『地方から中央へ…。』
元祖と言えばアイドルホース《ハイセイコー》
笠松の怪物と言えば《オグリキャップ》
地味で遅咲きの実力馬と言えば《イナリワン》
その地味と言われたイナリワンよりも地味な馬がいる。
血統・産まれ・生い立ち…何においても地味

デビューは南関東の浦和である。初出走も遅く、地方では珍しい4歳(現3歳)の初夏であった。
遅めのデビューから破竹の5連勝

年が明けた初戦で初黒星(1/2差の2着)となるが、そこから再び3連勝を飾った。
それを手土産に中央へと移籍した。その馬は・・・
《トロットサンダー》
父・ダイナコスモス
母・ラセーヌワンダ
母父・テスコボーイ
兄や姉も地方競馬で競争生活を過ごしている。
父ダイナコスモス自身は【皐月賞】の勲章はあるものの、代表産駒といえば《ワンモアラブウエイ》が【カブトヤマ記念】や【小倉大賞典】を勝っただけ

華やかさなどはなく、父親も『地味…。』そのものであった。
中央移籍した初戦は2着に沈んだものの、地道に走りいつの間にかオープン馬にまでなっていた。
だが…トロットサンダーが残した数字を見ると、その優秀さ・強さに驚かされる。
生涯成績は22戦15勝…敗因はハッキリしている。
その中でもマイル戦は8戦8勝
応援している者は泣いて喜ぶデータがあり、1番人気になったレースは全て優勝している(中央のみだが)。こんな期待に応える馬は他にみたことがない。今の政治家達に見習ってほしいものだ


最初のGⅠ制覇となった【マイルСS】は大波乱が巻き起った

トロットサンダー自身は4番人気であったが、追い込み馬のトロットサンダーに着いて来ていた16番人気の《メイショウテゾロ》が2着に入り…馬連104390円の大万馬券を叩きだした

そして…特に圧巻だったのが、【安田記念】であろう。
ここでも魅せた豪脚『鬼脚
』

道中は12番手で待機

直線に入るなり一気にスパート

内で粘る《タイキブリザード》と巨漢《ヒシアケボノ》を交わし去り、叩きあいの末

ハナ差過ぎた所がゴール板




ハナ差で1着を勝ち取った『あの鬼脚はマイル戦の為に生まれてきた馬が、マイル戦を勝つ為に披露した計算通りの脚
』と表現すべきものだった。

しかし…この安田記念が最後になるとは誰が予想したでしょう

馬主の名義貸し問題が発覚…。関係のないトロットサンダーは引退へと追いやられてしまった

トロットサンダーは地味と呼ばれたうえに最後も不運な競争馬だったかもしれない…が、1番人気では必ず勝ってくれた名馬をファンは、あの『鬼脚
』と共に脳裏に焼き付いているのではないでしょうか…。
