『稲妻』『あなた買います』『日本暗殺秘』『青春☆金属バット』『いちご白書』他、2023.8~11 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 鑑賞後時間が経過して詳しいストーリーを忘れている作品が多いため、作品紹介は『ぴあシネマクラブ』『映画.com』などの本、映画サイトから引用、参照しました。

製作年度(公開年度)の古い作品から日本映画、外国映画の順で取り上げています。記事中の記憶違い(事実誤認)はご容赦下さい。(作品評価に明確な根拠はありません)

★5が満点 ☆は0.5点

 

『稲妻』1952年(大映東京)

  監督 成瀬巳喜男  原作 林芙美子 脚本 田中澄江                 撮影 峰重義  音楽 斎藤一郎

 

出演 高峰秀子 浦辺粂子 三浦光子 村田知栄子 小沢栄

    根上淳  香川京子 中北千枝子 他

 

4人の子供の父親がみな違うという複雑な母子家庭で、母と異父兄姉たちの醜さに愛想をつかした末娘(高峰秀子)が家を出て自立する過程を物語の骨子にしている。

 

感想)東京でバスガイドをしている主人公(高峰秀子)は複雑な家庭環境の中で、母に対する反発心や異父兄姉に対するやりきれない思いをつのらせ、家族から離れて自立への道を踏み出そうとする。1950年代初めの下町情緒が残る東京の風景と人情が

成瀬監督独特の細やかなリアリズム演出で描かれている。

★★★★★

     

 

『あなた買います』1956年(松竹大船)

 監督 小林正樹 原作 小野稔 脚本 松山善三

 撮影 厚田雄春 音楽 木下忠司

 

出演 大木実 岸恵子 伊藤雄之助 佐田啓二 水戸光子

    三井弘次 山茶花究 東野英治郎 佐々木孝丸 他

 

プロ野球の選手獲得をめぐるどす黒い人間の欲望を描く。

当時の野球ブームを反映した実録的作品。大学野球界の逸材をめぐって展開する激しいスカウト合戦。

 

感想)プロから注目されている大学球界のスラッガーを演じる大木実の、恋人(岸恵子)や恩師(伊藤雄之助)札束攻勢を仕掛けるプロのスカウトたちへの煮え切らない態度は、東映移籍後の任侠映画等で見せる大木実の役柄と重なり複雑な思いを抱かせた。

<栄養費>と称するプロ球団からのアマチュア選手への金銭支給はこの時代から当然のように横行していた現実。★★★★☆

 

 

『金瓶梅』1968年(松竹)

 監督 若松孝二 (原訳)上田学而 脚本 大和屋竺

 撮影 伊藤英男  音楽 八木正生

 

 出演 真山知子 高島史旭 伊丹十三 浅利ルリ子 紅理子

    宝みつ子 桜井啓子 津崎公平 武智杜代子 他

 

中国は宋の時代、武松は人喰い虎を退治して一躍名をあげ、警備隊長になった。兄の武大と会って仕官を祝った時、武松は兄嫁・潘金蓮の美しさに見とれてしまった。金蓮の美しさにひかれたのは富豪・西門慶も同様であった。西門慶は金蓮を手に入れるため

金蓮に武大を毒殺させてしまったのだった。

 

感想)主演真山知子、伊丹十三。麿赤児、大久保鷹、山谷初男、津崎公平らアングラ系やピンク系の男優に松竹歌劇団出身、歌手兼女優、フーテン出身女優、更に武智杜代子(豊子)も出演。

音楽は東映系の八木正生、配給は松竹、原作は中国の古典、舞台は中国の宋の時代、監督若松孝二という奇奇怪怪の作品。★★★★★

 

 

 

『日本暗殺秘録』1969年(東映京都)

 監督 中島貞夫 原作 鈴木正 脚本 笠原和夫 中島貞夫

      撮影 吉田貞次  音楽 冨田勲

 

出演 千葉真一 片岡千恵蔵 吉田輝雄 若山富三郎

   藤純子 菅原文太 高倉健 鶴田浩二 高橋長英 他

 

