「次のコンサートで、ソロ弾くから」

 

へっ?

 

息子とソロ

どう考えても結びつかない。

 

よく聞くと

地元のオーケストラで

ソロを弾くらしい。

 

私が指揮者だったら

一番上手い人を

ソロに決めると思う。

 

息子には悪いけれど

このオーケストラの中で

一番上手い

バイオリニストではない。

 

息子は

小三からバイオリンを

始めたけれど

天才的バイオリニストでもない。

 

そんな息子が

なぜ?

 

ソリストは

オーディションで決めたらしい。

 

だから

やりたい気持ちがあれば

誰にでも

チャンスはある。

 

それに

うがった見方をすれば

シニアだから

華を持たせてくれたのかもしれない。

 

ありがたいと思いつつ

ホールで息子が弾いてる姿を

想像するだけで

恐ろしくなる。

 

みんなの前で

ちゃんと弾ける?

 

こっそり楽譜を見て

また驚いた。

 

ソロのパートが

ちょろっとあるのかと思ったら

ほぼ一曲。

 

試しに弾いてみたけど

指の速いパートで

無理って気がついた。

 

コンサートが近づくにつれて

胃が痛くなる私。

 

コンサート当日。

 

もう

目も耳も塞ぎたいけれど

とりあえずビデオを撮った。

 

弾き始めは

心臓が止まりそうだったけれど

 

始まってみると

まわりのオーケストラが

素晴らしいのか

 

息子のソロも

結構上手く聞こえる。

 

よかった

と思ったのも束の間

 

息子の弓

なんだか変。

 

張り切って

一番前の席に座った私からは

弓が少しゆるく見える。

 

慌てて他の人の弓と見比べるけど

やっぱりゆるい。

 

弾く前に

弓を張るの忘れた?

 

もう

今更どうしようも無い。

 

終わってから聞いてみると

 

「途中の休憩で気がついて

 締めたよ」

 

息子らしい

ソロデビューになった。

 

血圧が上がったり

下がったり

聞いてるだけなのに

肩が凝ったコンサートでした。

 

息子のチャレンジに

快く機会を与えてくれた

地元オーケストラに

感謝するとともに

 

やりたいと手を挙げれば

応えてもらえる

アメリカの懐の深さを感じました。