喧嘩しました。

…と言いつつ、結論から言うと、その日に仲直りしましたが。



彼女とは再来月で一年。

長いような短いような不思議な感じなのですが。

そんな付き合いの歴史で、はじめて、喧嘩らしい喧嘩をしました。

今の今まで、別れる別れないっていうまで発展したことがなくて。

話し合いはあっても、喧嘩ってほぼなかったんです。


それがこの間。

ほんの些細なやり取りが、いつの間にか喧嘩に。

わたしは全然喧嘩してる気じゃなかったので、びっくり。だったんですが。


ネカフェでまったりしてたとき、彼女がくっついてきてね。

彼女があんまり露骨にチュー音とか立てるから、周りが気になって…

ついドアの隙間とかキョドキョド見てたんですね。

そしたら彼女がブーッてふくれて部屋の隅へ。

彼女は日頃から結構頻繁に、軽いノリで「もうーっ」てスネちゃうことがあるんですね。

だから、今回も同じノリだと思って、「どしたのー」って言ってくっついていったら、

目が本気で怒ってるの。

で、話しかけてもすっごい仏頂面で、低い声でしか返事してくれないの。

わたしは、自分では悪いことしたって自覚がなくって、「?」「?」っていう状態。


彼女曰く、好きなら周りなんて気にならないでしょって。

関係なくイチャつきたいのに、わたしが周りを気にしてるのが、彼女は悲しかったらしい。

彼女はもう好きになったら何処でもくっついていたい人で。

場所も人目も気にしないというの。

でもね、わたしはどうしても、他人に迷惑をかけるのが嫌いで。

二人が幸せならそれでいい、っていうのが苦手なんだ。

人目も憚らずイチャイチャするカップル…にはなれない。

これは、女同士だからじゃない。男女でも同じこと。

居合わせた人が、どう思うか、迷惑に感じないかっていうのを考えてしまう。

こう書くと良い子ぶっているように聞こえるかもしれないけど、

これはごく当たり前のことだって思って今まで生きてきたから、

彼女のように自由奔放にはなれない。


わたしは、周りに壁を隔ててすぐ他人が居る場所で、しかも話し声さえ筒抜けなところで、

イチャイチャするのが恥ずかしい、って言ってるだけなのに、

彼女は、自分とイチャイチャすること、果ては付き合っていることが恥ずかしいんじゃないかって言い出した。

わたしは場所のことを言っているんであって、そんなことは言ってないよ。

そう説明したけど、ずっとスネていて。

「そんなに嫌だったら、別れたら良いんとちがうん?」

「最初から無理して付き合わなかったら良かったんちがうん?って思っただけ」

そんな言葉が彼女の口から出てきた。

驚きだった。

わたしにはどうしても、さっきまでのやり取りが、どうしてそんな風に発展するのか理解出来ない。


帰り道もずっと冷たい顔をされて。

なんでそんなに怒るのか分からないって言ったら、分からないならいいよ、と突き返してくる。

自分が悪いとは思わなかったので、謝らなかった。どうにも腑に落ちなかったから。

ホームで電車を待っているときもずっと、彼女は冷たかった。

こんなに彼女の冷たい態度をとられたのは初めてで、こんな彼女を見たことがなかった。

場所を選ぶことがそんなにいけないことなのか…?

「で、どうしたいの?」

そういう風に、聞かれて、わたしはなんで別れ話になるか分からない、気持ちの整理がつかない、って答えた。

なんで急に冷たくなったのかすらまだ理解出来てない。

こんなんで別れるなんて、そんなものだったんだろうか??

わたしの頭の上に、はてなが積もる。


彼女は今まで、わたしが周りを気にするたびに、辛かったという。

わたしが、自分じゃなくて周りを見るから嫌だったという。

自分が拒絶されているんじゃないかって、

実は好きじゃないのに無理やり付き合ってるんじゃないかっていう気になるんだって、打ち明けた。

好きだったら、誰が見てようと、誰に気付かれようと、どこでもイチャイチャ出来ると、言う。

それはあくまで彼女の感性であって、わたしの感性とは違う。

それを、ずっと自分は我慢してたっていうんだ。

わたしがちょっと腹が立ったのは、彼女が自分だけが耐えてたみたいな言い方をしたから。


考え方が違うのは当たり前。

それを、急に「もう我慢するのしんどい」なんて…

そんなこと一度も話してくれなかったじゃない。

話してくれないとそんなの分かる訳ない。

分かってくれない、って急に言われても…。。。


彼女の言い分は、わたしが人の目を気にするのが、場所云々でなく、彼女自身を拒絶している、本当は好きじゃないんじゃないか、っていう疑問と戦っていたということ。

そんなことない、わたしはただ、場所が落ち着かないし恥ずかしいんだよ、って必死で伝えた。


そしたら彼女は、「じゃあ今すぐキスしてよ」「出来ないでしょ」って。

人通りのまばらな夜のホーム。

わたしは、彼女の固まった思考を解くために、その申し出を受け入れた。

その途端。

彼女の顔が凍りついた。目をまるく見開いて。

彼女の目から突然涙がこぼれて、堰を切ったようにわたしの胸にしがみついて嗚咽をもらした。

子供みたいにわたしにぎゅっとしがみつく彼女と、さっきまでわたしに冷たく当たってきた彼女はまるで別人のようだ。

「ごめんね、ごめんね」彼女はずっと謝り続けた。


普段はしっかり者の彼女なりに、わたしに嫌われたらどうしよう、

別れられたらどうしよう、と不安でたまらなかったらしい。

人目を気にするわたしが、キスすると思っていなかった彼女は、凄く嬉しかったらしい。

やっとわたしの言うことが信じられたようで、ぎゅっとわたしから離れなくなって。

渋々、ギリギリの電車に乗って帰っていった。


今ではすっかり元通り、仲直りしているんだけど。

まだわたしも充分大人じゃないから、分からないのかなとも思うんだけど、

彼女のあのときの、冷たい態度がまだ少し気にかかる。

あんなに冷たくされたのが初めてだったから。

でも、後で分かったのは、不安な気持ちの裏返しで強がっていたようだったってこと。

でも急にスネたり元に戻ったりで、なんだか目まぐるしくて少し面食らったのも事実…。

これからは、ちゃんと話し合おうねっていうことになって解決したんだけど。ね。

女同士で付き合うっていうだけでも不安に駆られることが多いんだから、

彼女もわたしが心からちゃんと好いてくれてるか、ずっと不安が積み重なっていたんだよね。

不安にさせちゃうくらい伝わっていなかったのかなと思うと、安心させてあげなきゃ、と思った。

ひとつ前の記事のような問題もあるし、彼女に触れようとしないことも大きな不安の種になったみたいだし。



当たり前のことも、言わなきゃ伝わらない。

違う人間だから、物事を処理する思考回路が違うんだから。そこから辿り着く結論も違う。

「こう思ってくれるだろうからきっと大丈夫」

ではなくて、

「どう思っているの??」ってちゃんと確かめなきゃ。

そして明確に自分の考えは伝えなきゃなって思った。

そんな些細な行き違い・誤解で喧嘩するなんて、別れるなんて馬鹿らしい。

当たり前ながら、意思確認って一番大切なのだけど、

その当たり前のことが、案外きちんと出来てなかったことに気付いたよ~。