桜田門外の変の大老・井伊直弼暗殺から、2.26事件まで、

江戸、明治、大正、昭和と歴史を血で染めた数々の暗殺事件を

ドラマ化した異色作。先のふたつ以外に取り上げられているのは大久保利通暗殺事件、ギロチン社事件、血盟団事件など。

 

感想)井伊大老暗殺で始まるオープニングから、後半、血盟団事件がとりあげられ、国家政策に異議を唱え、井上日召(片岡千恵蔵)のもとに集結した国粋主義者たちが一人一殺を遂行するべく謀議をめぐらす。千葉真一扮する青年が荒波に打たれ「南無妙法蓮華経」を一心に唱える入魂の演技はこの作品の白眉。★★★★☆

   

 

『十八歳、海へ』1979年(にっかつ)

 監督 藤田敏八 原作 中上健次 脚本 田村孟 渡辺千明

    撮影 安藤庄平 音楽 チト河内 

 

 出演 森下愛子 永島敏行 小林薫 島村佳江 下條アトム

    小松方正 鈴木瑞穂 浜口竜哉 小中陽太郎 他

 

心中ごっこを繰りかえし、死と隣り合わせの瞬間にこのうえもない喜悦を感じるカップル、佳と敦夫。そして、5年間浪人暮らしをしている英介と佳の姉・悠。偶然に知り合うことになった四人のひと夏の出会いと別れ・・・

 

感想)夜の鎌倉の海へオートバイに乗った一団がやってくる。

少し離れた所からそれを見ている佳と敦夫。

「何やるのかな」「にぶいわね。ここは鎌倉の海よ」

「それがどうしたんだよ」「太宰治」「太宰?」

「銀座裏のバァの女が、私を好いた。好かれる時期が、誰にだって一度はある。不潔な時期だ。私は、この女を誘って一緒に鎌倉の海へはいった・・・・・・女は死んで、私は生きた」

 

「あの二人にはこの夏しかなかったのね。この次の夏が思い浮かばなかったのよ、きっと」

 

夏の鎌倉と東京を舞台にした『十八歳、海へ』を11月の終わりに再見。巷の評判はかんばしくはないが、エンディングテーマ(加橋かつみ)も含め好きな作品。グリコ、パイナップル・・・

偏頭痛持ちの文学少女・佳に扮した森下愛子も良かったが、佳の姉・島村佳江に心奪われた。★★★★★

 

 

 

『火まつり』1985年(プロダクション群狼・シネセゾン)

 監督 柳町光男 脚本 中上健次 撮影 田村正毅 

    音楽 武満徹

 

出演 北大路欣也 太地喜和子 中本良太 宮下順子

 川上麻衣子 安岡力也 中島葵 三木のり平 八木昌子 他

 

海と山に挟まれた紀州・熊野の小さな町。海洋公園の建設に予定され、その利権で町は揺れていた。木こりの達男は妻と二人の子供がいたが、町にかつての女・基視子がやって来ると再び関係を持ってしまう。ある日、激しい嵐の中、山にひとり残った達男はそこで神の声を感じるのだった・・・・・

 

感想)中上健次の一連の<熊野もの>につながる作品。

太地喜和子、中島葵、宮下順子、八木昌子といった女優たちと安岡力也がそれぞれ魅力的演技。北大路欣也はこの作品でそれまでのイメージを変えようと試みる挑戦的な意味合いを持つ作品にも感じられた。★★★★☆

 

 

 

 

『裸足のピクニック』1992年(ぴあ・ポニーキャニオン)

 監督・脚本 矢口史靖 脚本 鈴木卓爾 中川泰伸 

    撮影 鈴木一博 音楽 うの花

 

出演 芹川砂織 浅野あかね Mrオクレ 梶三和子 緒方明

   あがた森魚 泉谷しげる 他

 

大学生とつきあいながら、親に内緒で自動車教習所にも通う今どきの普通の女子高校生の鈴木純子。彼女が定期券でのキセル乗車発覚をキッカケに次から次へと不幸にみまわれる。

 

