サイドアタッカー、セッター、ミドルブロッカーと色々と記載してきましたが、2013年全日本の基盤であることを再確認した「リベロ」について思うことを書いてみます。個人的な意見として参考までにご覧ください。
海外チームのリベロと日本のリベロは役割がどう違うんだろう。。。最近考えたことがあります。日本ならではのリベロの役割って何だろうと。。。
リベロの基本的な役割って、
・レセプション
・ディグ
・ブロックフォロー
・第2セッター
でしょうか。海外のトップチームのリベロと違うところは、ブロックで抜けてくる回数が多いので、まず味方のブロックとの関係を築く必要があるということ。そしてセッターのディグがいいので、第2セッターとしての役割が非常に大きいこと。があげられると思います。
その他を言えば、
・味方スパイカーへの相手ブロックマークに対する声だし、「1枚、2枚」など
・相手サーブやスパイクに対するラインジャッジの声だし、「In、Out」
などの声のフォロー。
やはりコートを一番見渡せる場所に常にいるリベロは、ゲームを客観的に見やすいポジション。最も声をだし、チームを盛り上げる立場かもしれません。
自分が思う海外の有能なリベロといえば、アクロバティックなプレーと情熱的な闘志を持つブラジルのファビ、バスの交通事故の後遺症で引退してしまったアメリカのシコラ、反射神経と予測が非常にいいドミニカのカスティージョなど、素晴らしいリベロはいます。
世界的なリベロに共通するのは、レセプション、ディグなどほとんどのプレーにわずかな逆回転がかかっていること。しっかりと自分でボールの球威を吸収し、セッターに負担がない軽い質の返球をしていることが目立ちます。
要は「セッターの入りが遅い」ってよく解説などで聞きますよね。これって、1stタッチ(自コートで最初にボールに触れる)でのボールの落下地点の予測ができてないことも1つの要因だと思います。だから逆回転をかけることで、セッターの落下地点が予測しやすくなる。その点では佐野と竹下は抜群のコンビでした。
皆さんもレシーバーからセッターへの返球がどういう回転、軌道で返されているのか、ぜひ見てみてください。選手それぞれの特徴があるので、そのレシーバーから誰が柔らかくトスを上げやすいのかは見ればわかると思います。地味ですが、1stタッチの重要性を非常に感じることができると思います。
しかし今一つ乗り切れてない絶対的なリベロがいないのが2013全日本の現状。では個人個人をみていきましょう。
[座安琴希]
第一候補は座安なんですが、元々セッターをやっていたこともあり、レセプション経験が手薄。どうも海外選手の高さのある上からの球威のあるパワーサーブに弱い印象です。ただレセプションは経験数が必要。徐々に良くなっているので、リオ五輪の時には立派にこなすと信じています。
WGPファイナルのアメリカ戦の第5セットの勝負を決める2ポイントでのレセプションが乱れたことが残念でなりません。それまではいいプレーが多かっただけに、勝負強さという点で?がついてきます。
例えばリオ五輪の金メダルを決める決勝の第5セットの13-13から2本連続でレセプションが乱れから敗戦となると、一生後悔するでしょう。やはり第4セットまでのアメリカのサーブである程度想定できたデータを頭に蓄積し、その中から更にいいサーブがくるという予測をプラスし、判断できる勝負強さを身に着けてほしい印象です。
しかし運動神経、反射神経は日本No.1でしょう。動物的な反応の良ささえ感じてしまいます。今の座安に必要なのは、メンタルの成長。特に「相手との駆け引き」「それに応じた予測」だと思います。
座安は動きすぎると思います。他のリベロと比べて、レセプション後の動きが特に気になります。その点を下記に示してみます。リベロとしての動きが今ひとつ理解できてない自分なのですが、このリベロの動きは必要なのでしょうか?わかる方がいれば教えてください。
(画像1)
アメリカのサーブで日本はバックレフトに座安、バックセンターに木村、前衛ライトに新鍋なので、新鍋を0.5とし実質座安と木村のレセプション体型。
(画像2)
座安は相手サーブが打つ前に右に移動開始
(画像3)
自分以外の選手がレセプションを行う時は、わざわざカバーに入るため、味方選手の後方をカバーするため移動。
(画像4・5)
画面が横に変わって、ライト側まで移動した座安はそのまま前に直進し、ライト側のブロックフォローに入る。
これって、最初からライト側を使うサインが宮下から発信されていたのか?それとも偶然なのか。もし最初からライトとわかっていれば、アメリカのブロック陣は座安の動きを見れば、どこの攻撃の確率が高いかわかってしまう。更に動きすぎるので、味方がスパイクを打っているときも動いたまま、ブロックフォローの反応が遅れることが多い。
しかもその後はバックレフトの定ポジまで戻らなければならない。この戻るときに味方の宮下や他の選手とぶつかることが非常に多いのが目立ちます。まさに座安のルーティン?癖?みたいになっているですが、この動きは必要なんでしょうか?
