$「天使の弁護士 成瀬領」VS「天才鍵師 榎本径」


その日、開は、なにやら神妙な面持ちで大切そうに白い封筒を携えていた。

ドアチャイムの音が鳴り響き、榎本開と熊田未来はそっと運命の扉を開けた。

午後5時30分を回っていただろうか、都合の良い事にカフェガランサスに他の客はいないようだった。

今夜、店を訪れる事は、未来の母しおりに前もって伝えてあったものの、

それは、二人にとって 戸惑いと緊張の訪問でもあった。


「いらっしゃいませ!」「あら、未来!待ってたのよ」

カウンターの奥から未来の母 しおりの声が聞こえた。

「どうぞ」と言いかけて彼女は息を呑んだ。

「榎本開と言います。未来さんにはいつもお世話になっています。」

そこには、見覚えのある、いや忘れようにも忘れられない面影の青年が立っていた。

しおりの瞳は開を捉えると 一瞬、表情を失い

同時に開も見つめられて動けなくなってしまった。

・・・・

沈黙を破るように

「珈琲を2つお願いしてもいいですか?」

気まずい雰囲気を感じ取った未来は、珈琲を催促した。


「あ、ごめんなさい」「良く似ている人を思い出しちゃって」

しおりは、正直に失礼を詫びた。

「僕に似ている人・・ですか?」

「お母さん、その人って・・初恋の人?」


二人が矢継ぎ早に質問を投げかけると

「もう、遠い昔のことよ」と微笑みながらしおりは答えた。

「珈琲を淹れて来ますね」

二人の質問はそのままに、しおりはカウンターへ戻った。


「お母さん、訳ありかなぁ~」と未来が呟くと

「もしかして、あまり詮索しないほうがいいんじゃないかな?」と開が心配そうに応えた。

もっとも、今日の訪問の目的は、開の紹介とルシファーからの伝言だった。

言葉で伝えるのは気恥ずかしいので、彼からの手紙という形で渡すつもりでいたのだ。



しおりが珈琲の香りとともにカウンターから出てくる頃には

さっきの事は触れないでおこうという暗黙の了解が出来ていた。


テーブルに珈琲が到着すると開は改まった様子で姿勢を正した。

「あの、本当にいつも未来さんにお世話になっています。」

「僕も同じ学部の4年ですが、彼女とは共通の夢を持って・・」

「真剣にお付き合いをさせていただいています。」

「そのことを、お許しいただけないでしょうか?」

榎本開のあまりに真剣な様子に、しおりは思わず笑顔になった。

「わかりました(笑)我侭な娘ですけど、よろしくお願いします。」

「もう、お母さん 我侭は余計だから・・・」

未来は少し膨れ面を装いながらも嬉しさを隠せない様だった。


「ところで今日は未来さんのお母さんに大事なものを持ってきたのです」

榎本開はそう切り出した。

未来は、空いている椅子の背を引いて母にもテーブルに着くように促した。

しおりは席に着くと居住まいを正し心の準備は出来たようである。

「では、こちらになります」

開は、赤いテーブルクロスの上に白い封筒を差し出した。

「ある人からの言葉が託されています」

「あなたに渡す前に燃やした手紙なのだそうです」

しおりは、なぜか動揺を隠せなかった、そして確かめるように尋ねた。

「あの、これは誰から・・・」

未来がその質問に答えた。

「その人は、開を見たらお母さんには わかるはずだと言ったわ」

「・・・・」

「開けてみるわ」

彼女は恐る恐る封を開けてみた。

手紙を持つその手は小刻みに震え、しおりの目からは光るものが零れた。

「こんなことって・・」


そこに書かれていた文字とは・・



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この次くらいで終わりそうです!

なんて書かれてあったのかなぁ~時空を超えて届いたLove Letter?