僕は旅行会社に勤めています。
大きな事を言うと「夢を作る」仕事。
世界一周をスタートさせるソウル行きの航空券を手配したり、新婚旅行、恋人に会いに行く人、卒業旅行等々。
「たった8日間、添乗員付きのイタリアが、○○さんに言われて1ヶ月の放浪(バックパッカー)になりましたよぉ。」
「困ったらいつでも会社に電話しておいで。気をつけて。」
何度こういうパターンをしてきたかなぁ。
帰国後、そういう人の見せる笑顔を見ると「サイッコウ」とガッツポーズしちゃうからやめられない。
危ない目に遭わなかったか、後悔してないか、いつもハラハラしてしまうけど、学生のハジケル笑顔、わざわざ帰国報告をしてくれる人を見るとつい次にも熱が入ってしまう。
恵まれた仕事だなぁ、とつくづく感じます。
今日、同僚Yさんに一本の電話が入った。
僕は雰囲気を察して席をはずした。
彼女はハンカチで目頭を押さえ、ただただ受話器を握り締めていた。
―2,3日前の事、他のスタッフから
「Yさんの前の営業所のお客さん老衰で危篤状態なんだって、Yさんの始めてのリピーターだからなぁ、つらいだろうなぁ。」と聞かされていた。
ただの旅行会社、だけども人の非日常を作るのが旅行会社。
一つ一つ本当に大切にしなきゃいけない。
彼女がその人の旅行をどのくらい手配したのかはわからないけど、そこまで親身になれて、そこまで感動できる彼女を羨ましいとさえ思ったよ。同時に、その人はきっと沢山の人の涙をさそってこの世を去ったのだろうなぁ、そう感じました。
その人の最後の片道旅行は、帰国報告の代わりに、伝言として彼女の耳に届き、今までの感謝を彼女へ伝えたんだろう、と僕にはそう感じました。
名も知らない幸せなその人へ。
―心からご冥福をお祈りします。