徳興君を乗せた輿は徳成府院君の屋敷から離れ

都からどんどんと遠ざかって行く

次第に途は悪くなり輿が大きく揺れている

そんな中徳興君は、自分が何処に運ばれているのか

まったく見当もつかない

 

「王族である私が何処に運ばれていくのか

 徳成府院君はどうしようとしているのか」

 

そんなつぶやきが出たと同時に大きく揺れていた輿が止まった

御者をしていたチュヌンジャが輿から降りるとファスインと共に

中にいる徳興君に到着したことを告げた

 

「徳興君、輿から降りられよ

 主が用意した匿うための隠れ家だ」

 

恐る恐る輿から降りた徳興君が目の当たりにしたのは

今にも朽ち果てそうな小さな寺だった

 

「私は、現王の叔父である前に王族だ

 この様な処遇を受ける覚えはない」

「我らは主の言付け通りにしたまで王族であろうが

 何であろうが主である兄者の言葉がすべて」

「私が徳成府院君に何をしたというのだ」

「兄者は”医仙”と言えば理解すると言っていた

 此処には飯炊きもいれば

 身の回りの世話をするものも居る充分だろうと」

「医仙とな…」

「ああ兄者から決して崔瑩にだけは見つかぬように

 見つかれば助ける事は出来ぬと言付かった」

「王族である私を切り捨てるのか徳成府院君」

 

二人に促され渋々寺の中に入って行く徳興君だが

今は己の保身を優先し四方に手を伸ばしているであろう

崔瑩から逃れ生きながらえることこそが重要と

足を速め寺の中へと消えていった

 

徳興君が姿を消した事を受けて迂達赤では

足取りを掴もうとチュンソクを中心に各組の組頭が

話し合いをしていた

その様子を腕組みをしながら黙って聞いてる崔瑩

 

「プジャン探索の範囲を都の外れまで広げますか?」

「その意見も一理あるが秘密裏に動いている事を忘れるな

 目立ってしまっては全てが水の泡だ」

「チュンソクお前ならあいつを何処に匿う?」

 

黙って聞いていた崔瑩が重い口を開くと

一斉に視線が崔瑩に向いた

 

「某ですか?某なら自分の屋敷からは遠ざけます

 変に勘繰られ害が及ぶのは避けたいので」

「徳成府院君も馬鹿ではあるまい

 己に火の粉が飛んでくる前に奴を見張りがしやすく

 我らの目には届かない場所へ匿ったのであろう

 チュヌンジャとファスインを見張れ

 必ず何か動きがある筈だ」

「イエ テジャン」

 

迂達赤は一斉に散らばり

チュンソクに後を任せて崔瑩は兵舎を後にした

 

典医寺で大人しく崔瑩を待つウンス

高麗に来てからと言ううもの待つ事は嫌いではなくなった

あんなに毎日が忙しく時間が足りないと思っていた

ソウルでの生活を思い出すと信じられない気分だった

 

 

 

 

 

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