いよいよ瀬藤弁護士が裁判官と対峙する日がやってきました。

 

昨晩、2室のアメリカ人クリントンがやっと保釈されて出ていきました。外国人は色々と手続きが大変だったようです。特に身元引受人の選定が。ずっと保釈の手続きをしていたので、東京拘置所に移送されなかったのでしょう。

 

クリントン(黄色い箱を持って笑顔で)「先生!またね!Facebookで友達申請するから、よろしくね!」

 

保釈されるときって、警察官が黄色い大きな箱をもって迎えにくるんです。黄色い箱は、牢屋の外にある私物ロッカーのなかの荷物をまとめるための箱です。黄色い箱をもって歩いていく被疑者が牢屋の前を通ると歓声があがります。そんなシーンを何回見たことか。気が付くと私も留置場の7番目の古株になっていました(留置場には20人くらいいます)。このまま黄色い箱を見ることなく、東京拘置所に移送されるのでしょう。

 

親分のいなくなった朝の1室はガランとしていて、寒い感じがします。

 

親分が決してやらせてくれなかったトイレ掃除を、今日は私がしました。親分がしていたように、ぞうきんを直接便器につっこんで、水を流しながら素手で磨きました。

 

保釈の可能性は1%未満。

 

弁護士の瀬藤先生にも親分にもそう言われています。

 

これまで、出れるかもって本気で期待したのは

 

・取り調べで、逮捕理由がありえないと認められてすぐ出れるだろう

・初めて検察に行ったとき、釈放って言ってもらえるかも

・初めて裁判所に勾留質問で行ったとき、中立な立場の裁判官は分かってくれるだろう

・交流満期10日目のとき、取り調べもされないし、何の証拠もないなら出れるだろう

・交流満期20日目のとき、不起訴になって出れるだろう

 

すべて期待が外れ、その度に発狂する思いを経験してきました。

 

今回も無理でしょう。分かっているんです。もう東京拘置所へ移送される覚悟は決めました。

 

とは、思っていても、どうしても期待してしまいます。

 

今までは、釈放されるか5分5分だと言われていたのに、今回は1%未満だと断言されている。期待してもダメだ。

 

いくら自分に言い聞かせても、時計ばかり気になってしまい、翻訳の仕事に身が入りません。

 

裁判所が閉まる17時まではチャンスがある気がして、時計ばかり見てしまいます。

 

動悸がおさまらず、呼吸も苦しくなってきました。ストレスに耐えられなくなり、デパスをもらい昼寝をしました。

 

小池「先生!晩メシ!」

 

小池くんに起こされました。晩メシということは18時。ってことは裁判所が終わってる。最後の望みをかけて、牢屋の鉄格子に顔をつけて全力で頑張ればかろうじて見える時計を見る。18時。間違いない。

 

あーあ。やっぱダメだったか。

 

諦めて晩メシを食べる。期待はしてしまったけど、1%未満の確率という頭があったからか、今回はメシが食えました。

 

しかもお気に入りの「サバの塩焼き」でした。ごはんにはもちろんソースをかけて。

 

メシを食い終わって、18:15分くらい。昼間たくさん寝ちゃったから、就寝時間まで、ひと仕事しよう。

 

1時間くらい仕事をしたでしょうか、突然、警察官が牢屋の前に並んで、

 

「18番(私)!そのまま荷物をまとめて前に来なさい!」

 

え?え?え?

 

黄色い箱を持ってる!!!!

 

小池「先生!お別れのときが来たようですね!」

 

私「何でこんな時間なんですか?」

 

警察官「ごめんね!裁判所からのFAXに気が付いてなくて、瀬藤先生から電話が来て確認したw」←ガチ実話

警察官「もうご家族が迎えに来てるよw」

 

手続きを終えて、警察署から出ると妻と子供たちが出迎えてくれました。

 

荷物を車に乗せて、家族を先に返し、私は瀬藤先生の事務所へ向かいます。

 

久しぶりに外を、自分の意志で自由に歩けます。警察署から駅まで15分くらいあるのですが、車に乗らず歩きました。

 

すべてがなつかしい光景です。

 

途中で缶コーヒーを買いました。久しぶりに使うお金。うまい!

