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 コアラにとって盲腸内の共生細菌が大切だということがお分かりいただけたと思います。

 では、コアラは生まれた時からこの細菌をもっているのでしょうか?実は、もっていないのです。

 実験動物の中には、細菌やウイルスにまったく感染させないように作出される動物がいます。これは無菌動物(germ free)と呼ばれ、腸内細菌ももっていません。

 多くの動物は、有用な腸内細菌を生まれてから体内に取り入れます。それは、母乳を飲むときやお母さんの体をなめる時に偶然的に入るようです。

 コアラの子も腸内細菌を体外から取り入れます。ただ、コアラの子は未熟児で出産し、「第二の子宮」と呼ばれる母親の袋の中で成長するため、腸内細菌を取り入れる時が他の動物より少し遅れます。

 さらに、コアラの子どもが腸内細菌を体内へ取り入れる方法は、ちょっと変わっています。

 袋の中で成長した子どもは、袋から顔を出す頃にお母さんのウンコを食べて有用細菌を譲り受けるのです。ちょうどその時期が離乳期にあたるので、この糞は離乳食ともいえます。

 その時にお母さんが与えるウンコは、コロコロの粒状便ではなく、あのタンパク=タンニン分解菌を豊富に含んだドロドロの盲腸糞なのです。お母さんは、意図的に糞を分けて出しているようです。

 コアラの子どもが、お母さんのウンコを口の周りにつけて満足している様子を、「汚い!」と感じたことはありません。いつも、「美味しかったかい?」と声をかけていました。

 その盲腸糞には、お母さんの好みのユーカリの味や匂いがついていますから、子どもは糞を食べながらお母さんの好みを受け継ぎます。

 これがまさしく「お袋の味」!です。

 このような糞食もしくは食糞は、08ガンダムさんがコメントされたようにウサギやある種の齧歯類にも認められます。かれらは糞食によって栄養分を再摂取していると考えられています。

 糞食は通常、コプロファギー(Coprophagy)と訳されますが、これには病的な意味が含まれています。ですから、ウサギなどが行なう生理的な糞食は、セコトロフィー(Cecotrophy)、つまり盲腸糞を食べることによる再栄養摂取と呼ぶ方が適切でしょう。