渥美の同僚なんですが、物語開始数分で姿を消したと思ったら、なんとミステリアンに鞍替えしています。
戦争を避けるためにあえてミステリアン側についていたのが理由でしたが、彼等の本性を知り、囚われた女性達を解放します。

そして、ミステリアン側として動いてしまったことへの罪滅ぼしか、ドームに単身突撃。計器類やミステリアン達に銃を撃ちまくります。
このとき白石はミステリアンの服装をしていますが、


めちゃくちゃ格好いいです


まさか、こんな
「科学忍者戦隊ガッチャマンゴレンジャー」が格好よく見えるなんて…。

でもまあ、この2大ヒーローに似ているってことは元々「善玉にも転用できるデザイン」ってことなんですよね。


幹部クラスが逃げ始め、白石は彼等にも銃を向けますが


撃ちません。


一宿一飯の恩

じゃないですね。
彼等の境遇に同情しています。


ミステリアンは、人類が石器時代の頃に既に水爆を保有していたほどの優れた文明人でした。
しかし、核戦争を起こしてしまい母星を放棄、放浪の民になっていたんです。
そんな背景がありながら、初っぱなから武力行使しているのが皮肉というか何というか…。


平田昭彦さん
「ゴジラ」ではあの有名な芹沢博士を演じ、「空の大怪獣ラドン」ではラドンの生態から作戦を提案する博士を、本作や「海底軍艦」では敵役も担当していました。
悲劇の天才科学者から参謀、残忍な悪役までこなせる文字通り「役者」です。

「ゴジラ」で演じた芹沢博士ですが、オキシジェン・デスロイヤーを使ったときにゴジラと一緒に死を選びます。
自分が生きている限り、いつまた使わざるを得ない立場に追い込まれるかわからないから…。
本当に有名な話ですし、ゴジラの記事が長くなりすぎるので省略した部分ですが、「ゴジラ」が日本映画史の金字塔になれたのは芹沢博士の存在が間違いなく大きいです。


そんな氏が演じる白石が、「ミステリアンの姿は地球にとっての良い教訓だ!」と最期に主人公に告げるのは非常に重みがあります。

東宝特撮映画では、同じ役者さんが起用され続けているのをよく見ます。
怪獣等の特撮にばかり注目しがちですが、俳優さんたちの演技も見逃せない見所だと思います。


以上、「地球防衛軍」のレビューでした。
なかなか今の邦画では見られないスケールの大きいSF作品で、映画が本当に元気な時代だったということが伝わってきます。