一気に飲んでしまって、すぐにおかわり。2本目も一気に飲んでしまい、さらにおかわり。3本目はやっと落ち着いて飲むことができました。

 

久しぶりに乗る電車。総武線と地下鉄を乗り継いで、瀬藤先生の事務所最寄りの日比谷駅へ向かいます。

 

電車ってすごく揺れるんです。気が付かなかった。ずっと揺れのない環境にいたので、電車の揺れの激しさに驚きましたw

 

電車で座ったときに「隣の席の人は、まさか私が留置場から出てきたばっかりだと思わないだろうなー」って考えていたのを妙に覚えています。世の中って色んな事情を持った人がこうやって集まっているんだよなぁ、なんて、不思議なことを考えていました。だからなんなんでしょうw

 

瀬藤先生の事務所の近所のコンビニで、また缶コーヒーを買って飲みました。もう、缶コーヒーは普通の味にもどっていました。

 

瀬藤「おかえりなさい!」

 

私「ありがとうございました。よく保釈を通しましたね」

 

瀬藤「ねばりました。ほんとに自信なかったけど、ねばりました!」

(よっぽど旅行に行きたかったんだなぁw)

(よっぽど小菅に行きたくなかったんだなぁw)

 

瀬藤「でも、裁判官も、この事件には何か違和感を感じたようで、検察の意見にも首をかしげていました。やっぱり、意味が分からない事件なんですよ。」

 

瀬藤「そして、いい情報も偶然手に入れました。これを見てください。丸野検事が保釈に関して、裁判官に提出した意見書です」

 

【意見書】

保釈は不相応と判断する。

理由

本件は、映像等の物的証拠が皆無であり、目撃者もいない。被害者本人の証言のみで立証されているものであり、被疑者が保釈されることにより、被疑者が周囲に圧力をかけ、その被害者本人の証言を揺るがすべく行動に至る可能性を排除することはできない。

 

瀬藤「つまり、ほんとに証拠は何もないんですよ。ますます、こんなので、何で逮捕され、こんなに長期にわたり勾留されたのかが理解できなくなりましたが」

瀬藤「これは裁判で戦えると思います。裁判官は検察と違って、公平の立場で判断しますから。公務員なので、若干、検察寄りですけど」

 

瀬藤「裁判まであと4週間です。1週間、お互いに休んで(旅行に行くんでしょ?w)、裁判資料を弁護士の権限で早めに開示してもらいますから、それを見ながら、3週間、しっかり準備しましょう!」

 

私「親分の言ってた、敵の弾を見てから判断しろ、ってやつですね」

 

弁護士事務所をあとにして、東京駅から無駄に新幹線に乗って帰宅しました。

 

近距離の1駅なんでほんと無駄なんですが、人混みが苦手になってしまって、乗りたかったんです。しかもグリーン車w

 

グリーン車の車掌さん「いらっしゃいませ」

 

久しぶりに人に丁寧に対応され、頭まで下げられました。感動です。

 

タクシーを無駄に使って、久しぶりの帰宅。事件は一切報道されなかったので、近所の人も何も知りません。堂々と帰宅できます。犬がまとわりついてきて大変でしたw

 

まずは、風呂。ボディソープの香りがきつくて驚きます。ボディソープってこんなに香りが強いものだと知らなかったですw しかも泡立つしw

時間を気にするクセがついていて、手際よく、即効で洗い終わります。「落ち着く」、「ゆったりする」ということを忘れてしまっています。

 

そして、久しぶりのビール。しばらく飲んでなかったので、うまいこと。でも、胃が小さくなっているようで350缶2缶で限界でした。

 

そして、ベッド。やわらかすぎて気持ち悪い。留置場は寝るときも電気を消さないので、暗い中で寝るなんて不安で仕方ないw

 

何よりも、ロヒプノールがない!どうやって眠ればいいのか分からない。

 

結局、一睡もしないまま朝を迎えることになります。眠り方を忘れちゃったんです。

 

しばらくリハビリが必要なようです。