『勇者たちの中学受験』。 | おいしいごはんと、そらの日々。

『勇者たちの中学受験』。

おおたとしまささん著『勇者たちの中学受験』

読了しました。

 

『勇者たちの中学受験』

 

いやー、よかった。

これ、読んだほうがいいです。

そして必ず、最後の「解説」まで読んでいただきたい。

 

2022年1〜2月に首都圏で中学受験をした

実在する3組の親子の、

受験最後の3週間のドキュメンタリー。

 

読んでいて、ほんとーうに”イライラ”します。

何にイライラするかって、保護者の愚かさに。

それに翻弄されるこども達の哀れさに。

おおたさんはまさに、この”保護者の愚かさ”こそを

描きたかったのだと思います。

 

もちろん、おおたさんは

ご自身が取材した保護者たちを

”愚かだ”と糾弾したり、批判したりしているのではないです。

 

ただ、「中学受験」という魔物に踊らされて

”本質”を見失ってしまうことの怖さを

描きたかったのだと思うのですよね。

 

ここに登場する3人のこども達と、

その兄、姉たちはほんとうに素直で、勇敢。

 

でもその”親たち”はほんとうに恐ろしいんです。

”恐ろしい”というのは、

怖い親、スパルタ、教育虐待、という意味ではなく

(そういう側面もあるにはあるのですが)

「誰もが中学受験を経て、そうなる可能性がある」

という”恐ろしさ”なのですよね。

読んでいるわたしにも、その可能性はあったし

保護者の気持ちが理解できてしまう。

 

わが家も、この本に描かれた3人と同じく

昨年、中学受験を経験しました。

 

新4年生のタイミングで

いわゆる”大手集団塾”に入塾しました。

で、最初の3ヶ月でわたしは「これじゃない」、

「ほんとうに大事なのは、わたしが人生で大切にしたいのは

こんなことじゃあない」と思ってしまったんです真顔

 

学習時間や内容、宿題、はては学習態度、

それらを通して親がこどもを”管理”すること、

そうすることでしか合格に辿り着けないのだとしたら

その合格に何の意味があるのか、という、

元々持っていた思いが強くなっていった。

 

こどもを”管理する”こと、

それはわたしがわたしの美学として

絶対にしたくないことだったんですよね...

 

なのでそれ以降は、

彼の学習時間や内容について

基本的にわたし達は”管理”をしていないですし

結果的には彼は受験期間を通して

ならいごともそのまま継続しました。

(しかも、週8時間を費やすならいごと滝汗

 

もちろん、10〜12歳の子には

判断できない、ハンドルできないことも多いので

そこはこちらがサポートしました。

まったくの手放し、放任、ということではないです。

 

結果として、第一志望には届かなかったのですが

じゃあ習い事を休んでおけばよかったね、とか

もっと勉強時間を増やせばよかったね、とか

低学年から、なんなら幼児期から

先取り学習に取り組んでおけばよかったね、とは

彼もわたし達もいっさい、思いませんでした。

受験直前期には塾の先生に

「第一志望に届く」と言われていた、

そして、彼自身も彼のベストを尽くした、

で、落ちた。もうじゅうぶんです。

 

彼はいまほんとうにしあわせで、

中学校生活を謳歌している、

ラスト2年、貫いたならいごとは

いまも彼の人生の大きな”柱”になっています。

 

著者のおおたさんとは、

長男のならいごとでごいっしょしています。

おおたさんは取材者として、

わたしは保護者として、

そしてときどき取材者として。

 

その場で見てきたおおたさんは

ほんとうに真摯で、何かに踊らされていなくて、まっとうで

大事なことは何か、本質は何か、を

きちんと捉えている、もしくは

常に捉えようと努力している、そんな方です。

 

だからこそ、

学校や塾の実名を明かし

リスクを冒しながらも

この本を書かれたのだろうと思います。

 

わが家もまだ、次男の中学受験が残っています。

そのときに、わたし達夫婦が

「魔物」にならないとは、愚かにならないとは限らない。
残念ながら、それが中学受験です。

あぶない、と思ったらまたその時に

この本を読み返したいと思っています。

 

(ちなみに、『きみの鐘が鳴る』の著者・尾崎英子さんも

同じならいごとの”大人の部”でご一緒しました。

未読なのですが...

こちらも読もうと思っています。)