大好きな音楽ジャーナリストの吉岡正晴先生が
ニューシングルのライナーノーツを書いてくださいました。
知らなかったエピソードや、音楽愛溢れる言葉に
「私のことをこんな風に見てて
くださる方がいたんだなぁ〜」と
嬉しくて泣けてきました。
人に元気とパワーを与える言葉の力に、
改めて深く感動しました。
吉岡先生ありがとうございます!

許可をいただき、掲載させていただきます。
もしもお時間ある方は、良かったら是非!!
(改行など、見ていただく機種やパソコン
によって変わってしまう場合があります。)

いよいよ明後日配信になります。




ZOOCOの『Departure/恋しくて』 ライナーノーツ

シンガー力を見せるZOOCO最新作
歌手力(かしゅぢから)。
 
エスカレーターズ、SOYSOUL、そしてソロ・シンガーとしてのZOOCOと、名前は変われど、シンガー、あの声の持ち主ZOOCOの魅力はまったく変わらない。
それぞれのグループでのライヴやCDも聴いているが、ZOOCOの歌でとりわけ記憶に残っているのが、目黒・上大崎の高速の下を車を走らせている時に当時やっていたJウェイヴの『ソウル・トレイン』に生出演したZOOCOがキーボード(K-Mutoかな)をバックに「上を向いて歩こう」を歌っているのをカーステレオで聴いたときだった。思わず坂の途中で車を左端に寄せ、
聴き入った。調べたら2004年9月末のことだった。
 あの「上を向いて歩こう」をFMから聴いたとき車を止めた場所、その風景は今でもよく覚えている。そして、シンガーとしてヴォーカリストとして、どれだけ人の曲をカヴァーして、それを自分色に染められるのか、そこがシンガーとしての肝だということを改めて感じ入った。それはルーサー・ヴァンドロスにしろ、アレサ・フランクリンにしろ、グラディス・ナイトにしろ、みなカヴァーを本当に自分のものにしてしまい、オリジナルを知らなければ、その人の持ち歌だと思わせてしまうほどのクオリティーを見せる力だ。ZOOCOの「上を向いて歩こう」を目黒の坂の途中で車を止めながら聴いていたとき、彼女は間違いなくどんな曲も自分の物にしてしまう歌手力を持っているんだなと思った。
 
そんなZOOCOが2014年7月発売の「Love Stream」以来、約3年4か月ぶりのシングルを出す。それが本作だ。
 
■曲目紹介
 1. Departure
 
K-Mutoがプログラムなどを担当、なんとギターにNONA REEVESの奥田健介、さらにベースに森多聞、ヴァイオリンに依田彩が参加するという豪華布陣で制作された作品。イントロの歯切れのいいギターから、ポップでキャッチーなダンサブルなミディアム調の曲は、一度聴いたら忘れられない。クラブやディスコでのプレイも十分可能だ。ひょっとして12インチ用ディスコ・ミックスなども後日できるのかもしれない。




 2. Always 

これもK-Mutoがトラックを作りゲストにベースでキリンジの千ケ崎学が参加。1曲目より少しテンポを落とした作品。まさに日本のR&Bサウンドという雰囲気を漂わせるスロー・ジャム。
 
3. 恋しくて 
 
このオリジナルは沖縄出身ビギンの1990年3月リリースのデビュー曲、そのカヴァーだ。驚くのは完全にZOOCO節にしているところ。K-Mutoがベースのトラックを作り、ギターにパール兄弟の窪田晴男、ベースに江川ほーじんのほか、なんと、フィラデルフィアをベースに活躍するマルチ・インストルメンタリスト、キーボード奏者、プロデューサーでもあるジェームス・ポイザーがキーボードで参加。ポイザーは、エリカ・バドゥ、ルーツ、ディアンジェロなど錚々たるメンバーと活動している現在のアメリカR&Bシーンでもっとも活躍しているキーボード奏者、プロデューサーの1人だ。ZOOCOは元々ルーツのクエストラヴら、フィラデルフィア・ソウルのメンバーと知己があり今回も参加してもらった。
 このメローなスロー・ジャムは完全に1990年代から現在にいたるアメリカのR&Bマナーの作品になっており、そのままアメリカのブラック・ステーションでかかってもおかしくないほど。
 今度この曲を、10年以上前に「上を向いて歩こう」を聴いたあの目黒の坂の途中に行って、
改めて聴いてみようと思う。そのときの風景とシンクロするかもしれない。ZOOCOのカヴァー力、歌手力がいかんなく発揮されている1曲だ。
 
これでZOOCOの『Departure/恋しくて』のCDはもうおしまい。いかがでしたか。このCDがあなたのCDライブラリーにおいて愛聴盤となることを願って・・・
 
[October 6、 2017: Yoshioka Masaharu —The Soul Searcher]
“An Early Bird Note”
Linernotes Since 1975
http://www.soulsearchin.com
 
吉岡正晴=音楽ジャーナリスト、DJ。ソウル・ミュージックの情報を発信しているウェッブ『ソウル・サーチン』、同名イヴェント運営。1970年代には六本木「エンバシー」などでDJ。ディスコ、ブラック・ミュージック全般に詳しい。ラジオ番組出演、構成選曲、雑誌・新聞などに寄稿。翻訳本に『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』(デイヴィッド・リッツ著)、『マイケル・ジャクソン全記録』など。自著『ソウル・サーチン R&Bの心を求めて』など。毎月第二火曜日東京のインターFMで『ソウル・サーチン・レイディオ』、第一木曜ミュージックバードで『ザ・ナイト』内「ナイト・サーチン」を生放送中。最新情報は、ツイッター、https://twitter.com/soulsearcher216 で。