前回の記事「情報化社会における暗号化のはたらき 1」では、暗号化の仕組みについてご説明しました。
後編では、今と昔の暗号化方式について紹介しています。
暗号化は、古代から用いられてきました。普段、一般の人々の間ではあまり用いられることはありませんが、ごく限られた範囲、たとえば軍や外交、諜報機関などで長い間使用されてきました。
1.暗号化の始まり
暗号化の話を始めるうえで、暗号法に由来する現代の暗号化技術をきちんと理解しておくことは大切です。
暗号とは、データをコード化し、第三者から読み取られないようにすること、そしてコード化したデータを解読することです。
電子暗号化は比較的新しいものですが、その歴史を紐解いていくと古代ギリシャまで遡ることになります。
暗号化技術を初めて取り入れたのは、古代ギリシャ人です。彼らは、機密情報文書を敵あるいは大衆の目から隠し、守るために暗号を使用しました。
古代ギリシャ人たちは、非常に原始的な方法を用いて文書を暗号化しました。暗号を解読するために必要な鍵を運ぶための道具として、(スキュタレー)と呼ばれる暗号装置が用いられました。
スキュタレーとは、コードを解読するための鍵を隠すために、シリンダー型の装置に羊皮紙を巻き付けたものです。
隣り合う羊皮紙が同じ厚みのシリンダーを使ったとき、左から右に読むとメッセージが表示されます。広げてみると、一見ランダムな数字と文字による長くて薄い羊皮紙に見えます。
2.現代の暗号化技術
現代の暗号化技術は、暗号化されたデータを守るためにますます洗練されてきています。鍵のサイズが大きければ大きいほど、暗号化された文書を解読することができる可能性が高くなります。
高レベルの暗号化技術を破ろうとしてくる存在についてはあまり考えたくはありませんが、個人情報などのきわめて重要な情報の管理には、注意を払わなければなりません。
現代で広く用いられている電子暗号化システムは、コンピュータが導入されるようになった1970年代に始まりました。
Data Encryption Standard(データ暗号化標準)は、産業界と政府による使用を目的として、年代中頃にアメリカ政府によって設計、標準化されました。
データ暗号化標準は、当時大きな問題を抱えていました。1970年代から1990年代まで、暗号解析を行う命令の大きさに応じて増やされるコンピュータの速度が、このシステムにとっての脅威として考えられるようになってきました。
のちに登場した、Advanced Encryption Standardは、最小容量のキーを使って、インターネット通信を保護するために用いられる、最も人気のある暗号法です。
米国商務省標準技術局が次世代の暗号標準として、Advanced Encryption Standard候補となる暗号方式を全世界から公募し、最終的に2000年10月に、ベルギーの暗号開発者Joan Daemen氏とVincent Rijmen氏が開発した「Rijndael>」という方式が選ばれました。
最近、量子暗号という言葉を耳にする機会が増えました。量子コンピュータの技術はやがて現代社会の基盤を揺るがすことになるでしょう。
学術研究というよりも、国家戦略のレベルになります。ちょうど冷戦が終結した頃で、核による抑止力から、情報通信技術でいかに優位に立つかということが国家の存亡を左右する時代になっていました。
特に、最近欧米では国家レベルでの量子暗号研究が始まりました。
もしも現代の暗号を解読する新たな技術があるとすれば、どの国よりも先に量子コンピュータを持とう、あるいはより安全性の高い量子暗号技術を、欧米は取得し、導入しようとしています。
3. 暗号化が社会を守る
暗号化がもたらしたものは何でしょうか。「オンライン上で隠すものなんて何もないのに、なぜ面倒な暗号化技術を利用しなければならないの?」と思う人もいるかもしれません。
まず、トラブルに巻き込まれる可能性が減るでしょう。
暗号化されたメッセージを送受信するプロセスは、気が遠くなるほど複雑な方程式を必要としますが、機械はいつも正常に作用しその役割を果たします。
たとえば、チャットに関係している人々以外はメッセージ内容を見ることができません。サービス提供会社であっても同様です。
”Whatsapp”のようなSNSサービスを通じて送られるメッセージは、端から端まで自動的に暗号化されます。
開きっぱなしの本のように、わたしたちは日常で大切な情報を危険にさらしているということを認識しておくべきです。
もしもwebの閲覧・検索履歴や電子メール、インスタントメッセージの中に、誰に公開しても差支えないものばかりでしたら、何も対策する必要はないでしょう。
ですが、実際わたしたちのほとんどは秘密を抱えています。なかでも個人情報は重要な秘密です。
インターネットは、地球という大きな観点から見て、あらゆる人々とアイデアを共有できるより良い場所を提供してくれています。
世界中の人々と誰でも簡単につながることができるところが長所であり、また恐ろしいところでもあります。ネットワークのオープンソースは諸刃の剣と言えるでしょう。
世界とつながるための便利なツールであるのと同時に、情報が漏れてしまうのもあっという間です。
そして、個人情報を安全に管理していくためには、わたしたちの利益を侵害されないためのルールを整えていくことが必要になります。
政府は安全保障を装いながら、わたしたちの個人情報を知る権利を持ち、それを利用します。また、犯罪者はそこから利益を得ることを狙っています。情報の取り扱いには、慎重にならなければなりません。
暗号化技術は、安全かつ確実に、コミュニケーションを確保することができる最良の方法であり、わたしたちの個人情報が、間違った人の手に渡らないように、守ってくれるものです。
高いセキュリティ機能を持ち、誰にも監視されないSNSが今の時代には必要とされているでしょう。
弊社で2017年に発表予定のメッセンジャーアプリ”Wrapp”は、ブロックチェーンによる高いセキュリティと、中央サーバを介在しないP2P(第三者に情報が流出するリスクがない)、契約不履行を防止できるスマートコントラクトによって守られており、安心して使えるメッセンジャーアプリを目指しています。
参考Webサイト(References)
How does Encryption Work? (and Why it’s So Important)
https://safeandsavvy.f-secure.com/2016/09/01/how-does-encryption-work-and-why-its-so-important/
How Does Encryption Work, and Is It Really Safe?