第1章 ⑥



ほどなくして、2人の所縁の場所である喫茶店へと到着した俺達は


空いてる席をと、店の一番奥の窓側のテーブルへと向かった。



時間帯的にもちょうど昼休みが明けた頃の時刻。


そのためか、店内も人影はまばらで


ビジネスマン風の姿の人間は、自分くらいしか見当たらない。




とりあえず、


彼女を座るように促し、俺自身も彼女と向き合う形でテーブルにつき、席へとついた。






ご注文は?




席に着くや否や さっそくオーダーをとりにやってきた喫茶店の店員が一言。




もちろん馴染みの店でもあるので、



こちらも注文するメニューといえば、此処に来る度に毎回、同じものだ。




君は何を頼む?


いつものやつでいいかな。




…と、つい、付き合ってた頃の調子で、そんなふうに彼女に何を注文するか聞いてしまった自分。




だが、それに対して彼女の反応は鈍く



いつもの…って何?


とでも言いたげな表情で、


○○さんと同じものでいいです。・・・と、そんなことをいう。




何故だろう。


特に明確な理由があるわけではないが、



その彼女の様子に俺は変な違和感を覚えた。





























第1章 ⑤



考えていても仕方がない。


まずは、彼女の話を聞いてみなければ。



そう思い、


応接室の接客コーナーへと案内を促す俺。



だが、彼女は


とてもプライベートな事なので・・・と


社内での会話をためらってる様子。



それならばということで、


上司からの許可をとりつけ、俺達は、会社近くの小さな喫茶店へと歩いて向かうことになった。





これから向かう喫茶店。



実は、彼女と付き合ってた頃


仕事帰りのデートの際に、待ち合わせ場所として、よく使っていた所でもあった。




会社の玄関ロビーを抜け



そこから、ほんの数十メートルの短い道のり。



けれど、その歩けば、あっという間の距離を 今、隣で並んでいる彼女と何度も歩いた。



 

普段は、気にしないことも


そうやって彼女をきっかけに、過去の思い出が色々思いだされるのは、正直辛い。



なんで今更なんだよ・・・と



このタイミングで、自分に会いに来た彼女の姿を見ながら



俺は、会ったことを後悔していた。






第1章 ④






突然の思わぬ再開に




俺は、思うように次の言葉が出せないでいた。






2ヶ月前、何の前触れもなく・・・別れを自分から切り出し


俺の目の前から姿を消してしまった彼女。








別れて数日後、マンションを訪ねてみるも そこは、すでに彼女が出払っていて、空室の状態。






つまり要約するならば




忘れたくても忘れられない相手でもあり






会いたくても会えなかった その相手が




今、俺の職場にいて、そして、俺の手の届く距離に佇んでいる・・ということになる。








・・・・き、君が、なんで此処に?






努めて平静を装い、そう彼女に声をかけてみるも




それに彼女は応えず、






「仕事の最中に、お邪魔して申し訳ありません。


 


 貴方に、 ・・いえ、○○さんにお話ししたいことがあるんです。




 今、お時間とれませんか?」




と、他人行儀な言葉を放つ。






まあ、別れた今となっては、他人なのには間違いないが、






それよりも話したいことって何なんだろうか。






何故?と疑問が俺の頭の中をグルグルと回り始めていた。