感想)ジェットコースター的に不運に巻き込まれる女子高校生。
電車賃を浮かせるためのほんの出来心が不幸の始まりだった。
矢口史靖の商業映画デビュー作でその後の作品スタイルがすでに垣間見える。★★★★☆

 

 

 

『HANA-BI』1998年(オフィス北野バンダイビジュアル)

 監督・脚本 北野武 撮影 山本英夫 音楽 久石譲

 

出演 ビートたけし 岸本加世子 大杉漣 寺島進 

   白竜 渡辺哲 薬師寺保栄 他

 

凶悪犯を張り込み中の刑事・西は親友で同僚の堀部に張り込みを代わってもらい、不治の病で入院中の妻・美幸を見舞いに向かう。しかしその間に堀部は犯人に撃たれ、命は取り留めたものの下半身不随となる。その後、西は犯人を追い詰めるが、自身の失態から後輩が命を落としてしまう。罪悪感にさいなまれ辞職した西は車いすでの生活を送る堀部に画材を送るため、そして余命わずかな美幸との生活資金を工面するため、ヤクザから金を借りるが・・・・

 

感想)

悪魔的暴力と天使のやさしさ。

簡潔の極みで描く北野映画の極致。

★★★★★

 

 

 

『青春☆金属バット』2006年(日本出版販売・JVCエンタ)

 監督 熊切和嘉 原作 古泉智浩 脚本 宇治田隆史

 撮影 橋本清明  音楽 赤犬

 

出演 竹原ピストル 坂井真紀 安藤政信 若松孝二 他

 

高校の野球部で補欠だった難波は、「究極のスィング」を求めてコンビニの店員をしながら1人で毎日ひたすら練習を繰り返していた。だが、ある日出会った巨乳の酒乱女・平山エイコに巻き込まれ、金属バットを使った強盗を始めてしまう。一方、チームのエースだった石岡は野球を捨てて警官になっていたが、2人は10年ぶりに再会する。

 

感想)プロ野球の入団テストを目指し、ひたすら金属バットを振り続ける難波。コンビニの同僚のアルバイト女子高校生に気色悪がられ、得体の知れない暴力酒乱女に絡みつかれ、やがて同棲生活を送るはめになってしまう。コンビニの店長にもさんざん馬鹿にされた難波はとうとうキレ、町の馬鹿カップルを金属バットで殴打する。所沢辺りの寒々とした風景、安アパートの荒涼としたたたずまいが身に沁みる。坂井真紀ほどやさぐれ女が似合う女優は中々いない。自称、ベイブ・ルースの息子に扮した若松孝二が怪演。★★★★★

 

 

『舟を編む』2013年(松竹・アスミックエース)

 監督 石井裕也 原作 三浦しをん 脚本 渡辺謙作

 撮影 藤澤順一 音楽 渡邊 祟

 

出演 松田龍平 宮崎あおい オダギリジョー 小林薫 

   伊佐山ひろ子 加藤剛 黒木華 池脇千鶴 他

 

玄武書房の営業部に勤める馬締光也は独特の視点で言葉を捉える能力を買われ、新しい辞書『大渡海(だいとかい)』を編さんする辞書編集部に迎えられる。個性的な編集部の面々に囲まれ辞書作りに没頭する馬締は、ある日、香具矢という女性と出会い心ひかれる。

 

感想)辞書作りの苦労の一端をエンターテインメントの映画に落

   とし込んで飽きさせない石井裕也の手腕はお見事。

   原作者の三浦しをんも満足だったのでは。★★★★

 

『蜜蜂と遠雷』2019年(東宝)

 監督・脚本 石川慶 原作 恩田陸 

 撮影 ピオトル・ニエミイスキ 劇中音楽 篠田大介

 

出演 松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士

   臼田あさ美 斉藤由貴 鹿賀丈史 他

 

世界最高峰のコンクールへの登竜門として注目を集める、芳ケ江国際ピアノコンクール。13歳の時に母を亡くして以来、長らくピアノを弾けずにいた元・天才少女亜夜をはじめコンクール予選会に集まった4人の若者は互いに刺激を受けて成長を遂げていく。