他の世界的リベロを見ると、そのまま直進し、レフトのブロックフォローに入っています。もしこのポイントで江畑を使い、被ブロックにあっていたら、ブロックフォローが誰もいないことになってしまう。
この動きが「予測」なのか?「癖・ルーティン」なのか?はわかりませんが、テニス選手側から見れば、無駄に動きすぎると感じます。
ただ座安の返球は非常に軽い。吸収してから逆回転気味に返球し、球質がいいので、セッターはやりやすいと感じます。自分的には佐野を超えるリベロになる可能性は非常に高い。23歳の時に佐野が同じ活躍ができていたか?といえば△。
佐野は海外に移籍してぐっと伸びた選手です。座安は早く海外へ行くべき。日本でやれることには限りがあります。海外の高さの位置から重い球質のサーブを受ける練習を毎日続けた方が短期間で伸びやすい。とにかく海外選手独自の高さと重さ、癖など経験値を増やすことだと感じます。
来季こそは世界バレーで活躍し、海外に武者修行に出てほしいです。その前にグラチャンがあるので、自分が世界一であると自負を持って世界にアピールしてほしい。
[佐藤あり沙]
今回、長期間佐藤選手を見ることが初めてできました。注目したのは昨季のリーグ入れ替え戦「日立×デンソー」この試合でチャンスボールが返ってきた際のダイレクト返球で見事ポイントを取り、おお!と積極的なリベロだと感じた記憶があります。
合流が8月中旬のWGP仙台大会でまだ実質2か月間の合流ですが、よくやっていると思います。ただ座安と同じく、経験数が足りない。色んな種類、高さ、パワーのサーブやスパイクを受ける場がなく、海外選手の球威に押されることが多いように見えます。
そのため、球威をうまく吸収できずに、弾くように返球してしまうので、セッターにボールが順回転で重いまま、トスを上げにくくなっている気がします。下記のように
・第1セット22-15の木村のスパイクのチャンスボールを佐藤が取る場面
(画像1)
中国からのダイレクト返球を佐藤が「自分が取る!」と木村に合図し、オーバーパスでポジションに入る。
(画像2)
打球の予測が違ったのか急にアンダーに変更。しかし詰まってる状態なので、画像のように上体が浮き、ボールの球威を吸収できず、手を振りあげて宮下に送る。
(画像3)
ドライブ回転がかかった球は、宮下の前で失速しつつも球威は残ったままなので、宮下の腕力ではコントロールできずに、木村の前で失速し近いトスへ。
(画像4)
木村は近く低めのトスにストレートを狙うがシャットアウトされ被ブロック。結局木村の被ブロックで木村が調子悪いと思われがちですが、佐藤の1stタッチが正確で優しいパスであれば、きっちりとした攻撃ができたかもしれないと思えました。
ただそれも最近変わりつつあるように見えます。アジア選手権をすべて見たわけではないですが、少しずつ少しずつ経験を積み、柔らかい質の返球になりつつあるように見えました。
佐藤選手の特徴は、物おじしない積極性があること。木村沙織などはコート内では非常に厳しい選手。リベロでさえ任せられないと思ったら、自分から取りにいってしまいます。だから遠慮しがちなリベロだとまったく触れない場面も。
その点、佐藤選手は木村の前にまで取りに行く積極性があり、非常にいいです。リベロは後衛のディフェンスは仕切れないと、日本のディフェンスは統一されない。そしてハンドリングがいいので、第2セッターとして十分なトスがあげられる可能性があります。
ただ安定したアンダーを使いたがるので、トスにはもう少し積極性、チャレンジしてほしい。座安選手と争っている今年ですが、上手くなろうとしている姿勢や素質を感じるだけに、後は経験でどれだけ成長できるかだと思います。ぶれないメンタルと得意の牽引力を魅せてほしいです。
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最近は、座安にしても佐藤にしても、今一つレセプションが安定しない傾向にあり、20点以降でのブレも見られることで、佐野の待望論も出てますが、自分としてはどうだろう?という気持ちもあります。
確かに現時点では佐野の方がかなり上でしょう。安定感と相手を読む力が素晴らしいです。しかし将来の全日本を考えると、アンダーセットでの第2セッターではテンポが遅くなり、トランジションの成功確率が悪いかなと。
●相手のフォームでコースを読んだ佐野のスーパーディグ
(画像1)
ロンドン五輪の韓国戦の1シーンですが、トランジションでヨンギョンのBSがきます。しかし佐野はほとんど動かない。しかしヨンギョンのスパイクフォームを見てから1歩微妙に体重を右に移動しています。
(画像2)
相手が打つ直前に動いているので、ヨンギョンもコースを変えられずに、簡単にディグが上がります。左のレフト側の方がスペースは空いてるんですが、しっかりと相手と駆け引きをしてあげてますね。座安との大きな違いは、相手が打つ前にちょろちょろと動きまくるか、佐野のように相手に気づかれないように地味に動くかが大きく違うところ。
動きすぎると逆に反応できないので、リベロはドシッと構えて、相手の動きを見極めながら静かに動く戦法を取ってほしいです。リベロの見本のような佐野の動きだと感じます。
そして今年は全日本で見られるかと思っていた井野選手。なぜ召集されてないのかと不思議に思いましたが、いまだにその理由はわからず。わかる方がいたら教えていただきたいです。
全日本女子のリベロ、セッターと共に攻撃のワン、ツーを担う大事なポジション。この2人が安定すれば、日本女子バレーのレセプションアタックandトランジションアタックが安定し、連続得点が増え、連続失点が減り、ゲームメイクしやすくなります。
座安でも佐藤でも、絶対的な守護人として安定した活躍を見せてほしいです。リベロは正直、世間の目からは厳しいポジション。得点がないので、なかなか目立たない地味な役割です。しかしミスをすれば目立つ。
地味な活躍はなかなか評価されないけれど、ミスがあるとリベロに矢が飛ぶポジションでもあります。ミスが少なくなる強いメンタルと強靭なフィジカルが必要ですね。難しいポジションですが日本女子には不可欠な大事なポジション。
世界No.1のリベロに早く成長してほしいです。このリベロの1stタッチからすべての日本バレーが始まります。本気で狙うリオ五輪の「金メダル」。サイド、ミドル、セッター、リベロと完璧な12名をセレクトし、本気で期待したいです。
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