最近凄く夢中になって集めている漫画があります。

高橋葉介さんの作品たちです。


怖くて奇妙で、時々グロテスク。でもどこかとっても切なくて、妖艶でエロチシズム漂う。

そんなお話を描かれる方です。

わたしは怖がりのくせに、不思議で奇妙なお話や怪談話が好きなので、凄く楽しめます。


この方代表作は2つあって、“夢幻紳士”と“学校怪談”。

どちらも主人公がとにかく魅力的で、引き込まれます。

その中でも今回は、“夢幻紳士”を紹介しますね。



夢幻紳士 怪奇篇

夢幻紳士 怪奇篇 / 高橋葉介

(画像にアマゾンのリンク)


主人公の夢幻魔実也が、探偵のように依頼を受けたり旅先で出会ったりしながら、怪奇事件を解決へ導いてゆくお話です。

このシリーズは、●●篇という感じで何篇も出てるのですが、

少年漫画篇と冒険活劇篇では主人公が少年、その他は青年という風に、掲載雑誌によって主人公の年齢が違います。

これは時間の経過、とするより、わたし個人的には少年も青年も同時期(もしくはパラレルワールドでの)同じ人物で、

定まった年齢のない人なんじゃないかなと思ってます。それくらい浮世離れした不思議な人物なのです。

怪奇事件の元となる得体の知れないものたちを退治、説得する特殊能力があり、人のようで人でない、そんなキャラクター。


高橋さんのタッチは可愛らしさを残しながらも柔らかなフォルムが凄く色っぽくて、特に目が色気に満ちていて大好きです。

主線は筆で描かれていると知って、驚きましたが納得です。あのしゅるっ!とした流れは筆でしか表せません。


ほとんど各話が短編になっていて、1話できちんと事件が解決するので、どのシリーズからも読めます。

で、こないだこの怪奇篇の中に収録されていた“サトリ”というお話を読んで、号泣しました。。。

どれも怖いだけじゃなく、切ない事情や展開が絡んでいて素晴らしいのですが、このお話は特に泣けました。



▼長いですが…あらすじはこうです。(注:ネタバレです)

主人公の魔実也が雪山で道に迷っていると、ポツンとたつ山小屋を見つける。

宿を一晩借りたいと中を訪ねると、囲炉裏の前で、髪を無造作に伸ばして羽織を着た一人の男が座っていて、

「お前が来ることは分かっていた。オレはサトリだ。」と言う。

サトリは、続けて魔実也の事情を最初から知っているかのように、次々に当ててゆく。


実はサトリは、昔から未来を予知する能力があり、以前はこのような離れの山小屋でなく、ちゃんと村に住んでいたらしい。

予知能力を知った村の人々は、先の天気を当てたり、良い猟場を教えたりしてくれるサトリに感謝し、「神様」として崇め祀った。

しかし、火事や事故、農作物の不作など、村によくないことが起こると、皆はサトリのせいだと言うようになった。

サトリにはただ予知することしか出来ないので、どうすることも出来ないことがあるというのに、

村人は罪をサトリになすりつけ、サトリを迫害し出した。かつて「神様」と呼ばれていたサトリは「鬼の子」と呼ばれるようになった。

迫害を恐れて、今はこんな辺鄙なところにある小屋に隠れ住んでいるのだという。


するとサトリは、「今夜、村人たちがたいまつを持って雪山を越え、この小屋に向かってくる。」と予知する。

「今夜オレを殺しにくるのだ」と、笑みを浮かべて言うサトリに、「なぜ逃げない?」と問う魔実也。

「ここには両親の墓があるんだ。だから出てゆけない。それにオレもただでは殺られぬ。」

サトリがそう言ったとき、少し遠くの方からズズズズズズ…という大きな音が聞こえてきた。

ここへ向かう一本道で、雪崩が起きたのだという。サトリはあらかじめそのことを知っていたが、自分の命を狙っている村人たちには教えなかったのだ。


全滅したかと思った村人一行だったが、一人の若い男が息も絶え絶えに、小屋に向かってくる。

その様子が見えるというサトリ。若い男は、重吉といってサトリが幼少から知っている男だという。

「…あいつになら殺されてもいい」

そう呟いたサトリの顔は、穏やかだが何処か切なそうだった。

そのとき。重吉が小屋に辿り着き、中に入ってきた。

「サトリいいいいいいーーー!!」叫びながら鉈を持った腕を振り上げた重吉だったが、

雪崩によって体力を奪われており、力尽きそのまま倒れこんでしまった。


何故か心配そうな顔で重吉を覗き込むサトリに、魔実也は重吉の服を脱がせて寝かせようという。

「体が冷えきっている。サトリ、裸になって重吉を温めてやれ」

驚くサトリ。サトリは女だったのだ。男のような無造作な恰好をして男のように振舞っていたが、それを魔実也はお見通しだった。

そして、サトリの重吉に対する思いさえも。

サトリが隣りの部屋で支度をするその間に、魔実也は朦朧とする重吉に話しかける。

「今 ここに女が来る。その女はお前に肌を許すだろう。

抱いてやれ。愛してやれ。その女もお前を愛している。いいな?」

無言のままの重吉。天井を仰いだままだ。

支度を終え、襦袢姿で戻ってくるサトリ。

「マキが足りんな。近くの林で…いや、なるべく遠くの林で集めてこよう。少し時間がかかるぞ」

そうサトリに告げて小屋を出る魔実也。


気恥ずかしそうにそろりと襦袢を脱ぎ全裸になるサトリ。

ゆっくりと重吉の布団に滑り込む。

「重吉…寒いかい。温めてやるよ、オレの体で」

涙をこぼしながら重吉の上に覆いかぶさるサトリ。

「お前もオレを殺しに来たんだろ。…でもいいよ。温めてやるよ。」

重吉の頬に自分の頬をすり寄せて泣くサトリ。

「オレ、ずっと前からおまえが好きだった。お前も村の奴らと同じようにオレを化け物みたいに見てたけど…」

「それでもやっぱり好きだった」

「重吉。今夜はもう一度雪崩があるよ。今度はこの小屋もつぶれるよ」

「オレ、分かってたけど…でもおまえと一緒に死のうと思って逃げなかった」

重吉の頭を優しく撫でてやるサトリ。目を覚ましてサトリの顔を見ている重吉。

突然サトリに抱きつく重吉。驚くサトリ。

「抱いてくれるのかい?嬉しいよオレ」

満面の笑みで涙をぼろぼろこぼすサトリ、重吉にぎゅっと抱きつき返す。

「重吉…もっと強く抱いとくれ」



マキを集め拾う魔実也。小屋の方向からドドドドドドという音がする。気付いて小屋に走って戻る魔実也。

「サトリーーーーー!!!」

小屋はすっかり雪崩に押しつぶされていた。呆然と黙って立ち尽くす魔実也。表情は見えない。





はい、長くてごめんなさい凹

ずっと孤独に耐えていたサトリが、最期の最期にずっと愛しかった男の人に抱かれ、笑顔で涙を流すシーンはほんと泣けました…ううー切ない…

魔実也は人に暗示をかける能力を持っているので、うなされている重吉に暗示をかけたのかもしれません。

倒れる寸前まで鉈を振りかざしていた訳ですから、多分暗示によってサトリを抱いたのでしょうね。

もしそうだとしても、やっぱり切ないなあ~~~!!!

高橋さんの作品は、希望の筋が見えながらも、悲しく切ないラストを迎える話が印象的です。

勿論ハッピーエンドや勧善懲悪な話もあるんですが、切ない話がやっぱり胸に響きます。

本当におすすめー!!