 

感想)ピアノを弾く人イコール天才という認識の者にとって、こ

   の映画は異世界の物語であった。

  『愚行録』で注目した石川慶の作品。

  ★★★★

 

 

 

『裸の町』1948年(米)

 監督 ジュールス・ダッシン  原作 マービン・ウォルド

 脚本 アルバート・モルツ

 

 出演 バリー・フィッツジェラルド ハワード・ダフ

    ドン・テイラー 他

 

ファッションモデル殺人事件を捜査する刑事ハローラン。モデルの女友だちの愛人が質入れした宝石が、ある医師の家から盗まれたものであることを知った彼は、背後に宝石強盗団が暗躍していることを突き止める。

 

感想)映画の大半がロケ撮影で行われ、黒澤明の『野良犬』やその後作られる刑事映画に多大な影響を与えたとされるセミドキュメンタリータッチの犯罪映画。

★★★★☆

 

 

『イタリア旅行』1953年(伊)

 監督 ロベルト・ロッセリーニ 脚本ビタリアーノ・ブランカ

    ティ

 

 出演 イングリッド・バーグマン ジョージ・サンダース

    マリア・モーバン マンナ・クロクレマー 他

 

ロンドンに住む危機に瀕した夫婦がイタリア旅行中に決定的な破局を迎える。しかし、イタリアの古代美術や遺跡が個人の営みの卑小さを彼らに教え、敬虔な祭りの行列の中でふたりはふたたび結ばれる。

 

感想)ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちに多大な影響をあたえたといわれるロッセリーニ作品。ゴダールの『勝手にしやがれ』はこの作品を参考にして作られたとか。★★★★☆  

 

 

『雨の朝巴里に死す』1954年(米)

 監督・脚本 リチャード・ブルックス 原作 F・スコット・

 フィッツジェラルド 脚本 ジュリアス・J・エプスタイン

 フィリップ・G・エプスタイン

 

出演 エリザベス・テイラー ヴァン・ジョンソン

ドナ・リード ウォルター・ピジョン ロジャー・ムーア 他

 

第一次大戦後を背景にした、フィッツジェラルドの短編『バビロン再訪』の舞台を、第二次世界大戦後におきかえて映画化。新進作家と結婚したビッキーの奔放な生き方と悲劇的な最期を描いたメロドラマ。

 

感想)エリザベス・テイラーとモンゴメリー・クリフトが共演した『日のあたる場所』(ジョージ・スティーブンス監督)とこの作品の主演男優を混同していた。再見し勘違いに気づいてよかった。フィッツジェラルドらしい儚い作品。★★★★

 

 

『ピクニック』1955年(米)

 監督 ジョシュア・ローガン 原作 ウィリアム・インジ

 脚本 ダニエル・タラダッシュ 音楽 ジョージ・ダニング

 撮影 ジェームズ・ウォン・ホウ

 

出演 ウィリアム・ホールデン キム・ノヴァク スーザン・ストラスバーグ ロザリンド・ラッセル クリフ・ロバートソン他

 

アメリカ中西部の小さな町。町をあげてのピクニックの朝、無一文の流れ者ハルが友人を頼ってやって来る。半裸で庭仕事を手伝うハルに目をみはる女ばかりの隣家。ピクニックにうち興じるうち、次女ミリーがハルに夢中になる。しかし、ハルの心を射抜いたのは長女のマッジだった・・・・

 

感想)50年代初めのアメリカカンザスの田舎町。

人々は年に一度、9月第1月曜日に開催される労働祭休日の祭りにうち興じる。町のミス女王に選出されるマッジ。尾羽打ち枯らし学生時代を過ごした町に舞い戻ったハルは、大学時代の友人に仕事を世話してもらおうと考える。マッジには恋人がいたが、

ひと目見た時にお互い心を奪われるハルとマッジ。

「ムーン・グロウ」の甘い調べにのせて踊るホールデンとノヴァク。映画史上に残る名シーン。★★★★☆

 

 

『太陽がいっぱい』1960年(仏・伊)

