『現金に手を出すな』『存在の耐えられない軽さ』『北陸代理戦争』他、3月の映画鑑賞記録 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

3月に観た映画の簡単な感想ブログです。

外国映画、日本映画、公開年度の古い順に紹介しています。

★5点満点 ☆0.5点

 

 

『現金に手を出すな』1954年

監督 ジャック・ベッケル

 

感想)

ジャン・ギャバンがホテルのフロント、ジャンヌ・モロー、その女友達に次々ビンタを喰らわすシーンは、観ているほうも思わず身震いするほどの迫力。ダメ男の親友のために大金を失う初老のギャバンに哀愁を感じる。名曲『グリスビーのブルース』

★★★★★


 

 

『ノスタルジア』1983年

監督 アンドレイ・タルコフスキー

 

感想)娯楽映画ではないので、あらかじめ覚悟を決めて鑑賞しないと途中で鑑賞を放棄してしまう可能性がある。主人公と同行している女性の素性や旅の目的、途中で出会う風変わりな男など、注意を凝らして観ていないと理解が難しい。どのようなテーマを表現しようとしたのかはラスト15分くらいで徐々に判明するのでそこに至るまで忍耐を求められた。タルコフスキーの故郷への郷愁の思いが映像を通して静かに強烈に伝わってくる。★★★★★

 

 

『存在の耐えられない軽さ』1988年

監督 フィリップ・カウフマン

 

感想)1968年のチェコ。優秀な脳外科医のトマシュ(ダニエル・デイ・ルイス)は次々と女たちと関係を持ちながら、その一人サビーナ(レナ・オリン)とは特に深く結びついていた。ある時、田舎の病院で手術を頼まれたトマシュは病院のカフェで働いていた若い娘テレーザ(ジュリエット・ビノシュ)と知り合う。田舎の街からトマシュを頼りにプラハへやって来たテレーザ。

テレーザとトマシュ、サビーナの関係はソ連軍のプラハへの軍事侵攻によって変容していく。ミラン・クンデラの原作を1年ほど前に読んでいたが、原作とは大分趣きが違う作品になっていた。

クンデラはこの映画化に凝りて、以後自作の映画化は許可することがなかったと記憶する。★★★★

 

 

『アルジャーノンに花束を』2006年

監督 ダヴィッド・デルリュー

 

感想)清掃の仕事をしているシャルルは生まれつき知能指数が低く、職場への道も毎日地図を見て確かめながら通っていたが、あることから新薬の治験者となり、数か月後に知能は飛躍的に高くなり大学教授並みのレベルに達する。しかし、新薬の実験に使われていたネズミのアルジャーノンはある日退行現象を現し始める。クリフ・ロバートソンがアカデミー主演男優賞を受賞した『まごころを君に (アルジャーノンに花束を)』(ラルフ・ネルソン監督 1968年)のフランスでの映画化。内容は深く

重いテーマを持っているが、フランスで映画化されたこの作品は恋愛映画の要素が強く感じられ、テレビドラマを見ているような浅い印象を受けた。DVDの監督紹介によれば、テレビドラマを多く撮っている監督のようで納得した。主演俳優は頑張って演じていただけにやや残念な作品。★★★☆   

 

 

『東京暮色』1957年

監督 小津安二郎

 

感想)戦後の小津作品の中では最も暗い作品ではなかろうか。

暗い小津映画として引き合いに出される『風の中の牝鶏』(1948年)の主人公(田中絹代)には終戦後のやむにやまれぬ事情があり酌むべきものがあったが、『東京暮色』の主人公(有馬稲子)にはやむにやまれぬ事情がやや不足しているように思え、仲間が彼女の妊娠を野球解説者(小西得郎)の真似をして面白おかしく語るシーンはやや悪趣味に感じられた。仲間とはいえ、所詮他人のことは人はその程度にしか考えていないということを表現したかったのか。終盤の踏切事故のシーンは今回観直してみると踏切番が小便で居なかったこととラーメン屋で恋人と喧嘩別れして興奮して店を飛び出した直後だったことを考え合わせるとどうも○○だったようにも思える。病院に駆け付けた父(笠智衆)や姉(原節子)にうわごとのように「生きたい、生きたい」と言っていたことに少しだけ希望のようなものが感じられた。北海道に行くことを決意した母(山田五十鈴)とその旦那(中村伸郎)が乗る列車のホームで明治大学の応援団が校歌を響かせていたのはどういう意図があったのか、あるいは偶然居あわせたのでそのまま出演させたのか、そんなことが気になった。休日に映画を楽しみに来た当時の観客はこの映画を観てどんな思いで帰って行ったのだろう。★★★★

 

 

『博奕打ち 総長賭博』1968年

監督 山下耕作

 

感想)

