$「天使の弁護士 成瀬領」VS「天才鍵師 榎本径」



輪廻とは、人が生と死を繰り返し巡り巡る運命の海を永遠に漂うことを言う

天使の弁護士と呼ばれたひとりの不遇な青年がこの世を去って数年後

その記憶を潜在意識として合わせ持つ生命が誕生していたとしたら・・・

このお話はフィクションです


↑効果音ですBGMとしてどうぞ!



〈基本データ〉 
榎本開(えのもと かい)21歳 身長178cm 体重58kg W大学法学部4年生 趣味読書


榎本開は、生まれながらにして弁護士になる運命を持ち合わせていたのかもしれない

彼は幼少の頃から、弁護士として一人で戦う母、純子の姿を見て母を助けたいと思っていた

当時、彼の書いた絵「翼の生えた弁護士」には

母を助けるためいつでも飛んでいけるようにという微笑ましいエピソードがあった

父、榎本径は一代でセキュリティKEYをはじめとする榎本グループを築き上げた天才肌の男である

その過去や資金源には限りなくブラックで不透明な点があるものの、

現在、彼は威厳のある代表取締役であり、家庭では良き夫、父として頼れる存在となっている

榎本開にとって、父も母も尊敬する人物であり、理想的な家族と言えるのだった

そんな恵まれた環境で、彼は何不自由なく、自由奔放に成長していた

ただ一つ、不自由があるとすれば・・・

潔癖症のためか?女性が苦手に見受けられた

父親似の甘いマスクと両親のDNAを受け継ぐ天才的頭脳

さらには、178cmという長身

これだけのものを持ち合わせていながら、実はモテない訳はない

実際、W大法学部4年生の彼は大学の敷地内でも圧倒的に目立っていた

近隣の女子大生の間でもW大の榎本開の名が知れ渡っているとは

本人は全く気がついているのか?いないのか?

自分の魅力に気がついていないのだけは確かだった


図書サークルに所属する彼は、本に興味はあるものの

色気のある話には全く関心がないように見えた


その日、彼はいつものように講義を終え図書室へ向かった

何を隠そう、図書室の古びた匂いが落ち着くのである

雨の日は尚更、大好きな場所でもあった

法を学ぶ者にとって、最高の環境なのだという先輩の教えは本当だった


しかし、今日は少し様子が違った

春は新入生が多く図書室も混雑していた

さらには、彼の後ろでなにやら女子がざわついているのだった

実は、開に気がついた女子が噂話をしていることに本人は全く気がついていない

流石に、今日は家の方が落ち着くかな?そう思って彼は立ち上がろうとした

その時だった、左通路側に積んだノートや書籍が崩れ落ち

パーンという音と共に床に散らばってしまった

即座に数名の女子が拾い上げたのは言うまでもない

彼に興味のある子は、そんなチャンスを逃さないのだ

開は、それぞれにお礼を言いながら、落としたものを受け取っていた

最後にもう一つクリアファイルを拾ってくれた図書ボランティアが歩み寄ってきた

「あの、これもあなたのですか?」

「あ!!」

「そうです、お恥ずかしい」

それは、母がクリアファイルに閉じ込めたあの天使の弁護士の絵だった

なんでこんなものが、紛れ込んでいたんだろう?

「それ、親戚の子供が書いた絵なんです」咄嗟に嘘をついた

聞かれてもいないのに、答えるのは自分でも変だと思った

彼女はクリアファイルの絵に手をかざし、目を輝かせてこう言った

「これ、あなたが描いたんですよね」「素敵です!」

「え、なんで!?」

「あ、ごめんなさい」「お返しします!」

ちょこんとお辞儀をして、微笑んだその子の瞳は

何故か、懐かしくて・・・

いつか、どこかで見たことがあるような気がした

説明がつかないデジャブーを彼は時々見たりあるいは感じることがある 

「あの、以前どこかでお会いしませんでしたか?」開は尋ねた

「いいえ、初めてです」

「今日から図書ボランティアに入りました」

「榎本開さんですよね」

「なんで僕の名前を?」

「有名ですもの」そう言って彼女は笑った

「私、熊田未来といいます」

屈託のない笑顔に何故か惹きつけられるものがあった


その帰り道、榎本開は今日の出会いが気にかかった

熊田未来 不思議な子だ・・

その時 一瞬記憶が交錯し、彼の視線は宙に浮いた

もうひとつの榎本開の人格が目を覚ましたのだ

$「天使の弁護士 成瀬領」VS「天才鍵師 榎本径」


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あ~ いつも読んでくださっている読者の皆さんは、もうおわかりですね
未来ちゃんの正体を!期待通りの展開になるかどうか!?私にもわかりません←無責任な作者(笑)
もうひとつの人格で、彼は何をやらかすのだろうか~