 監督 ルネ・クレマン 原作 パトリシア・ハイスミス

 脚本 ポール・ジェゴフ 音楽 ニーノ・ロータ

 

 出演 アラン・ドロン マリー・ラフォレ モーリス・ロネ

    ロミー・シュナイダー 他

 

貧しい家庭に育ったアメリカ人青年トムは息子のフィリップを帰国させてほしいと、フィリップの父親から依頼されナポリにやって来た。美しい恋人マルジュも手にしたフィリップは、親の金で遊び回り、全くアメリカに戻る気はなかった。一方、彼から邪険に扱われるトムの心にやがて小さな殺意が芽生え・・・・・

 

感想)当時台頭していたヌーヴェル・ヴァーグにふつふつたる対

抗意識を燃やしていたという名匠ルネ・クレマンの傑作。

脚本を書いてるのはクロード・シャブロル作品で知られる

ポール・ジェゴフ。これまで何度見たか数えきれないが、冒頭近くのナポリのシーンで、若かりし頃のロミー・シュナイダーが出演していたことに初めて気づいた。★★★★★

   

 

 

『僕の村は戦場だった』1962年(ソ連)

 監督 アンドレイ・タルコフスキー 原作・脚本 ウラジミー

    ル・ボゴモーロフ 脚本 ミハイル・パパーワ

 

 出演 ニコライ・ブルリャーエフ バレンティン・ズブコフ

    E・ジャリコフ 他 

 

第二次大戦中、ドイツ軍の戦火で故郷の村を失い、母と妹も行方不明になり、ひとりぼっちとなった12歳のイワン少年。ドイツ軍を憎悪するイワンは少年斥候兵となって活躍し、彼がもたらす情報は味方にとって貴重なものだった。だが、ある日・・・・

 

感想)アンドレイ・タルコフスキーの名前を初めて知ったのがこの作品だった。12歳の少年イワンの鋼鉄のような意思の強さに打たれ、妹と無邪気に走るラストシーンに涙。★★★★★

 

 

 

『いつも心に太陽を』1967年(米・英)

 監督・脚本 ジェームズ・クラベル 

 原作 E・R・ ブレイスウエイスト

 

出演 シドニー・ポワチエ クリスチャン・ロバーツ

   ジュディ・ギースン ルル 他

 

エンジニア出身のマーク・サッカレーは教師として不良生徒ばかりのイーストエンド地区に赴任。自尊心や責任感を訴える彼の教育に生徒は信頼感を抱くが、マークはかねてから希望していた就職先が決まり学校を去ろうとする。

 

感想)不良生徒が集まるハイスクール。新任教師サッカレーに反発する生徒たち。やがてサッカレーの貧しさから這い上がって来た生い立ちを知り、真摯に生徒たちに向き合うサッカレーの姿勢に触れ、次第に心を開いてゆく若者たち。この作品の原作が元ギアナ国連大使が書いた自伝小説(実話)の映画化だったと知ると、内容は甘めながら、このドラマに少なからぬ共感を覚えた。ルルの歌う主題歌が大ヒット。★★★★

 

 

 

 

 

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』1968年(米)

 監督・脚本 ジョージ・A・ロメロ 

 原作 ジョン・A・ルッソ 撮影 ジョージ・A・ロメロ

 

出演 デュアン・ジョーンズ マリリン・イーストマン

   ジョージ・コサナ ジュディス・オディア 他

 

父の墓参りにやって来たバーバラと兄のジョニーに突然よみがえった死体=ゾンビが襲いかかる。ジョニーは抵抗するも犠牲となり、バーバラは恐怖と悲しみに襲われながら近くの民家に逃げ込む。ほかの避難者たちとともに民家に立てこもるバーバラだったが、外部との連絡が取れないまま民家はゾンビの群れに取り囲まれていく。しかし、次第に避難者たちのあいだで、脱出を図るか救助を待つかで意見の対立が生じていく。

 

感想)ゾンビ映画の大本がジョージ・A・ロメロのこの作品によってかたちづくられた、まさにゾンビ映画の金字塔。ゾンビに追い詰められてむき出しになる人間性。衝撃のラスト・・・・★★★★★

