塚越寛著 リストラなしの「年輪経営」より

 

伊那食品工業は1958年の創業以来、2005年までの48年間、ほぼ増収増益、無借金経営を実現している。
もちろん会社なので、山あり谷ありだった。しかし、いい時も悪い時も無理をせず、低成長を志し、自然体の経営を目指してきた。


この経営のやり方を「年輪経営」と呼んでいる。木の年輪のように少しずつではあるが、前年より確実に成長していく。
年輪経営にとって、最大の敵は「急成長」。

 

伊那食品工業でも何回か大手スーパーから「商品を全国展開しないか」というお誘いがあった。「身の丈に合わない急成長は後々つまずきの元になる」と判断し断っていた。
しかし、2005年に寒天ブームが起こった。

いつもなら無理をするような増産には踏み切らないが、寒天は健康にいいということが広まり、お年寄りや福祉・医療関係者から「ぜひ使いたいので頼む」とお願いされ、思い切って増産に取り組んだ。

その結果、売上は前年比40%増となった。

しかし、寒天ブームが一段落下2006年からは売り上げが減少。利益も前年を下回り、この後遺症から脱するのに数年かかった。
この寒天ブームは、「年輪経営」の正しさを教えてくれるものになった。