JRAにせよ地方競馬にせよ、一般的にグレードが高めの競馬の重賞には指定されたトライアル競走なり前哨戦を勝つか上位入着なりで『優先出走権』というものがついてくる。中央競馬であればクラシック競走の前哨戦では有名であり、古馬GⅠの出走をかけたステップレースによっては1着の馬に優先出走権が与えられるものがあり、レース内容にもよるが最優遇優先出走権の判定に用いられるレーティングにも加味される。地方競馬でも似たようなものがあり、ローカルグレードが高め(南関東であればSⅠ・SⅡクラス、東海地区のSPⅠグレード、兵庫でも重賞Ⅰグレードあたり)の重賞や地区のダービーによくある話。
そんな優先出走権の概念がどういう訳かないのがばんえい競馬。『ばんえい甲子園』シリーズのファイナルであるヤングチャンピオンシップのように予選を勝ちあがった馬の選抜戦であれば存在するのだが、BG1のグレードともなると優先出走権が設定される重賞は存在しない。夏にファン投票で出走馬が決まるBG2のばんえいグランプリ(BG1だった時期もあった)ですらファン投票で選ばれた以外は収得賞金の上位馬が充てられている。
ばんえい競馬における優先出場権の概念がないのを問題視していたのが史実ではオークスの出走に際しリステッド競走に勝利し優先出場権を獲得したブーケたん(カレンブーケドール)。ちょうどばんえいの場合、『とかちクラシック』(所謂『とかち○○』の○○の部分を皐月賞やダービーの名前に置き換えたレース)シリーズなる3歳オープン馬の特別戦シリーズがこの時期展開中ということもあり、ばんえい競馬に『優先出場権』というものが必要なのではとブーケたんは考えているようである。一緒に考えるのは、境遇的に同時期のアイドルホースオーディションを勝ち抜き仲良くなって史実では2回出走したGⅠの出走は収得賞金で滑り込んだことがあるヨッちゃん(ヨシオ)と、史実では3歳時に菊花賞のトライアルに勝利して優先出走権を得ても天皇賞(秋)に出走したサー兄(サートゥルナーリア)の2頭。
ブーケたん(カレンブーケドール):私そうだったからわかるんだけど、中央競馬の場合クラシック競走なんかは優先的に出走できる馬を決めるのにトライアル競走設けてそこの成績上位の馬に優先出走権って与えてるし、地方競馬見ても大きめのレースに関してはステップレースで勝つなり2着なりで優先出走権与えているけど、ばんえい競馬ってグレード高めのレースに関して優先出走権って概念ないのね。
サー兄(サートゥルナーリア):ばんえいって特殊過ぎるんだよね。前哨戦で勝っても次に使わないと鈍るようなところあるから。育成環境が優先出走権の概念がない背景だと思うな。
ヨッちゃん(ヨシオ):確かばんえいの場合、僕らサラブレッドと勝手が違って重賞勝っても次の重賞使うまでに出走感養うのに一叩き二叩きオープン特別(下級条件だったら自分の属する自己条件)を使って調子維持させる習慣もあるから、平地競走みたいな優先出走権ってシステムがなじまないのも一因だと思う。それに優先出走権獲得後に使ったあとの一戦で故障なんかしたら水の泡だし。
サー兄:そういう意味では、我々サラブレッドに競走レーティングっていうのが重賞とかオープン競走の一部だともらえるんだけど、そういうのもばんえいの馬にだって必要だと思うな。
ブーケたん:確かにそうよ。現役のばんえい馬の能力の比較化する指標ってないのね。しかもハンデキャップ競走ってシステムもばんえいってないじゃん。別定戦だって収得賞金か重量条件による加減が大半なのね。
ヨッちゃん:ハンデキャップ戦がないからなんだろうけどハンデキャップの作成に携わる職員がいないのって不便だと思うな。能力を見極めるのが完全に専門紙のトラックマン任せになってしまうって問題あると思うぞ。サラブレッドのようなハンデキャッパーが作成する指標と違い大相撲の番付みたいな感じでいいからレーティングに匹敵する形で『ばんえい競走馬能力番付』みたいなものってあってもいいと思うな。
ブーケたん:あと、ばんえいって所々重賞体系がいびつなところってあるのね。
↑ブーケたんがいびつと言っていたばんえい競馬の重賞体系(2023年度版・ばんえい競馬公式サイトより転載)
ブーケたん:3歳と4歳で世代交流のGⅢ格の重賞とかやったり牝馬限定の重賞が少なかったり…
ヨッちゃん:特に2歳路線なんて三冠まではわかるが牡馬限定と牝馬限定の重賞加えたら四冠にならないかと思うし。
サー兄:その辺の解説ってコアなファン以外にはわかりにくいと思うんだよね。そういう点を初心者に向けたガイドブックとか作って説明する必要ってあると思うな。
ヨッちゃん:ばんえいってサラブレッドより育成調教事情が特殊でオープン馬ですら必要に応じて連闘したりしなきゃなんないのわかるんだけど重賞の際の出走資格やトライアル競走のシステムっていうのがしっかりしないといくらばんえいでも魅力出てこないと思うぞ。
サー兄:ばんえい甲子園シリーズしかその手しっかりしていないのってオイラでもまずい気がするな。そういう意味ではブーケたんが言うトライアル制度の拡充というのは課題だと思う。最低でもBG1は全部やんないとこれからばんえいの将来という意味では魅力やレベルが低下すると思うから、そこはしっかりしてほしいな。
ブーケたんはサラブレッドのようなレーティングシステムみたいなものをばんえいに求めているようだがサー兄にしてもヨッちゃんにしてもほぼ同意するものがあった。あと、ばんえい重賞におけるトライアル制度の必要性についても3頭は一致した意見を持っていたようであり、そこに関してもウチは同じ疑問を持っていたので、理解できる話ではあった。
確かにばんえい競走馬にサラブレッド並みの能力指標を格付けする必要性はあるのだが、その指標の単位をサラブレッド並みにポンド表記するのか独自の評点方式をとるのか、主催者とばんえいのトラックマンによる検討会議の必要性もあるため、そう生易しい話にはならないとは思うんだが…