2020年の美術展の感想です。

個人の主観による感想です。偏った意見を書くことがあり、異論のある方もおられるかと思いますが、ご容赦ください。

 

美術展名:ハマスホイとデンマーク絵画

美術館名:東京都美術館

鑑賞日 :2020年1月24日(金)

 

主な展示作品:

ハマスホイ「背を向けた若い女性のいる室内」「室内」「室内‐開いた扉、ストランゲーゼ30番地」「聖ペテロ大聖堂」「カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ25番地」

ピーダ・イルステズ「ピアノに向かう少女」

ピーザ・スィヴェリーン・クロイア「スケ―イン南海岸の夏の夕べ―アナ・アンガとマリーイ・クロイア」

ヴィゴ・ヨハンスン「きよしこの夜」「春の草花を描く子供たち」

 

全体評価 4 (5段階評価:5が最高)

 

17世紀オランダ風俗画の影響が認められることから”北欧のフェルメール”とも呼ばれるデンマークの画家ウィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)の作品約40点と日本で初めての本格的な紹介となる19世紀デンマークの名画が並んだ美術展(パンフレットから一部抜粋)。

西洋美術館の収蔵品「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」を初めて見たときに「幽玄」「静謐」という言葉を連想させる独特な描写に非常に感心し、ハマスホイ(ハンマースホイという呼び方もされている)の作品を中心にした美術展があるということで、楽しみにしていた。自分としては珍しく開始早々の時期に美術館に足を運んだ。ハマスホイの作品に描かれている室内をイメージした展示室内の飾りつけは、いいアイデアと思った。またハマスホイの作品は全体の展示作品の中で「抜きんでている」と感じた。個人的にはハマスホイのスタイルは34,35歳くらいに確立したと思うが、その年齢以降の作品群はすばらしいものが多く、絵葉書をあれこれ買うよりはお得と思い、カタログを購入した。

 

好きな作品:

オスカル・ビュルク「遭難信号」

:デンマークの北の果てにある漁師町スケ―インは、「プリミティブなデンマーク」のモチーフにより多くの画家を引き寄せ、スケ―イン派と呼ばれる画家の作品。北欧の荒れた海に漁に出た夫の遭難の危機に、二人の子供と一緒に、海を見ている妻の横顔の表情に焦燥、不安、信心、希望などの気持ちが見事に表現されている。漁師という仕事を選ぶしかない環境の中で、ひたむきに生きる人々の象徴といえる作品と感じた。

 

ピーダ・イルステズ「編物をする少女」

:「ピアノに向かう少女」の画家の作品。明るい部屋で一人では座ることのできない高い椅子に座って、熱心に編物をする姿が描かれている。幼子への親の愛情を反映して、差し込んでいる光が暖かく感じられるのが、素晴らしいと思う。

 

ハマスホイ 

主な展示作品に表記した5作品と西洋美術館からの貸し出しの「ピアノを弾く・・」は好きな作品。それ以外の作品を紹介したい。

「若いブナの森、フレズレクスヴェアク」「ロンドン、モンタギュー・ストリート」

:いずれも風景画。「若いブナ・・」は長谷川等伯の「松林図屏風」に通じるような風の音が聴こえてくる感覚になった。「ロンドン・・」は、都会の中にあっても喧騒が聴こえてこない「静謐」な時間帯もあるという空気感を感じた。