鈴木さんと小田さんの人柄が分かる出来事がある。

 

1977年9月28日 この日は神奈川県相模原市にある相模原市民会館でコンサートがあって、僕はオフコースのコンサートPAをずっと担っているSEPT1のアルバイトとして行っていた。照明・PA・楽器のセッティングが全て終わり、次はリハーサルの順番なのに鈴木さんだけ遅刻の様子。これはもしかすると鈴木さん抜きでリハーサル?となっていた時に「遅れてごめんなー」と客席側からステージにひょいと上がってギターを抱え、無事終了したというハラハラな出来事があった。ちなみに当時のリハーサルの1曲目は「Run away」が多かった。さて、鈴木さんのエピソードはこれではない。諸々終わって開演までの間、マネージャーにメンバーのギターのチューニングをするように言われた。当時はオフコースカンパニーも規模が小さく、担当マネージャー1人とデスクの女性の2人だけだったので、当然手が行き届かない。マネージャーのIさんは本当に親切で優しく、僕のことまで何かと気にかけてくれていて、PAのアルバイトの声をかけてくれたのもIさんだった。話はギターのチューニングに戻る。僕もギターを弾くのでチューニングはできるものの、プロの、しかも鈴木さん達のギターのチューニングをするなんて夢のようだし、緊張も相当あったと思う。一通り終わった頃に鈴木さんが「できた?」とやってきてチューニングを確認し始めた。するとチューニングが甘い。普通なら怒られてもいい場面なのだが、鈴木さんは怒ることもせず「ちょっと低いなー」と柔らかい声で言うだけで自分で修正していた。この「ちょっと」が本当に鈴木さんの人柄が良く現れている。人に対していつ何時でも優しい。別にそれを言わなくても単に「低いな」と言い放てば済むのに「ちょっと」を加えるだけで相手の受け取り方が大きく変わる。ダメージは軽減されて、その分、自分のミスを素直に反省することになる。もしかすると事務所の社員でもないアルバイト(自分)に強く言っても仕方がないという思いもあったかもしれないが、いずれにしても、ものの言い方ひとつで相手とのコミュニケーションの質が大きく変わることをこの鈴木さんの一言で学んだ。その後の自分のコミュニケーションの基礎となった出来事でもある。

 

1978年6月12日 この日はアルバム「FAIRWAY」のレコーディングの取材で僕はカメラを手に東芝EMIのスタジオに出かけていた。その日は「夏の終り」の録音日。レコーディングの様子をメモしながら、小田さんや鈴木さんの写真を撮らなきゃなぁと思いながら邪魔にならないようにキョロキョロしていた。メンバーの人達にはファミリーのスタッフだと認識されていたけれども、所詮素人だし、単にファミリーの1スタッフでしかないので緊張しながら、小田さんと鈴木さんの行動を目で追っていた。そんな中、小田さんが1人スタジオに入ってピアノを弾き始めた。その時は録音ではなく、単にフレーズの確認をしている風だった。でも撮っていいのか判断にも困るような雰囲気もあったので躊躇していたところ、小田さんのほうから「写真撮るんだろ?」と声をかけてくれて、ピアノを弾いてるところが撮れるようにしてくれた。この気配りが小田さんの人柄なのだ。口数は少ないけれど常に周りのことを見て他者への配慮を考えている。オフコースカンパニーに通うようになった頃、デスクのHさんが「小田さんって見てない風でよく周りを見てるの。だから色々分かっているのよね。あなたも周りをちゃんと見なさいね。」と諭された事があって、その時はそのことが分からなかったのだが、このレコーディングでの出来事で初めて実感した。これもその後の自分に大きな影響を与えていて、いつも周りの動きを見るようになった。

 

その時のレコーディングの取材記事と小田さんの「写真撮るんだろ?」で撮影できた写真はオフコースファミリーの季刊誌『昭和53年秋の号』に載っている。

 

 

【オフコースファミリー】

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