昨日の記事から連なって、今日は過去の恋愛をひとつ。振り返ろうと思う。

彼女に聞かれると何となく嫌で話さないんだけど。

自分の内側での整理の為に。

あんまり奥へ押し込めて仕舞ったら、可哀相だろう。

過去の彼と自分自身に失礼だろう。






彼とはバイト先で出会い、

年は同い年だった。

がっしりした背中を持った、気優しいひとだった。

共通の趣味は一切なかった。

好みも何一つ似ていなかった。

それでも、懸命にわたしの好きな映画や音楽に興味を示して、

こっそりレンタルして見てくれたりしていた。

わたしの悩みを、黙っていつも聞いてくれた。

会話の種を、いつもお互いに探り合っていた。


すこしずつ、気付いた。

気付くのが遅かった。

わたしは。

彼というひとでなく、

彼がわたしを好きという事実と恋をしている?


五分五分とはいかなくとも、付き合いを続けてゆけば、

彼の想いには敵わなくても、気持ちを返してゆけると。信じて交際を続けた。

でも。

駄目だった。

彼は変わらず愛してくれた。

身体を重ねても、変化はなかった。

むしろ一層、気持ちを返せないんだということが、自分の中で浮き彫りになった。

身体は心とひとつだと、改めて知った。

想われること事態が、次第に苦痛になってきた。

幸せなことなのに。この世でこんなに、わたしを好きでいてくれるひとが在る。

このままの心持ちで、お付き合いし続けることは、

彼に無礼過ぎる。やりきれなくなった。

甘すぎる覚悟で、彼の気持ちを受け入れたことを後悔した。

身勝手な自分を、何度も心中で罵った。

彼は、薄々気付いていた。

何故か段々と、自分の思想と噛み合わない彼の言葉ひとつひとつが苦痛になってきた。

こんなはずじゃなかった。

自分でも、この辺の気持ちの推移が理解できない。記憶が朧だ。


連絡も余り頻繁にしなくなっていった。

ある日、彼が言った。


「俺達って付き合ってるんよな?」


言葉が胸に深く突き刺さった。

その目に見えない衝撃が、脳にひとつの決断を下させる。



後日、彼に別れを告げた。

泣きじゃくっている自分が居た。

最後の最後なのに、優しく宥めてくれる彼が居た。

その優しさが切なくて、そんな彼に別れを突きつけた冷酷な自分が許せなくって、

また一層泣いた。

ここには書きたくないから、勝手ながら伏せさせてもらうけれど、

色々と話し合っていた途中で、彼が、わたしの神経を逆撫でする一言を言った。

彼は別段、わたしを傷つけたいという考えもなくその台詞を放ったと思う。

実際、わたしを誹謗中傷するような厳しい言葉ではない。

だけど、その時のわたしは、彼のその一言を聞いたとき、

嫌悪感と言ってもいい感情がぞぞぞと身体を走った。

つい、


「そういう言い方が嫌なの」


と口走ってしまった。

彼はしばらく黙って。


「分かった」


と短く言った。

そして。


「Q(仮)ちゃんが、俺を好きじゃないってことは分かったよ」


「今までありがとう」


そう言った。


お礼を言うのは、わたしの方だよ。

こんなにも、酷いことを。

明日からあなたに、あなたの恋人(わたしだけど)を失わせた毎日を始めさせるんだよ。

あんなにもあなたが、心を尽くした恋人(わたしだけど)はもう姿すら前に見せないんだよ。

その状況が、あなたにどれほどの悲しみを、失望を降らせるの。


そこでまたどうしようもない感情が涙腺をくすぐって、わたしは嗚咽を漏らして泣いた。


「泣かないで」


どうしてそんなに優しいの。

どうしてこんなに非道いことを言われて、わたしにかける言葉をまだ持ち合わせているの。


「ごめんね」


「ごめんね」


「ごめんね」


「ごめんね」


「ごめんね」


何度も何度も謝るしか、わたしには出来なかった。


もう二度と、誰かにあんな、辛い思いはさせるもんか。

そう誓った。




月日は流れて。

今、彼女と幸せな恋愛をしている。

誇らしいくらい、全身全霊注ぎ込んだ恋愛。

まさかわたしが女性とお付き合いをしているとは、彼は夢にも思わないだろうな。

ただひとつ。

ただひとつ願うことは、彼も同じく、

素敵な相手に出会い、幸せな恋愛をしていますように。ということだけ。




彼のことをふいに思い出した夜、わたしは人知れず涙を一筋流すのです。



本当にごめんね。


ありがとう。


お元気で。