今日、バイクでの帰り道、マナーが良いと思うバイクに出会った。
トンネル入り口、僕は見切り発進をして先頭に割り込んだ。
そのバイクは距離を開けて僕に後続した。
少し狭いトンネル入り口道路、だけどバイクだと明らかに追い越し可能な幅。
後続するバイクは、パワーもスピードも兼ね備えたマシンなのは前方からも確認できた。
2車線に変わった所から、グングン加速をつけてアッというまに僕を追い越す。
その1瞬、そのマフラーからの2ストの匂いと、バイクのポジションとで僕はもう会うことのないだろう人を思い出した。
僕には兄がいる。
彼は問題を色々と抱えて、高校を卒業した次の年半ばに家を出て行った。
出て行ってからも、家に持ち込むのはトラブルばかり。
ヤクザの車に突っ込んだ、とか乱闘だ、やれネズミ講だ、怪我だ、と。
母親も疲れきっていたけど、彼がバイクで大怪我をし、後遺症と共に人生を歩むようになってから再び手を差し伸べる機会が多くなった。
最後に彼と話をしたのは2年前。
バイクで骨折をして数日後に手術予定だった僕を、彼は容赦なく殴りつけた。
始めは僕も応戦するが、片手は骨折。馬乗りになり殴られ続けた。
怒り狂った僕と彼は、とまる気配はなかった。
反省してるよ。
結局は警察ざた、パトカーも3台の大騒動。
その時の彼との約束で、『2度と接触しない』と怒鳴りながらも了承し合った。
『結婚するらしいよ。』そう聞いても、残念ながら祝いの言葉もいってやれない。
お互いがお互いを守る為にね。
考えられない状況からトラブルを生む彼は、天才だからね。
何度か本気で殺してやると思った。
それでもやっぱり、すぐに忘れて許してしまう。
彼は自分に甘く、一度も頭を下げた事がない。
家族だからこそ、謝らなきゃいけない時もある。
家族に代えはないし、家族なら許してくれる。
だから余計に大切にしなきゃダメだと、そう思う。
「もう全部流そうぜ。つまんない事すんのやめようぜ。」そう言って、「最近どうよ?」そんな声をかけてやりたい。
だけど、彼に 悪いときは頭を下げるんだ って教えてやらなきゃいけない。たとえ10年かかっても。
トンネル出口。
信号でさっきのバイクに出会う。
今度は僕が後方。
ウィンカーの音が、PM08:30を必要以上に静かに感じさせる。
みなれたポジション。
しらないAraiのヘルメット。
青信号・・・
僕を先に行かせる様にスタートを遅らせるバイク。
すれ違い際、そのバイクの2人乗りの後者のヘルメットに見慣れた
「Rapide V」
その左下、彼のオリジナルのマーク。
彼から譲り受けた僕の昔のバイクにも同じマークがあった。
直線、僕はスピードを落とし、左折間際、彼との車間を詰めて、見つからないように、気付いてもらえるように左手人差し指と中指を揃え挨拶した。彼が僕に最初に教えたバイクのマナーだった。
ヘイ、ブラザー。
元気か?
体、壊さないようにな。
