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[渋谷Bunkamura ル・シネマ]
 
 
 
衝撃の結末にしばらく席を立てなかった・・・素晴らしいの一言だ!
 
カンヌをはじめヨーロッパの映画祭で数々の賞を受賞したデンマーク映画。主演は「007 カジノロワイアル」で悪役を務め知名度を上げたマッツ・ミケルセン。監督は「セレブレーション」「光のほうへ」のトマス・ヴィンター・ベア。
 
離婚と失業の苦難を乗り越え、ようやく平穏な生活を取り戻していた幼稚園教師・ルーカス(マッツ・ミケルセン)。そんなある日、親友テオの娘クララの作り話が元で変質者の烙印を押されてしまう。あるのはクララの証言のみ。無実を証明できる手立てはどこにもなく、町の住人たちはおろか、唯一無二の親友だったテオまでもが、幼いクララの言葉を信じて疑わない。噂はたちまち町中に広がり仕事も信用も失い孤立する。ルーカスに向けられる憎悪と敵意も次第にエスカレートしてゆき、追い詰められたルーカスは決意を胸にクリスマス・イブを迎える。
 
デンマークの諺に「子供と酔っぱらいは嘘をつかない」というのがあるそうだ。酔っぱらいはともかく、純真な子供は正直で本当のことしか言わないという固定観念があるのだろう。日本ではまったく逆のような気もするが、デンマークでは誰もがそう信じて疑わないという習性が根付いているのだ。幼い子供に対する性的虐待はどこの国でも重犯罪とされるし、被害を受けた周囲の反応が過剰になるのも当然である。しかしここで描かれるのはあくまでも冤罪で、例えば満員電車の中で痴漢と間違われ弾圧される罪なき人たちと同じだ。
 
無実の主人公が幼い子供の出来心から生まれた嘘により、社会的に抹殺される過程を恐ろしくもリアルに描いている。監督のトマス・ヴィンター・ベアはそれらの過程を非常に上手く描いており、その重苦しいテーマを深く観客の心に沁み込ませることに成功している。冤罪と解っている観客は暴徒と化す住民たちに抑えられない怒りを覚え、生々しい人間の愚かさを完璧な造形で見せつけられるのだ。
 
なんと言っても主演のマッツ・ミケルセンが素晴らしい。カンヌ映画祭で主演男優賞を獲得したその渾身の演技は観る者の心を強烈に揺さぶるものだった。物語の核となる子役の少女しかり、画面に映るすべての役者が完璧な表情と演技でこちらを刺激する。これらトマス・ヴィンター・ベア監督の演出力には脱帽するしかない。普通の映画なら描くべきところを省いているなど、多少の違和感を感じなくもないが、この物語の主題は損なわれていないので僕は気にならなかった。
 
平穏に終わるのかと思ったその瞬間、衝撃的なラストシーンが訪れる。そこに何を感じるかは観た者それぞれの解釈になるのだろう。ただひとつ、人間の憎悪は想像以上に深いものであると感じる。今のところ、今年観た映画では一番心に突き刺さる物語であった。必見です!
 
                                                                [90点]
 
 
 
 
 
 
 
 
今でも予告編を観るだけで怒りと涙が込み上げる・・・