兄に子供が生まれたという知らせを聞いたのは、すでに卵が孵ってから半年以上経った頃だ。
私になんの断りもなく産卵したらしい。断られてもそれはそれで困るが。
この事からも分かる様にねこたろ家は完全なる無法地帯。
かなりドライでパンチがあるツワモノが揃っている。
私は親元を離れ生活しているが、母は度々何の前触れもなしに勝手に引越しをする。
ある日、実家に帰ったら家がなかった。
取り壊されて家そのものがないのである。
悲しみを通り越しての絶望を簡単に味わえる、恵まれた環境。
おいおいそりゃないぜ母ちゃん、と電話をかけるが、3日位出ない事もざら。
急いでいる時程出ない。
出ないくせに、私が母からの電話を3コール以内に取らないと非常に機嫌が悪くなり、
「こちらはすこぶる忙しいが一体何の用だ!」
と親らしからぬ殺生なブチ切れ方をする。
忙しいならかけて来なければ良いではないか。ぶつぶつ・・・。
そういえば、電話で思い出した事が一つ。
学生時代、友人宅でコナンを見ながら、空腹にヨーグルトを詰め込んだ所、胃炎でぶっ倒れるというはた迷惑な珍事件を起こし
救急病院に担ぎ込まれた事があった。
友人の母が冷静に対処してくれた為、大事には至らず、ひと段落着いた所で家族を呼ばねば、と私の母に電話をかけた。
母は「うちのバカねこたろが、大変ご迷惑をお掛けし・・・」と言う様なマニュアル通りのお詫びを友人母に告げたに違いないその後、
「ねこたろの声が聞きたい」
等とハートウォーミングな台詞を吐いたらしく、友人母が私に電話を差し出した。
受話器からは、お詫びモードから、1オクターブは低く押し殺した母の声が聞こえる。
「ちっ。あんたタイミング悪いな。キムタクのドラマ終わったら保険証持って行くし。ってゆーかあんた今日はそこに泊まれば?」
ガチャ・・・
私が声を発する間もなく切断。
病院って泊まりたくて泊まれる所なんですか?
結局私は医者に「まだ痛い様な気がする」と言う類の事を告げ、一泊させてもらう事に。
私はこれをライオン式育児法だと、母の愛だと、信じている。
むむむ。
話がそれたが兄の子供の話だったか。
こいつも人間界に出てきたばかりのクセに、かなりパンチの効いた生き物に育ちつつある。
2歳にして既に、部長におべっかを使うダメ社員の様な、完全なる「良い人止まり」の顔をしており、
彼の未来が安易に想像出来て、私は見ていて悲しくなる。
7歳で食べ切れなかった給食のパンを机に隠した罪をなすり付けられ、
12歳で断りきれず保険係になるが、日射病で一番に倒れるのがいつも自分なので、自力で保健室に行かなければならず、意味不明にもあだ名が「自作自演の保険屋」となる。すごく悪そうだ。BGMは「ホタテのロックンロール」が良いだろう。
私の中で、35歳くらいまでの彼の人生プランがあるのだが、書いていて悲しくなったので、もうこの辺で勘弁して頂きたい。
泣いてしまいそうだ。
彼の現在における成長記録は是非とも次の機会に。
