五輪銅メダル&世界女王の先へ 坂本花織、新たな振付師と目指す『今までと違う』姿
フィギュアスケート『ジャパンオープン』に出場、今シーズンの戦いに見える変化
フィギュアスケートの国際大会『木下グループカップ Japan Open2022』(ジャパンオープン)が、10月8日にさいたまスーパーアリーナで開催される。3年ぶりに日本、北米、欧州の3地域に分かれ、アマチュアとプロの男女混合チームによる対抗戦が復活。各選手のフリースケーティングの合計点をチームの総合点とする団体戦形式で順位を決める
日本からは坂本花織(シスメックス)、紀平梨花(トヨタ自動車)、宇野昌磨(トヨタ自動車)、鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)の4人が出場予定だ。本格的なフィギュアシーズンのスタートに向けて、どんな演技を見せるのか注目が集まるなか、『THE ANSWER』では今大会に出場するトップスケーターたちの今季に懸ける想いを紹介。今回は今年2月の北京五輪女子シングルで銅メダルを獲得し、3月の世界選手権で優勝した坂本花織が、キャリア最高のシーズンを経て取り組む新たな挑戦に注目した
世界女王として戻ってきた4年ぶりのジャパンオープン。『個人競技なので、チーム戦っていうのが滅多にないので、こういう特別な場面に自分が参戦できることはすごく嬉しいことだし、すごい楽しみにしています』と、坂本はいつもと変わらない柔らかな表情で抱負を語った
昨シーズンは自身にとって、キャリア最高と言える1年を過ごした。昨年11月のNHK杯で優勝すると、12月の全日本選手権も制して北京五輪出場権を獲得。2大会連続の出場となった五輪では、ロシア勢が表彰台を独占するとも言われていたなかで自己ベストを更新する演技を披露して3位に入り、日本女子4人目のメダリストとなった。さらに今年3月の世界選手権では、ウクライナ侵攻によってロシア勢が不参加となり、優勝の本命と目されたなかでしっかりと結果を残し、世界女王の座に就いている
そんな充実の昨季について、坂本は8月のインタビューで『去年(昨シーズン)までの結果はもう去年までの結果なので、今年にそういう気持ちを持ち越すことはなく、一から仕切り直して今シーズンに挑みたいので、新しい気持ちでここから戦えたらなと思っています』と振り返った上で、スケーターとしての“変化”について次のように語っている
『今まではやっぱりどうしてもジャンプを跳ぶために、結構プログラム中、大半はジャンプのことしか考えていなかったんですけど、まず意識すること自体ができていなかったので、そこができただけ成長かなとは思います』
新たな振付師との挑戦から得る刺激
もっとも、疲れてくると『乱暴になっちゃうので、手を振り回して踊っているみたいに見えちゃう』と笑うが、表現の部分での進化を目指す姿勢は、今季から振付師を変更したことにも表れている
ジャパンオープンでも披露されるフリー『Elastic Heart』の振り付けを担当したのは、カナダ出身のマリー=フランス・デュブレイユ氏。『私のできる技で一番よく見えるものを見つけ出していって、一緒に「これどう?」「あれどう?」みたいな感じで作り出していく感じが今までと違う』と、坂本は新たな挑戦に刺激を受けながら試行錯誤を続けているようだ
『呼吸を意識してやらないとずっと止めたままになっちゃう癖もあるし、止めたままだとやっぱり動きがぎこちなくなったりとか、魅せられるところで魅せられなくなってしまうので、そこを気をつけてやっていきたいなと思っています』
今季初戦となった9月のロンバルディア杯(イタリア)は2位。自身のことを『いつもスロースターターなので』と笑いながら語る坂本だが、新たな挑戦に踏み出したなかで『最初はやっぱり「うーん」って思う人もいると思うんですけど、後々シーズンを通して、試合を重ねていくごとにだんだん良くなっているねとか、同じ振り付けでもやっぱり出来が変わってくると、見方も変わってくると思うので、そういう変化も一つの楽しみとして見てほしいなと思っています』と、試合を重ねながら完成度を高めていくことへの意欲を示した
10月8日に行われるジャパンオープンの会場は、さいたまスーパーアリーナ。来年3月に開催される世界選手権と同じ舞台で、坂本は世界女王としてさらに進化した姿を見せるのか。『予行練習みたいになればいいな』という坂本の言葉に、“連覇”への静かな闘志が垣間見えた