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 動物園が動物学の場である、という考えは歴史的流れの中で当局に受け入れ難くなりましたが、動物園が貴重な学術研究の場であることを認識していた動物学者は少なからずいました。

 京都帝国大学理学部卒の動物学者で大阪天王寺動物園職員でもあった筒井嘉隆は、「(動物園は)興行師的立場を捨て去り、一般大衆に迎合することなく動物学的な高所に立って、市民を導いてゆかなければならない」と語っています。今となっては傲慢とも感じられる発言ですが、動物園の本来的意義を強く信じていたからこそ主張できたのでしょう。

 また、東京帝国大学助教授で上野動物園の初代園長ともいえる石川千代松博士は、「動物学の上から甚だ遺憾に思うことは、本邦にはまだ一つの動物園がなく、また一つの博物館がないことである」と1900年代初期の動物園・博物館状況を書き残しています。彼もまた動物園が動物学を基盤とすべきことを信じていた人です。

 けれども、これらの声が動物園の発展過程において反映されることは、ほとんどありませんでした。未だに日本の動物園では、学問や研究が軽んじられる傾向があります。