「中井、テメエの任侠道ってのはそんなものなのか」

「任侠道?そんなものは俺にはねえ!おらぁ、ただのケチな人殺しだ。そう思ってもらおう」

 

男の欲(金子信雄)意地(若山富三郎)任侠道(鶴田浩二)の

犠牲になって泣くのは女たち(桜町弘子、藤純子、服部美千代)

死んで行くのは子分衆(三上真一郎、曽根晴美、沼田曜一)。

名和宏が一世一代の名演技。★★★★★

 

 

『日本侠客伝 花と龍』1969年

監督 マキノ雅弘

 

感想)『日本侠客伝シリーズ』で一番出来の良かったのが第一作の『日本侠客伝』、一番好きなのが『花と龍』。主演の高倉健を始め、マンに扮した星由里子、共演の二谷英明、津川雅彦、

山本麟一、三島ゆり子、若山富三郎、高橋とよがいい上に、

上田吉二郎、川村真樹まで出演しているのだからたまらない。

任侠映画を観て泣くことはめったにないが、『花と龍』と『人生劇場 飛車角と吉良常』(内田吐夢監督)だけは観るたびに泣いてしまう。マキノ雅弘の情緒纏綿の名人芸の演出。忘れちゃいけない、藤純子の妖艶な長い黒髪とドスの効いた『黒田節』。★★★★★

 

 

『現代やくざ 人斬り与太』1972年

監督 深作欣二

 

感想)『現代やくざ』シリーズ第6作目にして最終作。

翌年から始まる『仁義なき戦い』シリーズと重ね合わせると注目すべき作品(撮影・仲沢半次郎、音楽・津島利章)。5年の刑期を終え、生まれ育った川崎の街に戻って来た愚連隊あがりの沖田勇(菅原文太)。仲間(小池朝雄、地井武男、小林稔侍、大浜詩郎)を引き連れ、川崎の街を二分する暴力組織、滝川組、矢頭組に牙をむく沖田だったが・・・

菅原文太の暴力性には目を瞠るものがあるが、内容はやや図式的。文太も渚まゆみも熱演だが、生きることの悲しみが伝わってこない。三谷昇と奥さんのエピソードなどは泣かせるのだが。 ★★★★

 

 

『山口組外伝 九州進攻作戦』1974年

監督 山下耕作

 

感想)伝説のやくざ夜桜銀次を主人公に名友会事件、別府事件、博多事件などが描かれる。『仁義なき戦い』シリーズが製作されていた1974年の作品だが、山下耕作の演出は激しい暴力性を秘めながら、時にユーモアも交え格調の高さを感じさせる。菅原文太と渚まゆみが夫婦役で共演。戸浦六宏がひたすら逃げ回る。 ★★★★☆

 

 

『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』1975年

監督 山下耕作

 

感想)小林旭が東映移籍3年目で勝負をかけたという作品で、

在日韓国人やくざ柳川次郎がモデル。実録モノでありながら

山下耕作の演出はどこか任侠映画的。梅宮辰夫、金子信雄、

遠藤太津朗、成田三樹夫らを配し、小泉洋子、中島ゆたかの女優陣も新鮮。★★★★

 

 

『大奥浮世風呂』1977年

監督 関本郁夫

 

感想)松田暎子と志賀勝主演の東映時代劇ポルノ。

脚本が鈴木清順作品で知られる田中陽造だけに面白さは保証。

男色の僧侶役で汐路章はトラウマ必死。早く忘れ去りたい。

★★★★

 

 

『北陸代理戦争』1977年

監督 深作欣二

 

感想)映画公開後、暴力団同士の射殺事件が発生し東映実録路線は終わりを告げる。高橋洋子が地井武男の妹役で出演。

吹雪の中、雪に埋められ顔だけ出した西村晃に迫る松方弘樹

の暴走ジープ。北陸やくざの怖ろしさがひしひしと伝わる傑作。

★★★★★

 

 

『座頭市』2003年

監督 北野武

 

感想)

こんな『座頭市』もあったのか。

北野武の才能に脱帽。悪党たちは倒され村に平和がやって来た。最後はみんなでタップダンス、踊っちゃおう!!

★★★★★

 

 

『夜、鳥たちが啼く』2022年

監督 城定秀夫

 

感想)

今はコピー機の修理の仕事をしながら小説を書いている男(過去に受賞歴あり)が恋人の勤務するスーパーで嫉妬に駆られて暴れまくり恋人に逃げられ、子連れの訳あり女性と肉体関係を結ぶことで心の平安を得る。創作のストレスとセックスのストレスが解消されると本当は子供にも優しいいい男? 子連れ女性のほうもセックスが満たされている今の状態であれば男に結婚の意思がなくてもそれなりに満足で今の状態を続けたい?

脚本が『そこのみにて光り輝く』『オーバー・フェンス』の高田亮でこんな作品になるとは ★★★