≪独占≫ネイサン・チェンは秋からイェール大学に復学…引退アリサ・リュウも『大学に行きたいの』 スケーターたちが明かした“最新進路”
4月25日、マンハッタンのミッドタウンでチャリティ団体『フィギュアスケーティング・イン・ハーレム』の25周年記念ガラパーティが行われた
これはシャロン・コーエン氏25年前に創設した、ハーレムとその近辺に住む黒人の子供たちを対象としたチャリティ機関。フィギュアスケートを通して、子供たちに自信をつけさせようという趣旨で始められたが、現在はスケートだけでなく、学習プログラムなども設けられている
このガラは以前はセントラルパークのウォールマンリンクで開催されており、2010年オリンピックチャンピオンのエヴァン・ライサチェックが模範演技を行ったこともある。現在はイベント会場で行われ、25周年となった今年はスポンサー席が一口1000ドルからという豪華なチャリティパーティーが開催された
現在全米を回っている『スターズオンアイス』の出演メンバー、北京オリンピックに出場したアメリカ代表のスケーターたちが、ボランティアとしてこのガラパーティに出席。プログラムに参加している黒人の少女たちや、寄付をした一般のファンたちとの交流につとめた。その合間にネイサン・チェン、アリサ・リュウらが筆者の短い取材に応じてくれた
ネイサン・チェンは『イェール大学にフルタイムで復学』
ネイサン・チェンは会場に到着すると、まずネクタイをつけるために化粧室に閉じこもった。メンバー全員がすでにレッドカーペットの前で写真撮影のために並んでいる中、チェンだけがなかなか出てこない。ついにトレーニング仲間のマライア・ベルが化粧室のドアをノックして『もうみんな待ってるわよ。手伝うから出てきて』と声をかけると、慣れないネクタイをどうにかしめ終わったチェンが登場した
北京で新オリンピックチャンピオンになってから、何か変化は感じるのだろうか
『オリンピックチャンピオンになっても、日々の暮らしは特に変わっていないですよ』と相変わらず早口で、筆者との立ち話に応じたチェン
『日本での公演から戻って、今はこの「スターズオンアイス」の全米ツアーに集中しているので、あまり先のことをゆっくり考えている時間が持てないんです』
来季のことは、まだ未定であることを強調した
『スケート活動の具体的な計画については、まだ考える時間が必要です。わかっているのは、このツアーに最後まで参加すること、そして学校に戻ること』
休学中だったコネチカット州ニューヘヴンにあるイェール大学は、あと2年残っている。秋から再びキャンパスに戻ってフルタイムで復学するという
オリンピックを一区切りにして、来季から大学に戻るのはチェンだけではない。カレン・チェンはコーネル大学、ヴィンセント・ジョウはブラウン大学に復学予定で、いずれも競技活動については未定だという
『今はまだ何も決定せずに、全ての可能性をオープンにしておこうと思っています』とネイサン・チェン
最後に、北京オリンピック直後にニューヨークで朝の人気番組『TODAY』に出演した時のことを聞いた。サプライズで本人のお母さんが登場したが、本当に事前に聞かされていなかったのだろうか?
『あれは本物のサプライズ。だってぼくは彼女がカリフォルニアにいて、テレビを見ているものとばかり思っていたんですから』
引退のアリサ・リュウ16歳は『法律に興味があるんです』
一方、スケート活動を終えることを自分のSNSで発表したアリサ・リュウ。16歳での競技引退は予想外であったが、会場で見かけた彼女は幸せそうな表情で、あちらから笑顔で声をかけてきてくれた
『今後の予定は、まず大学に行きたいと思っているの』
ホームスクールで勉強していたが、高校課程はすでに修了したのだという。米国の大学は9月入学なので、現在まだ進学先が決まっていないということは、恐らくこの1年休暇をとって来年からスタートということになるのだろう。何を専攻するのだろうか?
