夫の叔母が
90歳で亡くなった。
この叔母さんに
初めて会ったのは
結婚式の当日。
つかつかつかと
近寄ってきて
「あなたは◯◯家の二番目の日本人の嫁よ」
そして
私の英語を聞き
「しっかり英語を勉強しなさい」
と言い放った。
アメリカに来たばかりの私には
怖い叔母さんに震え上がった。
前に夫に聞いた
日本人と結婚している
従兄弟のお母さんが
あの叔母さんだった。
初めてのアメリカ
初めて親戚に会う結婚式
それまで
みんな気を遣って
接してくれただけに
初めてパンチを受けた感じだった。
それから15年
叔母さんが
息子に渡したいものがある
と連絡があった。
同じ州に住んでいるけれど
結婚式後に会うのは初めて。
もちろん息子は初対面。
夫じゃなくて
なぜ息子?
叔母さんは
日本人と結婚した息子と
その孫と一緒にやってきた。
残念ながら
離婚してしまったけれど
こうして孫とは変わらず繋がっていることに
なんだかホッとした。
叔母さんは
割れないように
しっかりタオルで包んで
コンテイナーに入れた
古伊万里のような大皿を取り出した。
「このお皿を
息子に受け継いで欲しい」
叔母さんは
すでに嫁いで
◯◯家ではなく
◯◯家の男の子の孫は
息子だけ。
◯◯家と名乗る
最後の男子は
息子になる。
名家でもないし
アメリカで
名前をそんなに大切にしているなんて
思ってもみなかった。
そのためだけに
遠路はるばる叔母さんは
やってきた。
そのお皿が
叔母さんの手に渡った話を
語ってくれたが
今となると
所々しか覚えてない。
自分の記憶力が
恨めしい。
まだ娘だった叔母さんが
お母さん(叔母さんのお母さんだから、大叔母さん)と
船旅をしていたとき
ある有名な人と
友達になったらしい。
その人からいただいたのが
そのお皿らしく
それ以来大切に持っていたらしい。
もっと色々聞いたのに
悲しいかな
このアウトラインしか覚えていない。
夫に至っては
メモをしていたのに
そのメモがどこに行ったか
わからないという。
ポンコツ夫婦です。
叔母さんが亡くなってしまった今
もうその話を聞くことはできない。
15年ぶりに会った叔母さんは
前の記憶が間違いだったみたいに
優しくて
sweetで
でも言うことはしっかりしている
素敵な女性でした。
今思えば
もっともっと
会っておきたかった。
ひょんなことから
叔母さんが手にしたお皿
将来
half Japaneseの息子の手に
渡るなんて
思ってもみなかったと思う。
不思議なお皿です。