それは中学生の頃だった。
日夜野球に明け暮れる毎日だった僕は、野球以外のことといえばまだ見ぬ女体に対する憧れとそれに関する妄想の類いの事くらいしか考えていなかった。
そんなある日、同じ野球部で同じクラスの友達が熱心に本を読んでいるのを見て、大した興味もなかったが何を読んでいるのかを尋ねてみたのだった。
すると、少し恥ずかしそうにそのタイトルを教えてくれた。「ゼロの使い魔」彼はそう言った。
僕にとって小説というのは学校の教科書に載っているような、堅っ苦しい昔の人が年老いた人が書いた感じばかりで挿絵なんて入っていないものか、子供向けに書かれたファンタジーの書かれた面白ドタバタ劇ぐらいしか知らなかったもので、どちらにも属しそうもないその小説のタイトルを聞いて
「へぇ〜そうなんだ」と知るでもなく知らないでもなく、興味があるでもなくないでもないような、中途半端に自分の知らない事に対する防御を張るだけで精一杯だった。
それが僕にとってライトノベルとの出会い、画して二次元やアニメ触れる第一歩となった。
その時はそれで終わったが、ふと思い出しNetflixでゼロの使い魔を見てみた。
この手のアニメは高校時代から沢山見て来たので、あらかた展開が読めてしまったが当時の事を思い出しアニメを見終わった時の余韻と汗臭かった当時の回想に浸っていた。
これから僕が腹を痛め産み出す曲たちも誰かの思い出の断片を担うことが出来たら、とても幸せだなと梅雨の雨雲に胸を躍らせた。