『法律に興味があるんです』
お父さんのように弁護士を目指す? そう聞くと、リュウは笑いながらこう答えた
『興味はあるんだけど、父の机の上の書類の山を見ると、こんなに学ぶことがあるのかと思ってちょっと躊躇しています』
日本でのスターズオンアイス『素晴らしい体験でした』
モンペリエ世界選手権で銅メダルを手にしたアイスダンスのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツは、現役を続行することを明言した
『今年になってから、目まぐるしいほど忙しい日々を送ってきました』とエヴァン・ベイツ。全米選手権、北京オリンピック、そしてモンペリエ世界選手権と大きな大会が続いた。『モンペリエのすぐ後日本へ行って、「スターズオンアイス」に出演したのは、素晴らしい経験でした』と目を輝かせた
『北京では観客が入っていなかったでしょう。その後で、日本の会場で9000人の観客の前で滑るのは、信じられないほど楽しかったです』
気候にも恵まれ、満開の桜を見ることもできたという
『一日みんなとお寿司を食べに行きました。ホテルも快適で、少し観光をする時間もあった。』と嬉しそうに語った
ジェイソン・ブラウン『日本に行くのが待ちきれない』
ジェイソン・ブラウンは、黒のTシャツにシルバーのジャケットというお洒落なスタイルで登場。チェンが欠場となったモンペリエ世界選手権では、第1補欠だったがどうして行かなかったのだろうか
『オリンピックの後、当初は代表全員がモンペリエへ行く予定だったので、僕はちょっとリラックスしてトレーニングを休んでいたんです。シーズン最後だったし。(代替出場は)本当に直前に言われたので準備ができていなくて、こんなコンディションで出場するのはフェアではない、と思って諦めました』
北京オリンピックの一番の思い出は、何だったのか
『観客が入れなくて家族も見学に来れなかったのは、残念でした。でもその代わり、アスリートたちがサポートし合ったのです。バブルの外に出ることはできなかったので、他の競技の選手たちが、たくさん応援に来てくれた。それは忘れられない思い出になりました』
ブラウンは日本の『スターズオンアイス』には出演しなかったが、『ファンタジーオンアイス』の後半に出演する予定だ
『また日本に行けるのが、本当に楽しみ。待ちきれません!』と笑顔を見せた
各スケーターが“名指しで賞賛した日本人選手”とは
そして年季の入ったスケートファンには懐かしい顔、1992年アルベールビルオリンピック銀メダリスト、ポール・ワイリーも登場した。北京オリンピックの感想を聞かせてくれた
『男子のトップグループは、みんな凄い演技でした。過去4年に起きたことを思えば、これほど難しい時期がかつてあったでしょうか。そんな状況で金メダルを手にしたネイサンには脱帽です。予想外だったことがたくさんあり、まだこれから解決しなくてはならない問題が浮上してきた。みんなにとってフェアであるような結末を望みます』。そう口にしたのは、もちろんロシアのカミラ・ワリエワのドーピング陽性事件についてだろう
日本の選手についての感想を聞くと、ワイリーはこう答えた
『日本の男子は全員、素晴らしかった。豊かな才能が揃っていますね。特に基礎のスケーティング技術が優れていると思った。またぼくの世代の日本男子より、みんな感情表現が豊かになったような気がするんです』。そう口にした後、改めてこう言い添えた
『それはフェアではないかな。ぼくはフミオ・イガラシ(五十嵐文男)と競ったことがありますが、ジャンプが美しく、感情表現も素晴らしい選手だった』とワイリー。実際には五十嵐氏の方が一世代上だが、ワイリーが世界ジュニアチャンピオンになった翌シーズン、1981年NHK杯に二人とも出場している。五十嵐氏が優勝、ワイリーが5位だった。その時の演技がよほど印象的だったのだろう
『また女子の3位になったカオリ。実力でメダルを手にして、表彰台に上がって喜ぶ姿を見て、とても幸せな気持ちになりました』と坂本花織を祝福した
ツアーの合間にチャリティ活動に協力したスケーターたちは、5月いっぱいまで『スターズオンアイス』で全米を回る予定だ