「何やってんだ俺は。」
携帯のバッテリーは切れて、ちゃんとした時間がわからない。
最近、体を休めていないでいたから、今日くらいはゆっくり休もう、そう思っていた。
車で早めに帰路に着いた僕の目に、「ボク」が目にとまった。
夜中の0時。
僕は気にとめたけど、そのまま通り過ぎた。
僕も昔、家出したことがある。
大抵の家出は、親を心配させるためにあるんじゃないかな。
僕は違った。
家出、というよりは逃亡。
容赦のない親父から逃げる手段だった。
殺される。
そう考えて、家を飛び出した僕はとても落ち着いた。
靴も履かず、裸足で飛び出した。
季節は、ちょうど初夏だったと思う。
静かな夜に月明かりで、夜空を見るのが好きだった僕は、守られてるような気すらした。
ヤンチャ坊主だった僕には隠れ処は沢山あった。
だけど、当時は携帯もポケベルすら持たなかったから、本当にたった一人だった。
歩きながら色んな事を考えては色んな可能性を見つけていた。
小さな町に友達も沢山いた。
友達の家の前から、友達の部屋を覗いたのを良く覚えてる。
気付いてさえくれれば、友達はきっと僕をかくまうか、一緒に出てくれただろう。
だけど、明るい部屋を見て、僕は合図を送るのさえ、する事はしなかった。
とにかく家から離れないと。
僕は何故か学校に行った。
夜の学校に興味があった。
僕が知っている学校は、明るくて、必ず騒がしい。
眠る校舎に、僕は引き寄せられた。
2メートルくらい金網を越えて運動場から入った。
正門は、もしかしたら警備があるかもしれないから。
僕はお金もなければ、靴すら履かない家出少年だったけど、日常から備えたモノだけは肌身放さず持っていた。
本当に静かだった。
だけど、だれかの気配がする。
学校ってそんな場所だ。
誰もいないのに、誰かいる気がしてしょうがない。
僕は思ったより落ち着かなくて、校舎を眺めてその場を離れた。
どっちかって言うと、家出はとてもいい体験になる。
僕は、車で通り過ごした「ボク」が気になっていた。
車を引き返し、少年が上がっていった階段を車を置いて追いかけた。
正直なんで追いかけたのか今でもわからない。
「家に帰れ」なんて言うとは思えないし、警察に連絡するつもりもない。
ただ、少年だった「僕」に話しかけたかったのかも。
その時間はとても貴重で、キミだけの時間。
だから、自分の足と、知識だけで、好きなだけ街を歩け、って。
缶ジュース一本買ってあげて、愚痴とその後に少しの夢を聞いてあげたかった、
それだけなのかもしれない。