 

 

『いちご白書』1970年(米)

 監督 スチュアート・ハグマン 原作 ジェームズ・クーネン

 脚本 イスラエル・ホロビッツ 音楽 イアン・フリーベアン

    =スミス  主題歌 バフィー・セント・メリー

 

出演 キム・ダービー ブルース・ディビソン バッド・コート

   マーレイ・マクロード 他

 

大学ボート部のノンポリ学生サイモンは、貧しい家庭の子供たちの遊び場だった公園に『予備役将校訓練施設』が建設され、大学側がそれに関与していることに抗議するスト中のキャンパスで、活動家の女子学生リンダに一目惚れ。恋心から政治活動の渦中に入る。

 

感想)大学紛争がカッコつきの『青春』だった時代を活写しているという意味では高い評価。学生の抗議活動は真っ当でありながら、圧倒的な政治権力の前では無力な抵抗という側面(暴力的に排除される姿)がリアルに表現されている。

「ナンパ目当てで学生運動に参加している連中も多かった」という話は北野武の本で読んだ気がするが、まさにこの映画のサイモンがそうだった。バフィー・セント・メリーが歌う主題歌『サークル・ゲーム』が耳から離れない。キム・ダービーは、ジョン・ウェインがアカデミー賞主演男優賞を受賞した『勇気ある追跡』の勝気な少女から成長した姿を見せている。★★★★

 

 

 

『WANDA/ワンダ』1970年(米)

 監督・脚本 バーバラ・ローデン 制作協力 エリア・カザン
 撮影 ニコラス・T・プロフェレス
 
出演 バーバラ・ローデン マイケル・ヒギンズ 
   ドロシー・シュペネス ピーター・シュペネス 他

 

ペンシルベニアの炭鉱町に住むワンダは、自分の居場所を見つけられずにいる主婦。知人の老人を訪ねお金を貸して欲しいと頼むワンダは、バスに乗り込み夫との離婚審問に遅れて出廷する。

タバコを吸いヘアカーラーをつけたまま現れたワンダは、夫の希望通りあっさりと離婚を認め退出する。街を漂うワンダは、バーでビールをおごってくれた客とモーテルへ。ワンダが寝ている間逃げるように部屋を出ようとしたその男の車に無理やり乗りこむ。だが、途中ソフトクリームを買いに降りたところで逃げられてしまう。またフラフラと夜の街を彷徨い歩き、一軒のバーで、Mr.デニスと名乗る小悪党と知り合う。彼に言われるがまま、犯罪計画を手伝うハメなったワンダの行方は・・・・・・

(公式オフィシャルサイトより)

 

感想)不勉強のため、バーバラ・ローデンの名前を初めて知った。以前読んでいる『死ぬまでに観たい映画1001本』の中に『WANDA/ワンダ』が選出されていたと記憶するが・・・

作品を鑑賞した感想を一言でいえば、商業ベースには乗らない

作品。前半は長回しが多く娯楽映画的な要素が少ないために観るのに忍耐を要する。しかし、話が進みドラマ的要素が生まれるにつれて徐々に引き込まれていく。

ワンダというただ流されるままに生きているこの女性に興味を感じ始めるとこの作品は、娯楽映画の説明的な退屈さから解放される。ワンダの痛切な息づかいが感じられるようになってくるのだ。商業主義の娯楽映画では到底ヒロインになれそうにない女ワンダ。無気力で流されるままに生きている女にリアルな生命を感じる。仮にそれが先の見えない否定的なものであったとしても、マルグリット・デュラスやイザベル・ユペールが絶賛するのも何となく理解出来そうだ。最後にバーバラ・ローデンの自己告白を記して終わりたい。★★★★★

 

「私は無価値でした。友達もいない、才能もない、私は影のような存在でした。『ワンダ』を作るまで、私は自分が誰なのか、自分が何をすべきなのか、まったく分からなかったのです。」 バーバラ・ローデン

 

 

【追記】 字数制限?で何本かの作品が削除されました。残りの作品は後日更新する予定です。